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後日譚310.事なかれ主義者は食べ切れなかった

今日の分、更新したと思ったら出来てませんでした。

以後気をつけます。

 静流とルウさんの三人で町の散策に出かけた翌日、僕は再び出かけるために午前中にやるべき事をサクッと終わらせた後、ラフな格好に着替えを済ませた。

 屋敷の外に出ると育生を止めるドライアドたちと一緒に水やりをする先の誘導をしていたレモンちゃんが僕に気が付いてレモレモ言いながら駆け寄ってきた。


「お待たせ、レモンちゃん。ドーラさんと龍斗は?」

「レモ!」


 レモンちゃんが髪の毛の先を器用に動かして指し示した先の方に、空を見上げている小柄な女性がいた。その傍らには同じように空を見上げている小さな子どももいる。二人とも綺麗な金色の髪だけれど、レヴィさんのようにツインドリルは形成されておらず、お揃いのショートヘアーだった。

 僕が二人の元へと向かう途中でレモンちゃんは定位置に収まった。他のドライアドたちは育生をみんなで止めるために右往左往しているようで、僕の方に引っ付いて来ようとする子はいない。


「ドーラさん、龍斗、お待たせ。また雲見てるの?」

「ん」

「…………」


 ドーラさんは声に反応して僕の方を見たけれど、龍斗はジッと空に浮かんで流れて行く雲を見続けている。それは屋敷の中でも外でも変わらず、室内では窓の近くで空を見ている事が多い。時々一緒に眺めてみるんだけど、ドライアドたちがわらわら集まってきて賑やかになると離れていく事が殆どなのだが、今の龍斗の周りには騒がしい子たちはいないので思う存分鑑賞しているのだろう。

 龍斗が雲好きになったのはきっとドーラさんの影響だろう。魔道具『綿雲生成器』でちょくちょく龍斗と遊んでいるのを見かける事があった。それに似ているから雲に興味津々なんだろうな、たぶん。


「とりあえず腹ごしらえしたいんだけど、二人はもうご飯食べた?」

「私はまだ。リュートはもう済ませた」

「そっかそっか。じゃあ、あまり考えずにお店探そうか」

「ん、わかった」


 ドーラさんがヒョイッと龍斗を持ち上げて抱っこすると前を歩き始めた。彼女の細い肩越しに龍斗の顔が見える。あ、目が合った。


「パパ?」

「なぁに?」

「おでかけ?」

「そうだね。今から出かけるよ」

「レッモモーン!」

「はいはい。落ち着いてね、レモンちゃん」


 出発の掛け声のタイミングが分からなかったのか、今更ながらにレモンちゃんが手を高々と上げて叫んだのでそれを落ち着かせようとしていたら龍斗は再び空に浮かんでいる雲に視線を戻していた。

 まあ、いつもの事だしな、なんて事を思いながら少し歩調を速めてドーラさんの隣に並ぶのだった。




 ドーラさんのお気に入りのお店で腹ごなしをした。『安くて多くてうまい店』というそのまんまの名前のお店は、確かに安くて多かった。美味しいかどうかは……好みが別れるんじゃないかな。僕は普通だった。


「これからどうする? 公園にでも行く?」

「ん」

「じゃあとりあえず北区か南区に行こうか」


 今いる西区は外から来た人向けの施設が多い。冒険者向けの宿や、ギルドが集まっていて、商店も冒険の道具に使う物や飲食店が殆どだ。

 公園のような場所はあるけれど、西区の公園は広場として使われる事が殆どのようだ。ベンチや噴水はあったけれど遊具はほとんどない。憩いの場的な感じなんだろう。たぶん。


「どっちに行きたいとかある?」

「ない」

「だよね。龍斗は?」

「…………ん?」


 ドーラさんが抱っこしていた龍斗が少し遅れて僕の方を向いた。これは話を聞いていなかったやつだ。まあ、二歳にもなってないしこんなものだろう。


「あっちかあっち、どっちに行きたい?」

「あっち」

「……ごめんね、そっちは無理だ」


 龍斗が指を差したのは北でも南でもなく西だった。

 何であっちに行きたいのか気になったけど、彼が差している壁の向こう側には行く許可をもらっていないので諦めてもらう事にして、とりあえず北区に移動する事にした。

 歩いて移動するにはちょっと時間がかかるので、魔動トロッコにでも乗って時短をする事にしよう。


「……それにしても、冒険者がいなくてもすごく繁盛してるね」

「ん。普段はこんなに町の子いない」

「そうなの?」

「冒険者とは距離を置いている子が多い。冒険者が外に締め出されているからたくさん来てると思われる」

「なるほどなぁ」


 てっきり僕たちが来ているから、なんて思ったけれどそうではなかったようだ。まあ、誰にも西区に行くなんて言ってないから当然と言えば当然なんだけど。

 食べ盛りの男の子や獣人族の男性に混じって女の子たちの集団もいる。僕でさえドーラさんに協力してもらったんだけど、彼女たちは食べ切れるんだろうか? なんて思いながら見ていたらこっちが見ている事に気付かれた。

 とりあえず手を振っておくと「キャー」と甲高い声が響く。うん、ごめん。

 他のお客さんたちが何事かとこっちを見る気配がしたのでそそくさと移動するのだった。

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