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後日譚306.事なかれ主義者はかき集めた

 のんびりと軽食を食べた後は、遊具が設置された公園へと出向いた。噴水や遊具がある公園だった。

 遊具は屋敷の近くにもある滑り台やブランコ、雲梯、ジャングルジムだけじゃない。名前は知らないけどジャングルジムみたいなものでぐるぐる回る遊具や、シーソー、登り棒などいろいろある。僕の記憶だけではなく、ニホン連合や過去の勇者の話を参考に子どもたちのためにドワーフたちに依頼して作り続けてもらっている物たちだ。中には僕の記憶にもない物もあった。

 怪我や事故の危険性を考えると作らない方が良いかな、という気持ちもあったけど即死でさえなければ魔法で何とでもなる異世界なので気にしない事にした。……見守り要員としてエルフを一人常駐させるようにしておこう。


「ブランコはまだちょっと早いかな? 赤ちゃんでも乗れそうな感じに作ってもらえばよかった」

「これで遊ぶデスか?」

「とりあえずね」

「じゃあパメラも遊ぶデス」


 ……屋敷の近くに以前作った似たようなものがあるから遊び方を知っていても不思議じゃないけど、そういう事は覚えられるのに他の事は覚えられないのはなんでなんだろうな。気にしたら負けな気がするので気にしないけど。

 そんな事を思いつつも、ジーッと僕を見上げている歌羽を抱っこしたままブランコに腰かける。歌羽の向きを変えて、チェーンの外側から歌羽を抱え込むように抱きしめながら「しっかりと掴まっていてね?」というと、歌羽はこくりと頷いて僕の手を握った。


「レモンモ?」

「レモンちゃんも。一回転を目指す事はないけど、振り落とされた後に蹴っ飛ばしちゃったら危ないからね」


 シュルシュルと僕の体に巻きついて来る髪の毛はくすぐったいけれど我慢だ。

 レモンちゃんの準備もできたところでブランコを漕ぐ。

 ゆっくりと膝を伸ばしたり曲げたりしながら揺れを大きくしていくと、レモンちゃんがレモレモ言い始めた。うん、なんて言ってるか分からん。


「楽しいデスか?」

「楽しいよ。パメラには物足りないかもしれないけど……」

「そんな事ないデスよ!」

「それならよかった。そうやって普通に座って遊ぶ方法もあれば、立って漕いで揺れを大きくしたり、ジャンプして飛び降りて飛距離を競って遊ぶ事もあったよ」


 それが原因で怪我をする子もいたらしいから危ないかもしれないけど、元冒険者のパメラからしてみるとこの程度の事は危険でもなんでもないだろう。

 お行儀良く座って漕いでいたのに立ち漕ぎを始めたパメラの横で、のんびりと歌羽と一緒にブランコで揺れながらしばらく遊んだけど、他にも遊具はある。

 パメラが翼を羽ばたかせながら飛び立ったのを見送ったところで僕たちもブランコを後にした。




 パメラと歌羽、僕とレモンちゃんで分かれてシーソーをして遊んだり、ロープにつかまって移動する遊び……名前が分かんないけどターザンみたいにシャーッと移動するやつで遊んだりしていたら一時間ほど経っていた。

 歌羽はほとんど抱っこされたままで静かにしていたけれど、とても集中して楽しんでいる様だったので公園に寄ったのは正解だった。

 最後に回転するジャングルジムみたいなやつの中でぐるぐると回る景色を楽しんでいたら、ひたすら周囲を飛び回って遊具を回していたパメラがどこかに飛んで行ってしまったのでお開きになった。

 どうやらいい匂いに釣られて飛んでいったらしい。回転するジャングルジムみたいなやつから出て、レモンちゃんと一緒に足取りがフラフラしていたところにパメラが戻ってきた。


「そろそろおやつを食べるデス!」

「そうしたいところは山々なんだけど、もう少し休んでからでもいいかな?」

「仕方がないデスね! 美味しそうなところ探してくるデス!」


 言い終わる前に飛び去ってしまったパメラを見送ってから、僕たちは長椅子に腰かけた。

 今度からはパメラに回させるのはやめとこう。

 歌羽が目を回して気持ち悪くなっていないか心配だったけど、僕なんかよりもよっぽど強いのか、けろっとしている。彼女の視線の先には砂場があった。

 一応この場所は結界で守られているとはいえ不毛の大地にある町だ。地面を掘ってしまうと結界の外になってしまうので、掘って遊ぶわけにはいかない。

 そのため、砂場を作るためにわざわざ囲いを作り、その中に遠くから取り寄せた砂を入れた砂場だ。掘りすぎ注意、という立て看板があるけれどまだ一度も使われていないのかもしれない。


「そういえば泥団子を作るの、なんか流行ってた時あったな」


 ピカピカの泥団子を作る事に時間と労力をとてもかけていた時期が僕にもあった……気がする。遠い昔の事のように記憶があいまいだから作り方はうろ覚えだけど、砂場遊び程度ならできる。

 ある程度回復したところで歌羽を砂場に運んで彼女を砂の上に下ろすと、ジッと足元を見ている歌羽。

 シャベルとかちっちゃいバケツのような入れ物とか用意しておけばよかったな、なんて事を反省しつつとりあえず砂をあまり掘らず、歌羽のすぐちかくに砂を集めて山を作るのだった。

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