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後日譚301.事なかれ主義者は様子を見守る事にした

 ラピスさんから相談をされた翌日、僕とレヴィさんは転移陣の前にいた。


「いってきまーす」

「行ってらっしゃい」

「頑張るのですわ~」


 レヴィさんと一緒にイルミンスールにある転移陣と繋がっている物に乗って転移していくドライアドたちを見送る。十人ほどのその集団は、古株ほどではないけれど長く生きてきたドライアドたちらしい。

 彼女たちはラピスさんに相談された件を解決するために派遣される事になったドライアドたちだ。全員褐色肌なのは遠い異国まで行って旅をするのが好きな子たちだからだ。きっと元々いたトネリコの近くが海だった事も影響しているんだろう。知らんけど。


「それでは、私ももう行きますね」

「ラピスさんも気を付けてね」

「ドライアドの事で困ったことがあったら連れて戻ってくるのですわ」

「はい、そうします」


 魔法学校の生徒の服装ではなく、冒険者の格好をしたラピスさん背中に負ぶさるように褐色肌のドライアドが一人くっついていた。

 僕たちにはどれがドライアドたちが育てているか分からないけれど、ドライアドたちは同種でなくてもドライアドが育てている植物かどうか分かるという事が昨日判明したので大樹海の探索にドライアドたちを貸し出し……というか派遣? する事になった。


「……他の人に迷惑かけないか心配だし、やっぱりついて行った方が良いかな?」

「魔物たちが潜む領域なので推奨しませんが、シズト様が望まれるのなら私は拒否できないです」

「だよね。……うん、僕の方が迷惑かけるだろうから今回はやめとくよ」


 僕がそう答えるとラピスさんは「そうですか」とだけ言って、イルミンスールへと転移していった。

 見送りに来ていた色とりどりのドライアドたちが散り散りになっていく。当然のようにオーバーオールを着ていたレヴィさんもまた、畑の方に向かって行く。

 僕は僕でやる事があったから、レモンちゃんと三人ほどのドライアドを引っ付けたまま、ラピスさんが使った転移陣とは別の物に乗って目的の場所へと転移するのだった。




 ドライアドたちを派遣してから数日が経っても大樹海からは特に報告はない。順調に調査は進んでいるようだ。

 それと比較すると、『魔の山』や『魔の森』に行き、切り拓こうとしている国際事業の方はなかなか思うように進んでいないらしい。

 クレストラ大陸にある『魔の山』では、各国の思惑が入り乱れて連携が思うように取れていない、というのもあるのかもしれないし、ローリスクハイリターンを狙って各々が消極的な行動をしているから、というのもあるらしい。

 逆に『魔の森』は魔の山ほど大きな場所じゃないからか、先を争ってニホン連合やアクスファースの兵士たちが森に入り、中にいた高ランクの魔物にやられて大きな被害を出したそうだ。

 みんなで協力して一緒に開拓すればいいのに、とは思うけれど魔物たちの領域がなくなったらその場所の影響力は貢献度が高い所が持つ事になるだろうしそうも言ってられないんだろうなぁ。

 それなのに……当然のようにドラゴニア国王であるリヴァイさんは我が家にやってきていた。

 育生と一緒に育生専用の植木鉢へ水やりをしている。今回育てているのはキュウリだ。


「ニホン連合が大変みたいですけど、手伝わなくていいんですか?」

「ああ。ドラゴニアが出張ると、どうしても貢献度が高くなるだろうからな。あまり一つの国が力を持ちすぎても良くないし、我が国には充分すぎるほどダンジョンがあるしな。ガレオールだってあまり深入りしてないだろう?」

「まあ、武力があまりないから、って言ってましたけど本音は労せず利益を得たい、と言った所でしょうね。裏方に回って経済を回す事に専念しているみたいです」

「アクスファースから魔の森へ行こうとするとどうしてもガレオールを経由した方が効率的だからな。人が通ればお金も落ちる、という訳だ。イクオ、あまり水をあげすぎると良くないぞ」

「あい! せいいく!」


 にょきにょきとキュウリが育っていく様子を見るのは面白いなぁ、なんて思いながら眺めているとリヴァイさんが再び話し始める。


「まあ、どうしてもやばくなったら兵士を派遣するのも検討するが、すぐにでも魔の森を無害化する必要性はないからな。ドラゴニアとしては、一先ずはダンジョン産の物資を供給するだけに留めるだろう」


 加護を使った育生がドライアドたちにジーッと見守られているのを見ながらそう言ったリヴァイさんは「そろそろ戻らんと怒られるからな」と言って転移陣を使って帰っていった。


「育生、そろそろお昼ご飯だからお家に戻るよ」

「やだ!」


 きっぱりと拒絶された。これがイヤイヤ期だろうか? いや、単純に早く育てようとしているだけな気もする。今日やるべき事は既に終わらせているから急ぐ事はないし、育生の好きなようにさせよう。

 そんな事を思って眺めていると、結局お昼ご飯の時間になってしまってモニカが呼びに来た。育生は再び拒絶した。仕方がないからピクニックになった。最近の恒例となりつつあるので、エミリーやその部下であるバーン君たちは焦った様子もなくテキパキと外にテーブルと椅子を用意して机の上に料理を並べていく。

 いい香りが辺りを漂い始め、育生の可愛らしいお鼻にも届いたのだろう。あれほどご飯を食べに戻りたくないと拒否していた育生はトテトテとテーブルに向かう。

 その様子をドライアドたちと一緒にぞろぞろと追いかけながら見守るのだった。

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