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後日譚295.事なかれ主義者には相談よりも大事な事がある

 立食パーティーの会場は大勢で踊る事ができるほどの広い部屋だった。夜は社交界とか開かれているんだろうなぁ、なんて事を思いながらタカノリさんと一緒に各国の代表に挨拶をして回った。

 この大陸の人たちは随分と奥手のようだ。向こうから話しかけてくる事は一度もなく、こちらが話しかけてくるまでは食事を始める様子もなくじっと待っている。僕としては食事しながらのんびり待っててくれた方が気持ちが楽なんだけど…………中には直立不動で待っていた人もいた。


「これで一通り挨拶は終わりました。お食事はされていきますか?」

「いえ、我が家で子どもたちが帰りを待っているので」


 そうだといいな、という願望だけど、タカノリさんは特に否定する事はなく「そうですか」と笑みを浮かべて行った。


「お子様たちとの貴重な時間を奪ってしまい申し訳ありませんでした。大樹海の調査についてはまた手紙でも構いませんので返事をしていただけますと幸いです」

「いろんな意見を聞きたいので数日程お時間を頂く事になるかもしれませんが、必ず返事はします。それでは、お先に失礼します」


 外交官の方々に見送られながら会場から外に出る。ジュリウスの案内の元、建物から出たところで、ドライアドたちが賑やかに話は始めた。建物の中では静かにしているように、という言いつけを守っていたようだ。


「魚人さん初めて見た~」

「私も~」

「レモンモー」

「今喋った? いや、喋ってはいるのか」

「れも? レモンれもれも」

「うん、何言ってるか分かんないわ」

「レモ~~~」


 なぜか荒ぶるレモンちゃんを宥めながらジュリウスに視線を向けると、彼は「シズト様の御心のままに」としか言わない。いや、予想はできてたけどね。仕方がないのでこちらから質問をする事にした。


「実際の所、他国から軍事派遣してもらう必要はあるの?」

「ありません。ユグドラシル、トネリコ、イルミンスール、フソー、カラバからそれぞれ徴兵し、防備を固めればある程度は問題ないかと思われます。それでもどうしようもないほどの魔物が現れたとしたら、ミスティア国際連合に加盟している国々から兵士を派遣されていたとしても止めきれないでしょう」


 すごい自信だけど、よくよく考えれば五か国からエリートばかりを集めて守る事に徹すれば何とでもなるのか。


「問題があるとしたらどんな事があげられるかな?」

「そうですね。現在もオールダムに精兵を派遣しているので、どちらかの練度が落ちる事でしょうか。それでも、十分戦う事ができる者たちがまだまだそれぞれの国で待機しております」

「他には?」

「大樹海の調査をする場合はどの様な事が起きるかは予想がし辛いです。未知の病が見つかるような事があれば転移門で繋がっている以上、各国の首都に広がるのは一瞬でしょう」

「だよねぇ」


 大樹海の調査を支援するために当然のように転移門が使われる。大樹海と隣接していない国々からの増援から始まり、食料や武具などの必要物資も転移門で各地に運ばれる事になっているそうだ。

 まあ、それに関しては今更なので仕方がないんだけど、転移門の活用のデメリットは感染症が一気に広まる事だろう。パニック映画とかの冒頭で探検隊が新種の生物に噛まれてウイルスに感染するとかよくあるし気を付けて欲しい所だけど……これに関しても以前から散々使う側の問題だと言われていたので考えない事にしよう。

 世界樹を囲う森の入り口付近に置かれていた転移陣で根元に移動し、うたたねしていたこの地のドライアドに声をかけて転移陣を分解してもらってからファマリーへと戻ると、だいぶ日が傾いていた。

 そういえば時差とかどうなってんだろうな、なんて事を考えながらドライアドをくっつけながら屋敷へと入ると、モニカが出迎えてくれた。


「お食事の時間までもうしばらくありますが、いかがなさいますか?」

「手を洗ったら子どもたちと一緒に過ごそうかな。みんなどこにいる?」

「イクオは外で水やりを楽しまれています。その近くでマコトも遊んでいるはずです。ランカとシズルはラオ様とルウ様に連れられてお二方の故郷で過ごされています。その他の子たちは殆どがお昼寝してますね」

「そっか。起こすのは可哀想だから育生の様子を見てようかな」

「かしこまりました。それでは、お食事の時間になりましたらお声掛けさせていただきます」

「うん、よろしく」


 ちょうどお昼寝の時間に被ってしまったようだ。残念だけど仕方がない。

 回れ右をして屋敷を後にすると、屋敷に入る際にどこかに消えたジュリウスが戻ってきた。


「イクオ様とマコト様は反対側にいるようです」

「そっか。ありがと、ジュリウス。……ところで、君たちはいつまでそうしてくっついているのかな?」

「もうちょっとー」

「まだまだ~」

「れもれもー」

「その内離れるよー」

「まあいいけど……。夕方になったら離れるんだよ」


 僕がそういうと、元気よく返事をしたドライアドたちだったけどレモンちゃんはだんまりだった。

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