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後日譚290. 『世界樹の主について シグニール大陸編』 著者,ラピス・フォン・ドラゴニア

 私たちが暮らしているシグニール大陸には三本の世界樹があるが、他の大陸にも世界樹がある。

 大きさにバラツキはあるが、どれもが通常の樹木とは異なり、とても巨大で、大量の魔力を周囲に放出しているのは同じだ。

 また、種は異なるようだがドライアドたちが生息しているのはどこの世界樹も同じである。それらの研究をするために大陸を越えて調査をしていた時に、さらなる共通点を見つけた。以下はそれの記録である。




 世界樹の周辺は、世界樹から放出される魔力の影響によってダンジョンと同じくらいの魔力濃度になっている。それは魔物たちにとっては魅力的な地という事になるが、世界樹の周辺にはほとんど魔物がいない。

 それは、周辺を囲うように作られた都市のおかげでもあるようだが、なによりも魔物たちにとって楽園のような場所を独占するために、侵入しようとする魔物を先に棲みついていた魔物が追い払うか、殺すからのようだ。

 世界樹に棲みついた魔物を条件に関わらず気軽に見る事ができるのはドラゴニア王国の最南端に広がる不毛の大地に根差したファマリーだろう。

 ほとんどの世界樹の周辺は鬱蒼と茂った森が広がっている事が多いが、ファマリーの根元に広がっているのは畑だ。だから世界樹の根元でジッとしている魔物、フェンリルを遠くから肉眼で観察する事ができる。

 そのフェンリルは我が姉であるレヴィア・フォン・ドラゴニアと良好な関係を築いているようで、対価と引き換えに世界樹の周りに広がる町に群がってくるアンデッドを駆逐する事もある。

 その際、フェンリルが通っても問題ない様に作られた大きな通りを、目にも止まらぬ速さで駆け抜けていくフェンリルを間近で見る事もできる。運が良ければフェンリルから抜けた毛を拾う事もできるだろう。


「……それにしても、記録用として保管されているフェンリルの毛と比べてもとても綺麗な毛並みですが、やはりこの環境が毛並みにもいい影響を与えているのでしょうか?」

『いや、それは関係ない』

「そうなのですか?」

『ああ』

「日向ぼっこする時にモフモフだと気持ちいいの~」

「臭くなくなるの~」

「だから綺麗にするの~」

「…………なるほど」


 世界樹の主としてやっていくためにはドライアドたちと友好的な関係を築く努力をする必要があるのかもしれない。日向ぼっこの上に体の上に乗られたフェンリルが微妙な反応をしている様子を見て、私はそう思ったが、確認はしなかった。




 他の世界樹にはどのような魔物が住み着いているのか調査をするにあたって、まず最初に確認したのは都市国家ユグドラシルだ。義兄に協力をしてもらい、世界樹の根元に入って調査をする許可が下りた。

 元々はファマリーの根元で暮らしているフェンリルが住処としていたとの事だったが、フェンリルは世界樹騒動の際にファマリーに移り、そこに腰を落ち着けた。

 そうなると空席となったユグドラシルではどうなったのか、というのを確認するために訪れたのだが、すぐに答えは見つかった。

 転移陣を使って移動した際にドライアドたちと共に魔物自ら出迎えてくれたのだ。

 新たな世界樹の主となっていたのはグリフォンだ。フェンリルと比較するとランクが下がる魔物だが、ただのグリフォンではなく、色違いの変異種のようだった。

 変異種だからこの世界樹の主となれたのか、それともこの世界樹の新たな主となったらフェンリルのように真っ白な毛になったのか気になるところだが、その答えもすぐに分かった。義兄がグリフォンにプレゼントした首飾りが『念話』を使えるようになる魔道具だったからだ。


「つまり世界樹の魔力による影響でその見た目になったわけではない、という事ですね?」

『その通りだ。私の毛は元々この色だったし、目も赤かった。他のグリフォンよりも大きくなったのはそれだけ他を喰らったからだろう。ここはそんな危険を冒さずとも魔力を蓄える事ができるが、私に影響が出るにはまだ時間がかかるはずだ』

「なるほど。ご協力ありがとうございます。……最後に一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

『構わん。其方は礼節を弁えておるからな』

「ありがとうございます。……失礼ながら、魔物にしては見事な毛並みですが、あなたもドライアドたちからブラッシングされているのでしょうか?」

『ああ。自分でも手入れはするようにしているが、其方たちが作る道具を用いたブラッシングには劣るから対価と引き換えにしてもらっている』

「そうなんですね。お答えいただきありがとうございました」


 ユグドラシルでもファマリー同様、世界樹の主である魔物はドライアドと良好な関係を築いていた。その関係を築くためにはある程度の知能が必要になるのかもしれない。




 残念ながらシグニール大陸にある最後の世界樹トネリコでは、世界樹の主の姿が見当たらなかった。

 だが、そこで生活を営んでいる褐色肌のドライアドから聞き取った内容から『ナインテールフォックス』というSランクの魔物が住み着いている事が分かった。幻影魔法の一種を応用して姿を隠しているようだ。

 出来れば直接話をして情報をまとめたかったが、ドライアドたちからの聞き取り調査にする事にした。

 古株の子がいなかったので難儀したが、ドライアドと友好的な関係を築いている事や、ブラッシングをよくする事、人語を理解し、自分で『念話』を使う事ができるという事も分かった。

 グリフォンは魔道具を使って『念話』をしていたが、もしかしたら時間が経てば『念話』をするようになっていたかもしれない。

 まだ異大陸の世界樹の主についてまとめる事が出来ていないが、時期を見計らって調査をするために異大陸に渡る予定だ。また、魔物と会話を交わし、調査をする事は滅多にできない事なので他の研究も合わせて進めていきたい。

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