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パビリオン

 この年、1985(昭和60)年はGDP401兆円を達成する。一般庶民が日本開闢以来の豊かさを享受するようになった。そして博覧会はそれに相応しいものとなった。

 この時期、ようやく全国的な交通網が整備されつつあった。東北・上越新幹線は元より、全国的に高速道路や空港の整備が進んだ。

 高速道路は日鉄労組に対抗するため張り巡らせられ、空港はソ連の北方脅威に対抗するため軍民共用空港として海自・空自が建設していった。こうして地方にも結果的に交通網が整備され、交通の利便性の恩恵が受けられるようになった。


 この交通網の整備で全国から博覧会への来場を促した。1985年3月17日から同年9月16日の184日間に来場者数が約2,952万人を記録した。

 博覧会には全国各地から人が来場したが、その中には多くの修学旅行客が含まれていた。その際、常磐新幹線と関東国際空港が最大限に活用された。


 特に沖縄からの修学旅行については、政府は特別に支援をした。沖縄返還から13年しか経ておらず、まだ沖縄県民と本土との間には心理的距離感があった。

 沖縄は国内で唯一地上戦を経験しており、その後の米軍の占領による重い負担を背負うことになった。そして復帰後も米軍基地の負担が完全に解消されず、重い負担が続いている状態であった。

政府はその補償として、数々の経済振興政策など支援を行う。本土への修学旅行の支援はその一環である。

 尤も崇高な目的だけでないのは、世の習いである。これらの旅費は沖縄に路線を持つ航空会社への利益供与や更にはそこからのキックバックとしての献金や天下りという利権が付いて回った。

 

 交通網が整備されつつあったが、未だ成熟したとは言い難かった。一例として東北・上越新幹線が挙げられる。当時の両新幹線の南限は大宮駅止まりで都内には入っておらず、北限は東北新幹線では仙台止まりで上越新幹線では高崎止まりであった。


 そのため東北地方で仙台以北の修学旅行は、常磐新幹線磐城駅まで鉄道かバスで向かって、そこから常磐新幹線に乗ることになる。仙台には東北新幹線があるにも関わらず、直接東北新幹線に乗車しないのは、結局は大宮駅で乗り換えになるからであった。

これは混雑する大宮駅での乗り換えを避けるためと、日鉄が利用の少ない磐城方面に乗客を回して磐城方面の売り上げを上げたいという思惑があったからである。

 どの道、博覧会場は常磐新幹線の沿線であるため、このルートの方が教師としては引率がしやすかった。

 このように北海道・四国・九州・沖縄からの遠方に学生にとっては、飛行機や関東国際空港などが最初のパビリオンとなり、東北地方の学生にとっては新幹線が最初のパビリオンとなった。


 会場内には内外の政府公的機関から内外の民間企業のパビリオンが数多く設置されていた。各パビリオンには当博覧会のテーマである「人間・居住・環境と科学技術」に沿った内容のものが展示されていた。テーマが科学技術ということもあって、科学技術を有する国や企業は、それを誇示する展示となった。


 政府パビリオンは「テーマ館」「歴史館」「こども広場」の3つであった。「テーマ館」は当時の科学技術の発展ぶりを展示し、「歴史館」は日本の科学技術の歩みを展示し、「こども広場」は遊具を通して子供たちが科学を学ぶというものであった。


 テーマ館では1本の木で1万個近くの実を成らした巨大トマトの木が入場者を出迎えた。このトマトは水耕栽培によって育てだれたもので、科学技術によって植物を巨大化させることを見せつけた。

 それ以外にも当時の日本の科学技術力を誇示する展示が行われ、ロボットオーケストラによる演奏や二足歩行をするロボットの歩行などが展示された。そしてコンパニオンの女性が

「これらの技術で農業の自動化を目指していきます」

と上品な声色で案内をしていた。


 各国のパビリオンは、その国の特色が出ていた。例として挙げるとアメリカ館は人工知能、ソ連館は宇宙技術、イギリス館は北海の海底油田、西ドイツは常電導リニアモーターカー、中国は歴史的な建築物などである。

 企業のパビリオンは企業の宣伝目的もあるため、ただ単に自社の技術力を誇示するだけでなく、より娯楽色が強い形での展示であった。

 砂岡の似顔絵を描いた竹上館のロボットを始め、九曜館では自社グループが本格的に事業参入する宇宙産業に関しての展示物や体感設備などが展示された。その他、多数の企業が自社が取り組んでいる新規事業を自社の技術力の誇示する形で展示した。


 博覧会は全体的にロボットと映像技術を見せつける内容で、来場者に明るい未来世界を想起させるものであった。

 そんな世間が有頂天になっている中で衝撃的な出来事が2つ生じた。一つは大和航空123便墜落事故ともう一つがプラザ合意である。

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