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似顔絵ロボット

 式典が終わり、皇太子殿下一行が会場から去っていく。砂岡・迫水・石山たちは式典会場から出ると、車椅子に押された竹上幸三郎が眼前に一行の前に現れた。

 砂岡は慌てて

「これは会長、お久しぶりです。お元気にされていましたか」

と、声を掛けた。それに対して竹上が答える。

「まあ、見ての通りで足が弱くなってしまった」

「それは残念なことで」

砂岡は当たり障りのない返事をした。

「折角、来たのやし、うちのパビリオンでも観に行って欲しい」

竹上はそういうと、車椅子を押している男性秘書に支持をして、竹上館に向かうことなった。


 会場面積は102ヘクタール(東京ドーム約21.8倍)にも及んだ。移動するには場内交通が欠かせず、以下の3つの交通機関が担った。

・モノレール(懸架式)

・ロープウェイ

・巡回バス


 竹上館へはモノレールを使って向かうことにした。当モノレールは九曜重工が製造したものである。先の大阪万博においては常盤製作所の跨座式モノレールが場内交通を担った。その後、本格的に浪速モノレール建設に繋がっていた。

 ほぼ同時期に九曜重工は懸架式モノレールを開発していたが普及においては常盤製作所に後れを取っていた。そこでデモンストレーションで神奈川県湘南地区に単線のモノレールを建設する。更に今回、後れを取り戻すべく九曜重工が博覧会場で自社のモノレールを半ば強引に主催する博覧会協会に働きかけ、設置が実現したものである

 当然、常盤製作所も自社のモノレールの設置を目指してはいた。しかし、博覧会協会は先の大阪万博で採用されていたことを理由に、バランスを取って次は九曜重工ということで決着した形となった。尚、このモノレールは博覧会終了後に千葉学研都市内の交通として活用されることになる。


 一行は会場内駅である「ときめき駅」で乗車し、竹上館の最寄り駅である「ひらめき駅」に向かった。モノレールは会場の外周を回るように走行した。懸架式のモノレールであるため、車窓は遮ることなく下の様子がありありと眺めることができた。

 モノレールは、10分もしない内に「ひらめき駅」に到着して、竹上グループのパビリオン「竹上館」に向かった。一般公開は翌日で、本日は招待客だけであるため、人は少なくスムーズにパビリオンに入館した。パビリオンにはコンパニオンの女性が多数並び、竹上と砂岡一行を出迎えた。


 竹上と一緒にパビリオンに入ると竹上は秘書に人払いの指示を出した。秘書は竹上の指示に従い、館内にいたコンパニオンを始めとするスタッフを竹上と砂山の周囲から遠ざけた。そして竹上が話し始めた。

「先生、例の地下の法律は、どんな感じですかな」

例の法律とは地下深い空間に所有権を及ばさないようにする法律である。竹上興産が開発している高層ビル街に新幹線を引き込むために必要な法律である。それについて、砂岡は竹上の耳元で囁いた。

「来年の通常国会に向けて、法案を作成中です」

「今国会では通せませんでしたか」

竹上は残念そうな表情を浮かべた。

「流石に法律ですから、そんなに簡単には、それでも通るでしょう。上が詰まっているのだから、地下しか開発しようがない訳ですから」

「まあ、何とかなりそうですな。後、例の(大阪湾国際)空港にも結ぶ和歌山新幹線は、どないなっておりますやろか」

「大蔵省は渋っていますけど、天下りを用意すれば応じるでしょう」

「じゃあ、(竹上)興産に天下りの席を用意しますわ。これで応じるか話してみて下さい」

「ええ、そうします」

砂岡は淡々と返した。

「砂岡先生のことだから、法律も予算も何とかなるでしょう。何せ電話一本で大阪市長を黙らせて、なにわ筋線が建設できるようになったのだから。本当に感謝していますで」

そう言い終えると、秘書に館内案内のコンパニオンを呼ぶよう指示を出した。そして、ほどなくして複数名のコンパニオンが寄って来た。

「難しい話は、これで仕舞いや。それよりパビリオンを見て貰いたい」

竹上はそういうと、コンパニオンに砂岡一行を案内するように指示をだした。


 竹上館のテーマは「日本の源流」で、外観はテーマに合わせて前方後円墳に模した建物であった。中には様々なものが出展されていた。弥生時代の竪穴式住居を再現し、古代人を模したロボットが弥生語で会話したりした。中でも最大の見物は似顔絵を描く似顔絵ロボットであった。

「先生、ロボットに似顔絵を描いてもらったよろしいでしょう」

と竹上が砂岡にモデルになるように促した。砂岡も最新技術に強い興味を持ち、コンパニオンの案内でロボットの前に座った。

 ロボットの外観は工場で使用される武骨は多関節のマニピュレーターであった。ロボットはカメラを通して砂岡の顔を捉え、それに沿って多関節の腕を複雑に動かして顔を描いていった。

 その様子を遠くから迫水を一緒に見ていた石山は、その似顔絵を描く様子を感心して見入っていた。何より、心と魂がないロボットが砂岡の灰汁の強いまさしく黒幕そのものの顔を描いている様子に『ロボットも人が分かるものか』と石山は感心した。

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