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ブルーヘッド  作者: さち猫
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プロローグ 誰も知らなくていい話

うら若き少女時代。

まだ無知だった頃、私にも恋心に憧れていた時はあった。

運命の人とか、赤い糸だとか。


歳を重ねるにつれ、胸を焦がすような恋心への憧れも薄れていった。周りが皆結婚したり子供を産んだりする話を聞く度、自分の中で熱が冷めていくのを感じた。


そうして私は自覚してしまった


『私は恋をすることは無いだろう』と。


厳密には『家族ですら心を預ける事など出来ないのに、赤の他人に心を預けるなど以ての外。恋をするには向かないタイプ』だ。


『向かないタイプ』というのは恋が出来ないとは違うが、

『人に心からの信頼を寄せる』というのは到底できない。


そう、育ってしまったから。


覚えている1番昔では、まだ両親は助け合って生活していた。

しかし、両親の職場が倒産したことを気にゆっくりと二人の仲は悪化して言った。


両親は口喧嘩が耐えず、姉妹の関係もギスギスしていた。

私はと言うと、当時はそれらがよく分からず一緒に暮らしてる祖母の言うことをよく聞いていた。

褒められるからだ。


でも、祖母は自分にとって都合がいい所しか褒めてくれなかった。


好き嫌いなくよく食べる所、素直に言いつけ守って宿題をする所、ダメと言われたことはしない所。

そんな当たり前のことばかりをよく褒められていた。

祖母の言うことを聞いていれば、祖母のようにしっかりとした大人になれると信じていた。


私自身は気づかなかったが、姉と妹は二人とも子供ながらに何かを感じとっていたらしく、祖母の言うことを聞きつつも、自分のやりたい事をしていた。


姉に至っては祖母いわく『不良のやること』であるカラオケに行ったり、マニキュアをつけたり、帰りも友人と遊んで夜遅くになったりしていた。


当時、祖母が大激怒して姉を叱ってるのを見ていた私は、祖母の反応に動揺しつつも『どうして怒られることを姉はやったのだろう』と考えていた。

姉も妹も趣味は合うので、それなりに仲は良かった。

だからこそ、姉は叱られるようなことをなぜしたのか私は気になっていた。




それでもある日、私自身が『祖母は自分の都合のいい所しか褒めない人』だと自覚したことがあった。




私は幼稚園の頃から本当に絵を描くことが好きだった。

きっかけは、幼稚園の先生に『君は絵が上手いね!』とそう褒められたことだった。

それもあって、祖父母両親から要らない紙を貰ってはチラシの裏側にひたすら色んな絵を書いていた。

有名なマスコットキャラクターからオリジナルの可愛いキャラクターまで。

中にはモンスターっぽいキャラクターを描いた時、当時の小学校の同級生男子に『なにこれ!お前絵上手いな!!』と褒められた時は本当に嬉しかった。


自分に根気があまりないことを自覚してはいたが、どうしても漫画家になることを諦めきれなくて、親などの許可なしに無料の資料を購入したり、漫画のキャラクター、の模写も始めた。

そんな毎日を楽しく過ごしていた日。


祖母がまたしても感情的になりで父を怒鳴っていた。

当時は分からなかったが、家のローンが払えずに滞納してる状態だったらしく、その事で祖母が父にどうするのかと話をしに来たようだった。それまで父は祖母に会うことを避けていたらしく、堪忍袋の緒が切れた祖母が怒鳴り込んできたようだ。


私は当時、自分ではどうする事も出来ないと思っていたので、祖母を宥めることなく、その頃には両親の喧嘩も父と祖母の喧嘩もよくある事で、落ち着かない気持ちはあるものの自分は空気となっていた。


当時の私は人間関係に悩み、どうすればいいかも分からなくなり、塞ぎ込んでいた。

両親の負担になりたくないのと、両親に相談してもあまり意味は無いと思っていたこともあり、無心で絵を描くことに夢中になっていた。



祖母はそれが気に食わなかったのか、その一言で、自分の中の理想の大人である祖母の像は崩れて言った。




『そんなもの、私の方が上手くかける』




その一言で私の頭は真っ白になった。

そんなもの?自分が今、試行錯誤をして書いてるものを、そんなもの?その一言で片付けられちゃうの??

怒りで描き途中のイラストも全部もって自分の部屋に引きこもった。

誰にも何も言わずに。

この怒りは祖母から侮辱された事に対する怒りと、自分がまだ技術的に未熟である悔しさと混ざりあって、声を上げて泣いた。

その後、両親からも祖母からも何も言われなかった。

本当に、まるで何も無かったかのように、当たり前だと言われるように。



本当に、それがショックだった。



私はさらに人に対して心を閉ざした。

故に『家族ですら心を預ける事など出来ないのに、赤の他人に心を預けるなど以ての外。』


まだ、信頼出来る大人がいれば、信用する、心を預ける事ができたかも分からないが。


けど、信用する事がもはや分からなくなってしまった自分には


もう、恋はできないのだろう。


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