2 暗い森の中に1人
ーー俺は死んだ。
これは夢などではないと、気付いた時にはもう遅かった。
俺に群がる、いや、俺だったものに群がる狼。おぞましい音はしばらく続き、その音が聞こえなくなる頃には、もう何もそこには残ってはいなかった。
ーー骨すらも喰われ、俺がそこに居た事実は、その時を持って消え失せた。
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奴らに喰われ、死んだ俺が次に目が覚めたとき、そこは変わらず暗い森の中だった。
「ここは…」
夢じゃない。それはもう、身をもって知っている。
あの痛み、あの苦しみは全て本物だ。
ブルッと身を震わせ、俺はその場に蹲る。
ーーどうしてこうなった??
ーーついさっきまで、俺はあの教室で授業を受けていたはずだ。
ーーそれが何故、俺は喰われた??
分からない。分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない
「怖い」
ギュッと体を抱きしめ、俺は呟いた。
何も分からない。どれだけ考えても、どれだけ問いても。
ーーそれが1番、怖い。
《確認しました。スキル【恐怖耐性】がLV2になりました》
ふとそんな声が聞こえる。先ほども聞こえた、機械じみた声。
さっきは、夜目?がどうとか言って……死んだ時にも何か…………
脳に直接響いてきたであろう声。その声に、俺は更なる恐怖を感じた。
震えが止まらない。
「誰か…」
心が叫ぶ。助けてくれと。
「誰か…!!」
必死の思いで俺は叫んだ。聞こえるはずもない、暗い、暗い森の中で。
死んでしまった俺に、その返事は到底返ってくるはずもなく……
「呼んだ?」
「!!」
返ってきた声に、俺はすかさず顔を上げる。
だが、そこには誰も居なかった。
はは。ついに幻聴まで聞こえてきたか。
希望が一気に絶望へと変わる。
「こっちだよ」
「こっち…?」
再び聞こえてくる幻聴に、俺は今一度、希望を持って振り向いた。
「やぁ」
そこには人が居た。幻聴じゃない。確かに俺を見て、俺に向かって話す人物が。
「初めまして。人の子。意識はーーはっきりしてるかな?」
黒い、黒い服を纏った男。その男が俺に声を掛ける。
「…ぁ」
「…え?」
その瞬間、俺の目からボタボタと涙が溢れ、口からは嗚咽が漏れる。
「ぅ…ぅあ…ひっ……」
ーーその日、俺は名も知らぬ男の前で、恥ずかしげもなく泣いてしまった。
男は意味が分からないと言ったように首を傾げて、呆然と俺を見ていた。
《確認しました。案内人【死神】の召喚が完了しました》
《確認しました。称号【羞恥】を獲得しました》
《確認しました。称号【羞恥】を獲得したことにより、スキル【羞恥耐性】を獲得しました》
《確認しました。スキル【夜目】がLv2になりました》
《確認しました。スキル【羞恥耐性】がLv3になりました》