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いつか終わる物語  作者: むらさき毒きのこ
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ある時代における、女子高生の一日

 とある田舎の田んぼの真ん中に、農業高校があったのじゃ。福胃県立福胃農業高等学校、通称「ふくのう」。その「ふくのう」の現実科学科の一年生、「早乙女(さおとめ)イワシ」「(どめき)さより」「石突(いしづき)アユ」は、入学早々有名人じゃった。第一に、強烈なビジュアル。第二に、三人とも魚屋の娘。第三に、イワシは豚っ子、さよりはゴーゴンっ子、アユはハクビシンっ子じゃった。

 彼女らはいわゆる「キメラ」で、奴隷だった歴史をものともせず学ぶ、感心な子らじゃった。そんな彼女らをクラスメイト達はこう呼んだ。「おさかなトリオ」と。

 その日は暑かったのじゃ。豚小屋の臭気が全教室を満たし、生徒たちは気絶寸前。それでも授業が止まらないのは、先生がロボだったからじゃあ。


「トゥキュディデス先生、マジ止まんないよね」

「トキデデス先生に嗅覚をカスタマイズしたいよね」

「とっきーせんせい、ペロポネソス戦争の事見てきたかのように言うよね」

「それなー」


 おさかなトリオが教室のすみっこのイワシの席でお弁当を広げる頃、死者を弔う花火が田んぼの上空に炸裂しておった。薄暗い毎日に気分が塞ぐのか、クラスメイトはどんどん休学しておった。毎日登校しておるのは今のところ、おさかなトリオだけなのじゃった。


「あっついよー」


 イワシはそう言いながら、腰のところで三重に折り曲げたプリーツスカートをバサバサとまくり上げたり下ろしたりして、股に風を送るのじゃった。


「ぐっふ、おえっぷう……! ゴホッ! グボッ……!」


 鼻への刺激が強すぎたのか、アユが、さきほど食べたばかりのずんだ餅をリバースしてしもうた。そしてそれを見たさよりが驚いて、握りしめていた手を開いてしまい、好物のネズミの頭を噛み千切り損ねたのじゃ。しかし、さよりの毛髪は素早くネズミを捕らえ、ぎゅうっとネズミの息の根を止めたのじゃった。


「生け捕りにして欲しいのに!」


 さよりは自身の毛髪の不手際に対し怒った。そして、怒ったさよりの目を見たアユが、石になってしもうた。


「ああ! アユー!」


 イワシの嘆きも空しく、アユは床に転がって、そして動かなくなったのじゃあ。


「なによ、あんたも私の事、怖いんでしょ! みんなみんなみんなみんな、私のせいで石になってしまったから!」

「怖いよそりゃあ! それに前から言おうと思ってたんだけどさ! キメラって普通、動物とヒトのあいのこでしょ。何であんただけ……伝説の怪物なんだよ!」

「うるさい、ブス!」

「何だよ、化け物!」

「はあー?! きさま、言ってはいけない事を、口にしてしまったようだな!」


 さよりの目が怪しく光り、そしてイワシは黒いレースのTバック姿を晒したまま硬まり、その場にがたんと倒れ、永遠に、動かなくなったのじゃー。


「変な下着履いてんじゃないよ」


 さよりは「フン」と鼻で笑って、友人達を見下ろしたのじゃったー。

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