東京
恋愛ものは慣れておらず、手探りで書いてます。
アドバイス等ありましたら感想をいただきたいです。
また、低評価でも構いませんので、評価をいただけると大変助かります。
「お待たせしました!」
先にターミナルで待ってた俺に、後ろの座席に座っていた詩織が、敬礼しながらやって来た。
「じゃ、行こうか」
電車の駅を探して都心行きの電車に乗る。
羽田空港駅は始発のはずなのにすでにたくさんの人が乗っていた。
「うげっめっちゃ人がいる」
人混みは苦手だ。
中学の修学旅行は東京だったが、人酔いをしてしまった記憶がある。
「さすが東京だね」
詩織は人混みを特に気にしていないようだ。
ちょうど電車が出発したため、閉まったドアの近くに二人で立つ。
「どこで一人暮らしするん?」
「んーとまだ地名覚えてないんだけど、キャンパスから北側に歩いて5分くらいのとこ」
駅の近くか。
「そうなんか。俺はキャンパスの北東のアパートだから結構近いかもね」
都心に近づくにつれて、乗客が増えていく。
少し人酔いをしてきた。
「うう、、人が多いなあ」
「そうだね、、これが満員電車かぁ」
詩織はなぜかわくわくしたように言った。
「お前、なんか嬉しそうだな」
こっちはもう東京にげんなりしているのに
「だって、念願の東京デビューだよ!しかも一人暮らしだし!楽しみだな~」
確かに、詩織はずっと実家だったから、一人暮らしが楽しみなのかもしれない。
俺は寮だったから、あまり一人暮らしのわくわく感はないのだが。
電車のドアが開き、乗客が急に降りていった。気づいたら目の前にいた詩織が消えていた。
「詩織?」
降りる人波に巻き込まれたらしい。
「ひゃー」
マヌケな声を出しながら、流される詩織の手をあわてて掴む。
「あ、ありがとう」
詩織はなぜか楽しそうに笑った。
そうしているうちに、やっと最寄り駅についた。
満員電車で東京の洗礼を受けた俺はもう疲れ切っている。
「はあ、疲れた~」
詩織は俺の言葉を無視してスマホを見せてくる。
「私方向音痴だから、家まで一緒についてきてくれない?」
こっちはめちゃ疲れているんですが。
ていうか方向音痴って何?地図見りゃ分かるだろ。
俺は心の中で悪態をついたが、詩織は続けてこう言った。
「このあと、時間あるから大学のキャンパスを見に行こうよ」
確かに、入学式前に一度行ってみるのもいいかもしれない。
受験の時以来、キャンパスに入っていないから、今行くのはありだな。
「じゃあ詩織のアパート、俺のアパート、大学の順で行くか」
しばらく、スマホを見ながら歩いて詩織のアパートを探す。
あの、詩織さん地図では信号右なのにどうして左に行くんですか?
方向音痴って言ってるけど、あんたは地図を見てないだけじゃねえか。
一日中重い荷物を持って疲れてきた俺は、詩織の行動に心の中で突っ込む。
「あっあれだ!」
詩織が白い建物を指さして叫んだ。
なかなかおしゃれな建物だ。
「へぇ新しくて綺麗やん」
詩織は鍵を指で回しながらどや顔で言う。
「男子禁制の女子専用アパートなんよ。だから安心!」
そんなものがあるんだ。じゃあ男を連れ込めないのか。
まあ、女はだいたい連れ込まれる方だろうけど。
「ちょっと待っとって、荷物置いてくるから」
詩織はピューと建物の中に消えていった。
3時間も飛行機と電車に揺られていたのに元気なこった。
「へいへいお待たせ」
数分後、詩織が手ぶらで降りてきた。
財布とスマホが入ってズボンのポケットがパンパンになっている。
セカンドバックとかにいれないのか。
お前は男かよ。
「じゃあ俺ん家行くか」
詩織のアパートから歩いて10分のところに俺のアパートがあった。
「へえ、思ったよりきれいじゃん」
「一応、学生専用アパートだからな」
そういって、俺はアパートに入る
「じゃあちょっと待っててくれ」
自分の部屋の鍵を開ける。
「お邪魔しまーす」
後ろから当たり前のように、詩織がついてきた。
「待っとけ言ったのに」
詩織は部屋の中を覗きながら答える。
「別に女子立ち入り禁止のアパートじゃないからいいやん」
「おおー段ボールだらけ。なんか狭いね」
部屋には実家から送った段ボールが山積みになっていた。
「一人暮らしだからこんなもんやろ」
一日中持っていたスーツケースとリュックを置く。
肩がとても軽くなった。
やっと重い荷物から解放された開放感で飛びそう。
「じゃあキャンパス行くか」
俺は、部屋を熱心に覗いている詩織を引っ張り出し、キャンパスへと向かった。