翌週(2)
「だから詩織、私は裕太くんとお付き合いすることになったの。ごめんね」
日向からの電話を聞いていた詩織は、一瞬何を言っているのか分からなかった。
ゆうちゃんと日向先輩が付き合った?
うそ
ゆうちゃんに彼女ができた?
混乱する頭を必死に整理して、落ち着けた声で返す。
「なんで謝るんですか?おめでとうございます!」
何とも言えない黒い感情が詩織の心を覆った。
大好きな日向先輩に対して、そんな感情を持ってしまう自分に嫌悪しながらも、その黒い感情は止まらなかった
「うん、、ありがとう」
詩織の声を聴いた日向は少し戸惑ったような、でも安心したような声で言った。
電話を切った後、詩織はベッドに大の字で寝っ転がる。
日向先輩、ゆうちゃんと私を応援するって言ってたじゃない。
でも、日向先輩に八つ当たりしても意味がない。
先輩の言葉にただの幼馴染って否定したのはほかならぬ詩織だ。
大学で裕太とほとんど会えず、距離が遠のいてしまったことは紛れもなく詩織の責任である。
しかも、詩織は裕太のことを自分の男にすることには少ししり込みをしていたにもかかわらず、他の人の男にはなって欲しくないという我儘めいたものであった。
詩織はベッドに突っ伏して声にならない声で泣いた。
その涙がどれに対する涙なのか詩織自身もよく分からなかった。
「というわけで陽子さん、日向先輩と付き合うことになりました」
俺は、陽子にケーキを奢りながら頭を下げていた。
「ふふふ、面をあげたまえ。私のおかげといっても過言ではないな」
陽子がいつも通りどや顔でふんぞり返っていたが、今回は全く苛立たない。
俺は菩薩のように穏やかな心で答える。
「はい、陽子さんには頭が上がりません」
「よろしい、よろしい」
陽子はひとしきり満足そうにうなずいた後、感慨深そうに言った。
「いや~でも裕太くんもリア充の仲間入りか。ようこそこちら側の世界へ」
「これからもいろいろ相談に乗ってもらうことがあるかもしれない」
「任せろ。ちなみに付き合ってからヤルまでは平均6か月だぞ。それまでは一人で頑張りたまえよ」
陽子は親指を立てて下ネタをぶっこんできたが、俺は穏やかに返した。
「はい、頑張ります」




