告白
「ふう~ん、それで裕太君はその子を追いかけなかったの?」
カフェで俺が奢ったホットケーキを食べながら陽子が言う。
その週の半ば、俺はたまらずケーキ屋での詩織の行動について陽子に助言を求めていた。
「あまりに突然のことで何をすればいいかわからなかった」
結局、あの後も電話もラインもしていない。何を話せばいいかわからないし、なんて返事が返ってくるかわからない。連絡を取ることが少し怖かった。
「君は女心をわかってないな」
陽子がニヤニヤしながら言う。
この人は俺のピンチがよほどうれしいらしいな。
「はいはい悪かったよ」
俺は続けて聞く。
「で、あの時あいつは何で出ていっちゃったのか?」
別に前の会話も傷付けたという自覚はないし、客観的に見てもそんなセリフは言った覚えがない。
「そりゃあ、女として見られていないことが確定したからだよ」
女として見てない?
いやそんなことはない。この前泊りに来た時にかなり戸惑ったんだぞ。結局寝てしまったけど。
だが、なるほど。
そういえば詩織が泊まりに来たことについて、全く気にしていない的な発言をした後に空気が凍った気がする。
「そんなこと言われましても、幼馴染って言ってたんだよ」
詩織が幼馴染と言ったから、泊まりに来ても平気なんだと答えただけだ。
「幼馴染と恋人は成立するのです」
陽子は人差し指を立てて解説する。
そんなもんか?それは少女漫画の読みすぎではないか?
「でも、謝ることでもないから難しいね」
確かに、女として見てないように見えてすみませんでした。
これからは詩織のことを女として見ます。
こんな謝罪はできるわけないし、詩織もそうやって女として見られても不満だろう。
「もしかすると、このまま距離が開いちゃうかも」
陽子が少し不安そうに、でも楽しそうに言う。
この人は人の不幸が楽しいんだろうな。
まあ、俺が深刻に悩んでいるように見えないことを確認済みで言ってそうだから不快感はないが。
だが、確かに詩織とどのような顔して会えばいいのだろうか。
いきなり席を立った詩織に対して不安を感じている。
しかし、同時に戸惑いや苛立ちを感じているのも事実だった。
少し、距離を置いて頭を冷やすのがお互いのためかもしれない。
「そうかもしれないな」
オブラートを知らない陽子のおかげで、事情がだいたいわかった。
陽子に感謝すると同時に、俺はもう一つの重要な相談をする。
「話変わるんだけどさ」
「ん?」
陽子はジュースをストローで吸い上げながら上目遣いで俺を見る。
こうしてみると、やっぱりかわいいな
「告白ってどうやるの」
「は?」
陽子は口にストローを付けたまま目が点になる。
「なに?誰に告白するの?」
ワクワクした目で見てくる陽子に一瞬間をおいて答えた。
「日向先輩」
陽子のテンションは最高潮に達した。
「まじ!?」
「好きになったの?」
陽子になら言ってもいいか、と昼間っから本心を言ってみる。
「好きって気持ちはよくわからないけど、あの人の彼氏になりたい」
「キャー純情~」
陽子は大喜びではしゃいでいる。
お前の飲んでいるカフェのジュースはアルコールなんですか?
「いつ?いつ?いつ告るの??」
「来週、食事に行くことになっているからそのあとにでも」
「っていうか二人で食事!?やるなぁ~」
確かに、最初はあの日向先輩と二人で食事に行くなど考えてもなかったが、思えば関係はどんどん親密になっていく。告白できる関係になるなんて俺はもう感激だよ泣
「がんばれよ!応援してるから」
陽子は詩織の相談についてすっかり忘れたように親指を立てた。




