上京
恋愛ものは慣れておらず、手探りで書いてます。
アドバイス等ありましたら感想をいただきたいです。
また、低評価でも構いませんので、評価をいただけると大変助かります。
「じゃあ行ってきます」
「体に気をつけるんだぞ」
「いってらっしゃーい」
いよいよ上京するときがやって来た。
空港行き地下鉄の改札で両親とお別れをする。
それにしても。
ちょうど来た地下鉄に乗りながら、ニコニコ隣に立っている詩織に目をやる。
「なんで一緒の飛行機なんだよ」
詩織はVサインをしながら、嬉しそうに言った。
「親が勝手にとったんだから仕方ないでしょ」
平日の午前中だが、結構乗客が乗っており、席には座れなかった。
それでも、市の中心を過ぎると、少しずつ席が空いてきた。
「ほら空いたぞ。座れよ」
俺が立っている前が空いたので詩織に促してみる。
「運動部だった名残で電車では座らないんよ。ゆうちゃんが座っていいよ」
「じゃあ遠慮なく」
俺はドカッと腰を下ろして、スーツケースを膝で挟んだ。
続いて詩織の前の席が空くと詩織はさっと座った。
座らない主義じゃなかったんかい。
それにしても、前回とは打って変わって詩織はリラックスしているように見える。
「この前とは別人だな」
隣の座席にいる詩織に声をかける。
「私、すぐ酔っちゃうけど記憶は残るみたい」
なるほど。焼肉屋での酔った詩織は、昔のように俺のことをゆうちゃんゆうちゃんと呼んでいたが、
ばっちり記憶にあるようだ。
「この前は、その、、酔っちゃって、いろいろしちゃったけど」
なんだその言い方。
詩織さんも少し顔を赤らめて言わないでください。
「しちゃった」言うても、幼馴染だってことを主張して、何度か頭を叩かれただけだ。
「地下鉄で誤解を招く言い方するな」
詩織を少しどついた。
飛行場で少し早いランチを食べ、飛行機の出発を待つ。
飛行機は1時間くらい前に飛行場についておかないといけないため、いくら飛行機が早いからと言って、場所によっては新幹線で行く方が早かったりする。まあ、今回は東京なので飛行機に文句もありませんが。
待合室の中で不意に詩織が聞いてくる。
「ねえ、そういえば高校になってなんで帰ってこなくなったの?」
「勉強があったってのと、どうせみんな忙しいだろうから」
全寮制だから帰省する生徒のために長期休暇の時は部活動は活動しない。
だが帰省しても、地元のみんなは部活動をしているため、結局遊び相手がいないのだ。
「ふ~ん、ねね男子校ってどうだった?やっぱり男の子同士で??」
詩織の眼が妖しく光る。
「何がだよ」
男子校だって話をすると、稀に同じ目をしてくる女子がいる。
男同士の恋愛を楽しんでいるらしい。
詩織もまさか同類なのか。
別に男子校だからって、女子との接触の機会が全くないわけではない。
なんと一年に3回もあるのだ。
「そうそう、文化祭には他校から女子がめっちゃ来るんよ」
文化祭、体育祭、バザーは三大女子交流デーだ。
「え~ナンパとかするん?」
詩織はからかうような笑顔で聞いてくる。
「そうそう、俺も高2の時女の子一人捕まえてさ」
男子校に突撃する子はいわゆる「ナンパ待ち」と同じだ。
声をかけると結構仲良くなれる。
「ふ~ん、それでどうしたの?」
ん?詩織の声が少し低くなった。
詩織さん笑顔のまま固まっているんやけど……
ていうか、目の奥笑ってないし。
「結構連絡とるのめんどくさくてさ。何回か一緒に遊んでそれっきりだった」
少し冷や汗を流しながら答える。
「そっかぁ。じゃあゆうちゃんはまだ彼女できたことないんだね」
機嫌が直ったのか、詩織がニヤニヤしながら言ってくる。なんか腹立つな。
「そういうお前はどうなんよ」
「私?私はソフトボールが恋人だから」
「でも、告白とかされなかったん?」
自然な流れで聞いてしまった。
え?こんなにかわいいのに彼氏いなかったんですか?告白くらいはされたでしょうに
こんな思考をしてたらついぽろっと聞いてしまった。
「ん?なんで?」
案の定、詩織が聞いてくる。
しょうがない、素直に言うか。
他に言い訳思いつかないし。
「その、お前、、か、可愛いから」
可愛いなんて口に出したのいつぶりだろう。
ああ、男子校時代にアイドルの話でよく言ってた。
思ってたより最近言ってたわ
詩織は少し顔を赤くして、俯いてぼそぼそと言った。
「んー何回かはされたけど、まだ私には早いかなって」
あら、意外と乙女なのね。ボーイッシュなのに。
『羽田行き55便A席F席のお客様から案内を開始します』
「ああ!私F席だから行くね!お母さんによると座席は離れ離れらしいから、また東京で!じゃあね!」
詩織は早口でまくし立てるとあっという間に人混みに消えていった。