日向のジレンマ
日向は今まで交際経験はゼロである。
高校の時に告白された回数は8回、すべて覚えている。
関係が気まずくなるため、告白されるのはトラウマ並みに嫌いだった。
高校の時の告白はみな男友達からされたものだった。
二人きりで出かけたこともないのに告白された。
別に、男に全く興味がなかったとは言えない。友達に彼氏ができて楽しそうにしている様子を見るとうらやましいと思ったこともある。ただ、男友達の告白は勘弁してほしかった。私は友達だと思っていたのに、向こうは私を「女」として見ている。その事実に悪寒が走る。
高校2年生の時、とても優しい先輩がいた。いつも声をかけてくれて、励ましてくれて、ソフトの試合で負けた時は慰めてくれた。その先輩のそばにいるといつも安心感があった。
あるとき、街でその先輩を見かけた。声をかけようとしたとき、女子中学生がその先輩にぶつかった。すると、先輩はその女の子を睨みつけ「どけよブス」と言い放った。
ショックだった。私に優しくしてくれたのは、私がブスではなかったからなのか。私の外見だけですり寄ったのか。あの優しさは嘘だったのか。茫然と立ち尽くした。
その後、その先輩を避けるようになり、告白されたときも断ってしまった。
私は、その先輩を好きになりかけていたのかもしれない。だから、違う一面を見た時、裏切られたような気がして自分の内面を見せるのが怖くなったのだろう。
そして、日向は少し男性不振になった。
大学になっても、よく男性からデートに誘われる。さすがに、いきなり告白されることはなくなったが、友達から恋人への昇格を狙っているタイプと派手に遊んでいそうなタイプばかりで苦手だった。
そんな中、サークルの後輩として入ってきた裕太は日向にとって新鮮だった。
先輩先輩言ってきて懐いているが、同時にしょっちゅう口説いてくる。それも少女漫画でも言わなそうなセリフで。こっちが恥ずかしくなるくらいだ。でも、他の女の子と態度は全く変えずにいつも自然体でいることに好感を持った。そして、私が酔った時には介抱してくれる優しさもある。
こちらが先輩なのに、包まれてしまうような雰囲気があった。
まだ、誰かに恋をしたことはないけど、だんだん裕太に惹かれている自覚はあった。
だが、唯一の不安は詩織だ。
詩織が裕太のことを好きだということはうすうす気づいている。
しかし、詩織自身がまだ自分の気持ちに気づいていないことと、詩織から「応援している」という言葉をもらったことから、アタックしていいように思えた。
しかし、大切な後輩の好きな人を横取りしていいのかというところも迷わせた。
「もうアタックしちゃっていいのかな」
ベッドに寝転んでスマホを見ながら日向は呟いた。
ここ最近、裕太からよくお誘いが来る。そして、それを見て嬉しくなっている自分がいる。
恐らく、私が裕太に恋をするのも時間の問題だろう。
「もう少しだけ様子を見よう」
もうあまり待ってやれないよ、詩織。
日向はそっと目を閉じた。




