涙
日曜日、詩織をケーキ屋に連れて行った。
日向先輩といった隣町のケーキ屋だ。
「詩織、久しぶり」
あの夜以来、すこし会うのが気まずい。
「うん」
詩織もぎこちなく返事をした。
「どうした?機嫌悪いけど」
「ううん、別に」
何とか雰囲気を壊さないようにしながら、店に入ってケーキを頼んだ。
「じゃあ食べよう」
「おいしい」
苺ケーキを頬張った詩織が笑顔になる。
だが、いつもの元気はどうした。
なんか今日はおとなしいんですけど…
うう、沈黙がこわいなあ
「そういえば日向先輩とここ来たん?」
「うん、日向先輩から聞いたの?」
「詩織が喜んでいたって」
「日向先輩も気に入ってたみたいだよ」
日向先輩は優しいから、文句があっても何も言わないけど、
詩織を連れてくるくらいだからとても気に入ってくれたのだろう。
「それは、よかった」
心から安心すると、詩織がじっと見てくる。
だから今日の詩織さんちょっと怖いんですよ…
「ゆうちゃん日向先輩とくっつけばいいのに」
はいきたーー
何回目だよその質問。
詩織だけじゃなく、花さんも京子も聞きすぎだろ。
(問)俺のことを少し意識しているであろう女子「先輩とお似合いだよ」
この返答として、最も適切なものを考えて書きなさい。
無理です。
大学試験の試験科目にありませんでした。
そもそも、男子校卒業して4か月程度の俺には難しすぎんか?
「日向先輩は…いい人だよ」
考えに考えた挙句、全く答えになっていない会話を返す。
「詩織は、、俺のことどう思ってんの」
逆に聞いてみる。
これは、本人に模範解答を示してもらうのが一番だ。
詩織は、ビクッと体を震わせた後、俺より長い時間考える。
そして、絞り出すように答えた。
「気軽に会える幼馴染」
なじんではないのだが。
まあ、俺のことは男として見てないと。
なるほどなるほど。
この前の夜のチキンな俺の行動は結果オーライということですか。
まあ、わかっていたけどね。
「なるほど、だから俺の家に泊まれたのか」
ぽろっとつぶやいた俺の言葉に詩織が固まる。
あれ?ワタシ、モシカシテ地雷フミマシタ??
「……あの、詩織さん」
詩織は食べかけのケーキをおいて席を立つ
「ごめん、、ちょっと体調悪いから帰るね」
ヤバいヤバいヤバい
え?この人泣きそうやん…
なんで?なんで?
「何か傷つけること言ったなら謝る」
「ううん、、何でもないの」
詩織は泣きそうな声を抑えるような声で答えた。
「ねえ、ゆうちゃん」
最後に俺に振り替える。
「私は日向先輩とゆうちゃんを応援するからね」
一人店に残された俺は、茫然と食べかけのケーキを見つめていた。




