お酒のせい
練習から帰ると電話が来た。
詩織からだった。
「ゆうちゃ~ん」
トロンとした声が聞こえる。
どうやら酔っているらしい
「どうした」
「今から会えな~い?」
ちょうど、晩御飯を食べに行こうと思っていたところだ。
「ん、晩飯まだだから食べに行くならいいぞ」
ヨシっという独り言が電話越しに聞こえる。
「じゃあ駅前の定食屋で~」
駅前に行くと、ふらふらとする人影が見えた。
あれは、詩織だ。
「酔いすぎだろ」
詩織であることを確かめて肩を掴む。
「今日は友達と試験の打ち上げしてたんだ~」
どうやら宅飲みをしていたらしい。
そして、駅前の定食屋に入る。
俺は腹が減っていることもあってとんかつ定食を頼む。
詩織は晩御飯はもう食べているらしく、ジュースだけ頼む。
「ねえ、私のことどう思う?」
注文したとんかつがきたので、むしゃむしゃ食べていると詩織が聞いてくる。
「どうって、昔の知り合い」
詩織は不満そうに頬を膨らませる
「それは関係性でしょ?」
酔った目で覗き込んでくる。
「もっとほら、他に何かないの?」
仕方がないので褒めておく。
「まあ、かわいいと思うよ、顔とか」
「うへっ、へへへ」
詩織はなんかキモイ笑い方でヘラヘラ笑った。
「私もゆうちゃんかわいいと思う~」
上機嫌で楽しそうだなこいつ。
「誰か好きな人いないの?」
ついでのように詩織が聞いてくる
「いないよ」
まあ、お前は攻略対象の1人だがな
一瞬、間が開いた。
そして、詩織が酔いに任せたように言った。
「じゃあ、私と付き合ってみない?」
はい?
今なんて言った?
酔っているのか?
でも、それだけじゃない。詩織の目は真面目にも見える。
え?こんな簡単に彼女ってできるの?
「な、なんちゃって」
茫然としている俺を見て、慌てて詩織が種明かしをしてくる。
なんだ、冗談かよ
童貞をからかいやがって
俺は少し不貞腐れた。
腹いっぱいになったので、定食屋を出る。
いつも通り、詩織を送って、帰宅する。
「ゆうちゃんは日向先輩をどう思っているの?」
帰り道、少し口数が減っていた詩織が聞いてくる。
また日向先輩か
京子に陽子に詩織。
みんな日向先輩好きだなあ
ぐへへ、そんなにお似合いかな?
「素敵な人だね。きれいだし」
とりあえず、詩織の前では日向先輩をほめるに限る。
詩織は、日向先輩への誉め言葉を自分のことのように喜ぶのだ。
「ふーん」
あれ?詩織さんいつもと反応違くないですか??
なんでそんなに微妙な表情しているの?
もしかして二人喧嘩した?
そのまま、ぎこちなく会話するうちに詩織のアパートに着いた。
男子禁制なので入り口でバイバイする。
「送ってくれてありがとう」
「うん、じゃあね」
詩織に手を振る。
だが、詩織はなかなか部屋に入ろうとしない。
「あ、あの」
詩織は意を決したように振り向いた。
「今日、まだまだお酒飲みたい気分なんだけど、ゆうちゃんの家に行っていいかな」
なんだ宅飲みか。
こいつそんなに酒好きになったのか。弱いくせに。
へ?
俺の部屋!?
二人きりで!?
俺の頭は真っ白になった。




