ゴールデンウイーク(8)
俺は待ち合わせの駅にダッシュしていた。
いかん。寝坊してもうた
おとといは詩織とスカイツリーに見に行った。
あれ?詩織と行くのはスカイツリーじゃなくて渋谷だったはずでは?
そう、完全に京子とごっちゃになっていたのである。
幸いなことに、詩織は俺との約束は覚えていたものの、約束の内容までは覚えていなかった。
おそらく、詩織のやさしさというよりは俺と出かけることを楽しみにしてくれていたのであろう。
そう願いたい。
そして、昨日は高校時代の友達の大樹たちと飲みに行った。
ついつい、話が盛り上がり、カラオケまでして家に帰ったのは夜の1時である。
そして、今日起きたのは10時7分だった。
京子との待ち合わせは10時である。
たった7分とは思ってはいけない。7分間ずっと来るはずの人を待っているのだ。
俺だったら連絡がなければ3分で帰る。
俺は即座に京子に電話して謝罪した。
京子は笑って許してくれたが傷つけたのは変わらない。
何とか準備を完了させ、駅に着いたのは10時30分だった。
京子が待っている喫茶店に入る。
「ほんっとうにすみませんでした」
京子が座っている席に行き、スライディング土下座並みの謝罪をする
「いいよ、ちゃんと連絡くれたし」
京子は優しかった
でも、少しそっけなくなっている
「じゃあ行こうか」
席を立つ京子に慌ててついて行く
「スカイツリーは任せて。ちゃんと予習してきたから」
「なにそれー笑」
まさか、詩織と二人で言ったなんて口が裂けても言えない。
「あと、今日の遅刻のお詫びになんでも一つ田中さんの言うことを聞きます」
ランチぐらい奢らないとな
「なんでも?」
京子の目が突然妖しく光る。
俺は身震いした。
まさか、全裸で渋谷スクランブル交差点を駆け抜けろとか言われないよな
「あ、もちろんできる範囲で」
あわてて付け足す。
「ふーん、考えとこ」
京子は少し意地悪な笑顔を浮かべた。
そのあとは、おとといの焼き直しのような時間であった。
東京スカイツリーの行列に並んで中に入り、
しばらく展望台に上がった後、景色を楽しみ、
人酔いし、休憩し、高いランチを食べた。
浅草でも、雷門を見学し、人力車に乗って詩織の時と同じルートを見て回った。
京子とおしゃべりして何とか紛らわしているが、死ぬほど退屈だ。
スカイツリーとか浅草は正直1回観光すれば、もういい。
中1日で行く方が悪いのはわかっている。
これは俺のミスだ
まあ、京子、詩織と相手が違うからまだましだが。
「今日は楽しかった!」
何とか無事に観光を終わらせた浅草からの帰り、京子は嬉しそうに言う。
遅刻した負い目と、俺の退屈しのぎに京子とおしゃべりばかりしていたからか
あと、おととい行ったばかりだったから、スマートにリードできた。
「こちらこそ、楽しかった」
「また誘うね」
しれっと次回の予約もしておく。
「うん!」
駅についた。
京子のアパートは駅の反対側だから、ここでお別れだ。
俺が手を振って帰ろうとすると、京子に呼び止められる。
「そうそう、なんでもいうことを聞いてくれるってやつ」
ちっ、覚えていやがったか。
何にも言ってこないから、忘れていると思っていたのに。
「何か買ってもらうのは申し訳ないし、、、」
京子はもじもじしていたが、意を決して口を開いた。
「な、名前で呼んで欲しいな、、みたいな」
名前?名前って京子?
「ほ、ほらわたし、田中ってありふれた苗字でしょ、だから名前で呼んでほしい」
何だそんなことか。
ほれ
「京子」
「あっ」
いつもの癖で呼び捨てにしてもうたー
「う、うん、、ありがとう」
京子も少し驚いたが、受け入れてくれたようだ。
なんだ、押せば行けるじゃん俺
「じゃあ、裕太君。おやすみ」
「まだ寝ないよ笑。じゃあね」
こうして、京子とのお出かけも終わり、
何とか無事にゴールデンウイークを締めることができた。




