法律研究部
4月の中旬、大学生活にも大分慣れてきたころ、法律研究会の新歓があった。
俺は早速集合場所に行ってみると、すでに何人か集まっていた。
ん?
見覚えのある奴がいる。
俺はそいつに近づき、肩を掴んだ。
「詩織、お前は経済学部だろうが。なんで法律研究会の新歓に来てんだ」
「ゆうちゃん!」
声でわかったのか、名前を呼びながら詩織が振り返る。
「そういえばゆうちゃんとの連絡手段持ってないし」
「で、ゆうちゃん法律研究会に興味持っていたでしょ」
「だから今日来たら会えるかもって」
なるほど、確かに俺もラインをもらい忘れていた。
「はいはい、ラインな」
ラインのコードを詩織に見せる
「はい、じゃあ帰れ」
背中を押したが詩織は踏ん張る。
「やだ、せっかくだからお肉食べる」
「は~い、入部希望者は私についてきてください」
しばらくして、部員が呼びに来る
場所は文系のグラウンドだった。
部員の先輩たちがすでにバーベキューの用意をしている。
部員10人、新入生10人くらいだ。
「じゃあみんなタレとお皿を持って」
そう言いながらタレと皿を配っていたのは桜井先輩だった。
「あれ?詩織と山田くんじゃん。来てくれたんだ」
そう言って微笑む桜井先輩に、詩織が笑顔で答える。
「えへへ、日向先輩に会いたくて来ちゃいました」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん、はい皿」
バーベキューが始まり、俺は他の新入生や先輩たちとの会話に混ざった。
詩織は桜井先輩にべったりだ。
別の部員がスマホを見ながらグラウンドを離れる。
「集合場所に今来た1年生がいるみたいだから、連れてくるね」
数分後、新たに数人の新入生が連れられてきた。
そのなかに京子がいた。
「あれ?山田くんじゃん!」
「田中さん!田中さんもバーベキュー来たの?」
京子は割り箸を割りながら答える。
「うん!法律の勉強もしようかなって思って」
そう言っていつものように京子とおしゃべりをしていると、
京子の向こうに見えていた桜井先輩が俺に向かって手招きをしている。
京子との会話を切り上げて二人のところへ向かった。
「桜井先輩どうしました?」
「山田くん、あの人との関係を詩織に説明してあげて」
「えっ?」
あの人とは京子のことか
「詩織がさっきからずっとあなたたちの方を見て気になっていたから」
そう言われると、詩織は慌てて言う。
「ち、違いますよ!なんとなく向いていた方向があっちだっただけです」
あたふたとする詩織に一応答える。
「ん?まあただの友達」
桜井先輩はニコッと笑って詩織の頭をなでる。
「よかったね、詩織ちゃん。ただの友達だって」
「別に私には関係ありません!」
詩織は少しむくれていた。
「日向先輩お酒飲まないんですか?」
詩織のせいで、つい名前で呼んでしまったが、桜井先輩は特に気にしない。
「私お酒に弱くて、すぐ酔ってしまうから今日は飲まないの」
こんな清楚を絵に描いたような先輩が酔って乱れるのか。
ウホッ、飲み会が今から楽しみだ
「今酔った先輩を妄想したでしょ」
詩織がじろりと睨んでくる。
「してない」
はい、してました。
二人との会話を切り上げて、肉を取りに行くと今度は京子が待ち構えていた。
「山田くん、さっきの人たちは?」
「えっと、昔からの知り合いと誘ってくれた研究会の先輩」
京子は二人を見て言う。
「そうなんだ。どっちも美人さんだね」
そして、いたずらっぽく聞いた。
「山田くんはどっちがタイプ?」
俺は2人を見る。
日向先輩は、長くて綺麗な黒髪が似合う清楚な美人。
一方詩織も黒髪ショートのボーイッシュな格好と可愛い笑顔が魅力的だ。
「究極の2択だな」
すると、京子は冗談ぽく付け加える。
「じゃあ私を入れて3択にしよう」
あっ、これは聞いたことあるぞ。
とりあえず、聞いてきた本人をタイプといっておけばいいやつだ。
「じゃあ田中さん」
俺が即答すると一瞬空気が止まった。
あれ?答えミスったかな?
恐る恐る京子を見る。
京子はじっと皿の中にある焼肉のたれを見ていた。
「ふ、ふーん。ダメだよ山田くん。そんなに簡単に…」
えらく動揺している。
「いや、俺男子校だったからよくわからないけど、失礼だったかな」
魔法の言葉「男子校」を使う。
「いや、迷惑とかは、、全然、」
京子はそう口では言っていたが、ピューとどこかへ行ってしまった。
その後、バーベキューが終わるまで京子とは話せないままだった。




