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26 伯爵へ地の底からの贈り物

 その日の事。

 私は数人の護衛と供に伯爵領にあるシュルーズベリー鉱山跡に来ていました。

 実は数日前にちょっと大きな地滑りがあり、様子を見に来たのですが……。


「あら、ここね」


 やはり報告の通り、坑道が大きく崩落しており、先に進めない状態になっています。


「随分崩れてますね、アルシア。ここも危ないのじゃなくって?」


「見た感じは大丈夫そうですけどね。……心配ならお姉様はついてこなくて宜しかったのですよ?お召し物も汚れますし」


「まぁ、アルシア!伯爵の貴女が自ら伺うというのに、私だけぼんやりと館に居られないじゃ無いですか。私のいない間に、貴女に何かあったらと思うと、食事も喉に通らなくなってしまいますからね」


「あー、はいはい」


 口ではそんな事を言っていますが、どうせお姉様はお一人だけのけ者にされるのが嫌だったのでしょう。

 このこまった私のお姉様は私が出かけるときは一緒に連れていかないと、スグに僻んでしまうのですよ。


「……なんですか?その投げやりは口調は」


「なんでもありませんよ?お姉様」


「アルシアは私の事を邪険にしますが、本当に貴女の事が心配なのです。もし貴女になにかあれば、せめて私も一緒に神の元に旅立つ覚悟は出来ているのですから」


 と言って、お姉様はいつになく真剣な表情を受かべます。

 どうもこの人は本気で言っているのかどうか分かりずらいですね……。

 私はしばらくお姉様の顔をまじまじとみつめていましたが、「はぁ~」と溜息を付くと、


「分かりました、私もあの世で一人切りは寂しいですからね。精々一人では先に死なないようにします」


 と言いながらも、崩落した場所に手を触れます。

 ん?

 なんか違和感がありますね。

 これは?


「伯爵様、一体なにを!?」


 私は周りが止めるのも聞かずに手で念入りにコスってみます。

 すると、見慣れた透明感のある輝きが現れたではありませんか。


 これは……クリスタル?

 そうだ、これは魔力を秘めたクリスタル……通称魔石と呼ばれる物じゃないですか!


「ア、アルシアこれは……?」


「お姉様、少し離れててください」


 私は念の為、お姉様や付き添いの者を下がらせてから魔力を流し込みます。

 ……思った通りです。

 魔力に反応して淡く光始めました。


「間違いないですね、これは魔石の原石です」


 私は下がらせていた者達を呼ぶと、崩落した岩石をかたっぱしからコスるように指示します。

 すると表面の汚れが落ちたあちこちの場所から、透明感のある輝きが現れたではありませんか!


 ふむ、するとこれが全部ですか。

 私は自然と笑みがこぼれだしました。


「フフフフ、ハハハハハ、お姉様見てください。これ、全部魔石の原石ですよ!」


「こ、この大きな岩が全部ですか?」


「えぇ、そうです。この、上から落ちてきた地層そのものが大きな魔石の原石ですよ」


 この魔石と呼ばれるクリスタルは様々な用途に使うので王国だけでなく周辺国でも非常に需要が高い代物です。

 しかもです。

 先程魔力の流しの感じからすれば、かなり純度の高い代物の用ですね。

 先程、私が魔力を流した場所が淡く光り、そしてその光を露になった周りの魔石が反射して美しく輝きます。

 今、見えている分だけでも、個人が取得すれば一財産築き上げる事ができそうな気がします。

 私は目の前の素晴らしい光景から目を話さずに口を開きました。


「スグにこの鉱山を開発出来る様に手配しましょう、ええ他の作業は一時的に止めてでも最優先でです」


「……ア、アルシア?何か貴女『悪い』事を考えているのではないでしょうね?」


 その言葉で私は魔石から目を話すと、お姉様の方へと向き直ります。


「……なぜですか?」


「だってアルシア、今の貴女の顔、イタズラをしてお父様を困らせていた時の顔とそっくりなんですもの」


 そう言ってお姉様は私の顔にビシっと指を差します。


「何を思いついたのかは知りませんが、もうアルシアはあの時とは……無邪気な子供とは違うんですからね?ちゃんと自制してもらわなければ困りますよ?」


 私はお姉様から目を逸らしながら、


「はははは、ソンナコトカンガエテイルハズナイジャナイデスカ」


「……だったらなんで目を逸らしているのですか?それに言葉も何か不自然になってます」


 と、問い付めてきます。

 く、こんな時だけお姉様のカンは鋭いですね……。

 確かに私はある事を計画していました。

 それは私が留学先の賢者の学院で研究した事の一旦であり、研究以外の目的でこれをすれば共和国では勿論の事、王国でも違法性が高いもので……。

 ただ、ソレをするには純度の高い、高価な魔石が大量に必要である為、学院を離れた今、研究などは諦めていたものなのです。

 勿論、そんな本音はお姉様に言えるはずもありません。

 なので適当に誤魔化す事にします。

 私はわざとらしく溜息を吐くと、


「……お姉様には敵いませんね、実はこれだけ魔石があれば学院でやっていた研究の続きが出来るかも?って思ってしまったのです」


「若しかして、伯爵の責務を放り出してですか?」


「えぇ……」


 私はバツの悪そうな顔を作りました。

 ……上手く誤魔化せたかな?

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