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20 伯爵はイロイロ考えてます

 そんなこんなで始まりました、伯爵家の商会設立ですが、結局の所、皆さんが頑張ってくれたおかげでスグに商売が軌道に乗り始めました。

 伯爵家と取引のある商人が物は試しにと王都で販売したところ、大変好評だったようですね。

 質の面では問題が無い事は分かっておりましたが、実際に受け入れられるかどうかは別物なので、好評と聞き大変うれしいですね。

 商会ばんざーい、バンザーイ。


 私としてはスグにでも生産を増大させたかったものの、あいにくと作成者はアナベラ一人なのでそう簡単に増産できませんね。無念……。

 どのみち増産の面がネックになるんなら、もっと貴族にウケの良い希少性を高めた方が良いのかも知れません。

 ……それについては腹案があるので、そのうちなんとかする事にします。

 もっとも、ウェズ達も早急に事業を拡大するのは反対みたいですね。

 もぅ、みんな慎重ねぇ……。

 と、私がいろいろな考えに耽っていると、


「アルシア?そんなに難しいかおをしてどうされたのです?」


 と、考えを邪魔するかのようにお姉様が話しかけてきます。

 もぅ!この人は本当に一体いつ教会に行っているのでしょう?

 本来ならば司祭様からお小言でもあるのでしょうが、前伯爵の娘、現伯爵の姉という事で遠慮があるのでしょうね。

 本来ならば出家したばかりの修道女が教会に通いなどない事なのです。

 そしてお姉様は私の前に入れたての良い香りがするお茶をおくと、


「あまり根を摘めると体躯からだに悪いわよ」


 と言ってニコリとほほ笑みました。

 そして私の机から一枚の紙を手に取り眼をやると、


「まぁ、アルシア!貴女の考えたご商売はうまくいってるみたいじゃない。おめでとう」


 などど言ってくれましたが、それは伯爵である私宛に来たお手紙ですよ?

 本来ならば家族と言えど、勝手に見ていい物ではないのですが……。

 でもお姉様にはどうにも指摘しずらいので黙っておきます。

 あー、ちょっとお姉様にも相談してみますか。


「お姉様、商会のブランドイメージを高めるために、紋章を刻印しようと思うんだけど、どう思います?」


「紋章?それはアルシアのじゃなくてシュルーズベリー伯爵のものを使うの?」


 そうです、紋章とは家に引きつがれるものと、個人に使われるものがあるのです。

 ふふふ、私とお姉様の紋章はおソロですよ?

 一箇所だけ、私のはミツバチ、お姉様のはハートになっているだけの違いです。


「うーん、伯爵家の事業なので伯爵家の紋章にしたいんだけど……。お姉様は反対なさる?」


「私はよくわからないけれど、アルシアはそれを伯爵家のご商売にするのよね。それだったら伯爵家の紋章を使用するのが筋なのではなくって?そのご商売は貴女だけでなくアルシアの子供にも爵位と共に受け継がれるのですからね。それに……」


 そこでお姉様は少し遠い眼をすると、


「それに、私も社交界ソサエティでは色々なお話を耳にしました。最近では海外帰りの方々が大変はぶりを聞かせていると。ご商売で大成功して次々に社交界ソサエティに入ってきているみたいね。ウチみたいにただ古いだけの貴族は消えかねないでしょうね」


 おっと、お姉様はそんな事を言うなんて。

 まぁ確かにお姉様の言う通りね。

 お金で爵位を買う、準男爵なんて制度も出来たし――もっとも相当なお金持ちじゃないと認められないらしいけと聞くけど――王宮拝謁も近年では中流階級の上層部まで認められてきたし……。


「なるほどぅ~。それにこれは将来的な話なんだけど上流階級向けとは別に、庶民向けの品物も作ろうとおもっているのよね。まぁこれはあくまで将来的な展望なんだけど」


「あら、それは素敵な考えじゃない?……でも、そんな事して大丈夫なの?人手とか……」


「そうなのよね~。だから今はまだ将来的な構想でしかないんだけどね。やっぱり私が要所で手伝ったとしてもアナベラ一人じゃ無理のある作業量ですし」


 と言っても、私も決してアナベラ一人にだけ作業を押し付けようとしているのではありません。

 新たな人材獲得に向けて動いてはいるんだけど……、なかなかこれと言った人物がみつからないのよねぇ。

 はぁ、と軽くため息を吐いたところで、部屋のドアがノックされます。


「あら、誰かしら?」


 そう言いながらお姉様は優雅に立ち上がるとドア駆け寄りました。

 ……なんだかすっかり私の秘書みたくなっていますね。

 本当にいつ聖職者としてのお仕事をしているのでしょうか?

 司祭様から苦情とか来なければ良いけれど……。


「アルシア、ウェズですよ。入れてもよろしいですか?」


「うん、入れていいよ」


 私のその言葉でお姉様はウェズを招き入れます。


「ウェズ、どうしました?」


 私は仕事モードで話しかけます。

 これは最近覚えたテクニックなのですが、どうもやっぱり私が貴族然とした態度で接しないと、不安がる方がいらっしゃるんですよね。

 なのでお姉様と話すときよりも低い声をだして、なけなしの威厳をみせるのです。


「はい、現在の状況について、資料を纏めました。ご確認願います」


 そう言って手渡された資料を、私は「ふむふむ」と言いながら眼を通します。


「やっぱり購入者の多くは貴族、若しくは貴族に準ずる者が中心ですか。それで、以前お願いしていた新たな働き手の確保の方はどうです?」


「……それは少々厳しいです。アナベラと同じ程度の使い手となるとなかなか……」


「……なるほど。であればそちらの案件は一旦保留で。仮にもし見付かった場合でも最終的には私がこの眼で視てから決めますので、ウェズの判断でうかつの事は相手に言わない様に。ただし、錬金術に直接かかわる以外の人材についてはウェズの判断で雇っても良いわ」


「了解いたしました」


「一応将来的な構想も話しておくわね。王都以外の大都市でも流通を考えています。……勿論今スグにではありませんよ?とは言っても頭の片隅にでも入れておいてください。それで王都以外で流通させるとしたら、どの大都市から始めるのが適切か……これは販路の確保や流通、人材の確保も含めた意味でよ?資料を纏めておいてください」


 そして私はちょっと考えてお姉様の方に向き直ると、


「お姉様。手近な者に頼んでアルジーを呼んできてもらうよう頼めますか?」


「分かりました、少しまっていてくださいね。アルシア」


 そう言ってお姉様は部屋の外に出て行き、誰かに頼んだのかスグに戻ってきました。


「あと、お姉様の美味しいお茶をウェズにも淹れてあげてくれません?ウェズ、アルジーが来るまでそこの椅子にどうぞ」


「はいはい。ウェズ少し待っていてくださいね」


 私の頼みにもお姉様は嫌なかお一つせずに、ウェズに向かってニッコリとほほ笑みます。


「はい。……ティーナ様。恐縮です」


 立っている者は肉親でも使え、と言いますものね。

 私にこんな面倒な事を押し付けて自分はノホホンとしてるお姉様にも働いてもらいます。

 そしてお姉様は良い匂いのさせたお茶をウェズの前に差し出すと、


「どうぞ」


 と、天使のような笑みでニッコリとほほ笑んだのでした。

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