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01 伯爵の初めてのお仕事

 シュルーズベリーはその名の通り我が伯爵家が治めている地域の中心地足る都市です。

 たしか私たちの領地は四七七七エーカー程だったかな?

 ラッキーセブンなのでゲンが良いです。

 伯爵家の領地としてはまぁそれほど広くないと言っていいでしょう。

 むしろ狭いといって良いのかもしれませんね。

 私たちの伯爵家は歴史だけはとてもとても古く、その設立は王国設立時までさかのぼります。

 なんでも当時の国王の側近として、王国の設立に尽力したとかなんとか。

 私たちの家が女系相続を曲りなりにも認められているのは、王国で最も古い伯爵家の一つだからです。


 えっ?そんなに古い家系なのに、なぜ伯爵のままなの?

 たまにそうおっしゃる方がいらっしゃいます。

 実はわが家は一度は伯爵のまま叙爵して公爵になった事があるのです。

 ふふふふ、公爵ですよ、公爵。

 でも、その当時の公爵には子供が無く、残念ながらシュルーズベリー公爵は一代で絶えてしまったのでした。

 残念、無念。


 そしてそのシュルーズベリーの中央にそびえるが私たち伯爵家のシュルーズベリー・エステイトと呼ばれるお屋敷です。

 このお屋敷も設立は古く、何でも最初に立てられたのは九百五十年も前の事とか。

 勿論もちろん当時そのままの内装、外見と言うわけではなく歴代伯爵により何度か手が入っていますが、王国でも有数の歴史あるお屋敷なのです。

 そして今、私がいるのがそのお屋敷の中でもひと際立派な部屋である執務室です。

 備え付けられた漆黒の天板が美しいそのテーブルは台石がぴかぴかに磨かれていて、なおかつ黄金や白金で東洋風の透かし彫りまでされているという、まさに超高級品!成金趣味が丸出しですね。


 そんな豪華なテーブルに備え付けられた、これまた豪華な椅子に腰かけた私の前に集められたのは、私たちの領地で働く使用人たちです。

 そして使用人の先頭に立つのは領地管理人ランド・スチュワードたるアルジーでした。

 そんなアルジーは複雑な表情で、私の事をじっとみつめています。


 私はそんな腰かけた椅子からスクっと立ち上がると、


「シュルーズベリー伯爵の家名は私がお父様から引き継ぎました。皆さん宜しく」


 と、とりあえず挨拶をします。

 するとやっぱり、『ざわざわ』とした声が聞こえますね。

 多くの者は私が伯爵家を継いだことに戸惑っているみたいね。

 はい、私も戸惑っています。

 どうしたものか、と思っていると、

 私の隣にいた人物から救いの手が差し伸べられました。


「新しい伯爵は至らないと思いますが、どうか皆さん、これからも力を貸してやってください」


 修道女の衣装を身に纏ったお姉様が一礼しながらそうおっしゃると、とりあえずざわめきが収まりました。


「お姉様……。私のことは今まで通りアルシアと呼んでください……」


「あら?今の内からその呼び名に慣れておいた方が良いと思ったのだけれど」


「だってお姉様からそう呼ばれると、背中のあたりがもぞもぞとするんだもん」


「まぁ!それはどういう意味です?……でも貴女がそう望むのであればそう呼びましょう、アルシア」


「ごほん、そういう事で、私の話は以上です、では皆さん仕事に戻ってよいですよ、あ、アルジーはその場に残って」


 その私の一言で、出て行く使用人たち、そして広い部屋の中には三人が残されました。

 私と、お姉様とアルジーです。


「さてっと、でさぁアルジー」


「……何でしょう、伯爵様」


「伯爵の仕事って何をするの?」


 するとアルジーは以前の見下した様な見線で私をじっとみつめると、


「とりあえず伯爵様にはご領地の台帳を見て貰う事にしましょうか」


「そんな事をするの?面倒臭いですね、そっちでうまくやってくれない?」


 私が作業を想像してかおを顰めると、


「こら!アルシア。そんな事言わないの」


 と、お姉様からダメ出しが入ります。


「でもさー、お父様は長い事臥せってたじゃない。その仕事は誰がやってたわけ?お兄様がたは王都での社交に精を出していらっしゃったでしょ?」


「前伯爵様の許可を得て私がやっておりました」


「ほら~、聞いたお姉様?だったらそのままアルジーに任せればいいと思わない?」


「ダメですよ、アルシア。帳簿の確認は領主となった者が必ず行う最初の仕事とされているのですよ、それを他人に任せるなんて、神様がお許しになっても私が許しません」


 おっと、神に仕えるべき修道女から似つかわしくない言葉が飛び出しましたよ。

 そこで私は疑問に思ったことを聞いてみる事にします。


「……で、なんでお姉様はそんな事を知っているのです?それにお姉様ってもう出家なさったはず。なぜ教会に入らず屋敷にいるのですか?」


「私もアルシアの力になるべくイロイロと勉強したのですよ、それに私がこの屋敷にいる事についても司祭様の許可を取っているので問題ありません。私はここから定期的に教会へと通えば良い事になっております」


 あー、はいはい。

 お姉様がそう決めたってことね?

 シュルーズベリー教会は勿論もちろん、私たちのご先祖が設立をし、伯爵家が大きな影響力を持っています。

 お姉様がそうしたいとおっしゃったならば司祭様が嫌と言われるはずがありません。


「はぁ……。わかった、わかりました!見ればいいんでしょ?見れば」


 そうして私が伯爵に就任してからの初めてのお仕事が始まったのでした。

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