9話 絵本の世界は大好きですけど……
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戦国武将のような浮島の時の格好と違い、普段のリップさんは道着に袴、弓道部の人みたいでとても凛々しい。戦闘中の時のように、私の表情も鋭く読みとった。
「いえ! そんなことは」
「そうかい? また本を持ってきたのだが、茶菓子のほうが良かったかな?」
「そんな滅相もない! ありがとうございます……」
数冊の装丁された高そうな本を受け取り、うつむいた。
「……やはり元気がないようだが、どこか悪いのか? 街まで行ってヒーラーを連れてこようか、少し待てるかい?」
「ち、違うんです! 体はどこも悪くないんです! 寝るところから服まで用意してもらって、ご飯までいただいてるのに勉強までさせてもらえて……お世話になりっぱなしで、申し訳なくて」
「気に病むことはない。皆にも客人だと伝えている」
リップさんの心遣いは本当に有難い。だが、執事さんからメイドさんと屋敷の大人全員からお嬢様のようにかしずかれ、庶民の私は慣れることが出来ず萎縮してしまう。自分の現状を余計意識させられ、居場所がなくて不安になる。
「……種族がわからなくて、役立たずなのはわかってます。でもなにか、私にお屋敷のお手伝いでもさせてもらえませんか? なんでもいいんです!」
懇願するように見上げると、困った顔をさせてしまった。逆に迷惑が増えてしまったかもしれないと気づいた。
「なにか雑用をみつけよう。すまない、心苦しい思いをさせてしまっていたんだな。そうだ、薄墨が会いたがってるようなんだ。あまり人に懐かないんだが、あの日から寂しがって馬番を困らせてる。世話を頼めるか?」
薄墨というのは浮島で彼が乗っていたあのユニコーンだ。少しでもお家の役に立てるよう、励行しようと強く頷いた。
「ありがとう。馬番を呼んでくる。本を読んで待っててくれ、気に入るといいのだが」
「ありがとうございます。あの、あと……」
言いづらくてモジモジしていると、リップさんは小さい子にするみたいに顔を覗き込む。
「……その、絵本以外もあるでしょうか……私、これでも十七歳なんです」
小さな声で絞り出した。リップさんが持ってきてくれる本はページ数の少なく、絵がついた民話や神話とおとぎ話が多い。最初のうちは簡潔に世界の仕組みを教えてくれているものだと思っていたが、どうも子供向けすぎる気がした。リップさんは目を点にして固まってしまった。
「リップさん……?」
「す、すまない!! 芽衣は十七だったのだな! 知らなかったとはいえ、幼く見過ぎていたようだ」
やはり、と思った。リップさんが与えてくれた部屋の調度品や服は少々ヒラヒラが多く、孫を可愛がるそれに似ている。この世界の人々はスラっとした耽美な人が多い中、私はつるぺたの胸元でネックレスだけが大人っぽい輝きを放ち、背伸びしているように見えていたのだろう。
リップさんは何も悪くないのに、顔を赤くあたふたしてしまっている。その様子に、こちらまで申し訳なくて周章狼狽する。
二人でアワアワしていると、廊下の向こうで女中さんが不思議そうにこちらを窺った。




