88話 院長先生の提案
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木の扉をノックすると、しばらくして院長先生が出てきた。驚いた顔をされたがすぐ招き入れてくれ、理想的なおばぁちゃんの微笑みを持つ。
「すみません院長先生、外で協力してくれている方々に料理を振る舞いたいので道具を貸していただきたいんですけど……」
「まあ!何でも使われてください、よかったら子供達も手伝いますわ」
よし、うまく行った。子供達も退屈していたのか、話を聞くと飛んできた。綺麗に整列して説明を聞くと協力してくれることになった。とても素直な子達だ。
まずはウォーターリーパーの身をひたすらすり潰す作業から始まった。まず身を氷水でしっかり洗い、年長者組が包丁で細かく切り刻む。刻んだものをまた氷水で冷まし、年少者がすりこぎで塩と一緒に濾すを延々と繰り返すとあら簡単、魚のすり身の出来上がり。
最初は緊張していた子達も時間が経つに連れ、段々と仲良くなってきて打ち解けてきた。幼稚園児くらいの犬の亜人の双子だろう姉妹が、私の服の裾を引っ張りどこまでもついてきてくれる。ホワホワした白と茶色のまだら模様の尻尾が視界でチラチラして私はたまらなくなって抱きしめてしまった。可愛らしい仕草で私を見上げると首をかしげた。
「はわぁ可愛いですねーっ尻尾がモフモフですねぇ♡」
「ふふくすぐったいーー!おねぇちゃん、楽しそうになにつくってるのー?」
キャッキャ言いながら抱きしめ返してくれて、二つの尻尾と獣耳をワシャワシャ触らさせてもらった。天にも昇る気持ちになる。私は二人の顔の高さにしゃがんで指で輪っかを作り顔の前に持って行った。
「おいしいおいしい竹輪だよーー!」
双子はよくわからなかっただろうが、ケラケラと声をあげて笑ってくれた。院長先生がちょうど竹輪に向いたサイズの竹串や鉄の棒をかき集めてきてくれた。院長先生は竹や籠の細工で生計を立てているようで手頃なものがあったようだ。
出来上がったすり身を濡らした手で棒に巻きつけて行く。年長者はもちろん、小さい子も粘土で遊ぶように上手に作業を進めてくれた。
私は外で火を炊き、子供達が持ってきてくれる竹輪に焼き目をつけて行く。焼きすぎたらパサパサになるので水分が出たくらいでやめる。熱々のうちに一口味見をしたがとても美味しかった。臭みもなく、淡白な身は逆にすり身に向いているのだ。練り物の竹輪は平安時代からすでに存在していて、最初は淡水魚のナマズで作ったちくわが、日本にある練り物の原点だったという。ウォーターリーパーのナマズのような顔を見て閃いたのだ。
「おいしいー!お姉さんこれ、ぷにぷにしてて美味しいです!あの魔物から作ったなんて信じられない」
「「美味しーねー」」
年長者にも高評価をもらって犬の亜人の双子ちゃんも気にいったのか、二人で竹輪を分け合って食べている。暇を持て余した教会の大人たちも楽しげな雰囲気に誘われてゾロゾロとやって来た。私を真似して子供達から竹輪を受け取り焼き目を入れ美味しそうに食べてくれた。いつのまにか子供達も大人に打ち解けていて楽しそうな声が聞こえる。大人も持ち込んできていたチーズを竹輪にいれて子供達を喜ばせてくれた。
「あのウォーターリーパーがこんなに美味しくいただけるとは、これはまだまだ釣りあげないといけませんね」
「ありがとうございます、皆様本当にありがとうございます。お嬢さんも、何もお礼ができない私たちにここまでしてくださって」
院長先生に感無量と言った感じで感謝された。私は自分の欲で突っ走っただけなので感謝されると萎縮してしまう。
「いえいえ!子供達にも喜んでもらえて良かったです」
「こんなに美味しいのですから、冬越し祭りの日にお売りになったらいかがです?こんなに材料もあるのですから」
最近よく聞くワードだ、私にはどんなものかまだよく分からなかった。




