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76話 新たな発見

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 クロウくんの後ろを歩き、野営地に戻るとみんなが眠そうな顔をして片付けをしていた。酔いつぶれた人を叩き起こす人もいる。準備が出来たチームから帰路に立つ。あとは帰還すれば試験は終了だ。疲れた体に鞭をうち、みなダラダラと森を引き返す。


「あーあー、楽しかったのにもう終わりかよ、なぁ芽衣」


 悪びれた様子もなくソウジくんは飄々とした態度でまた追いかけ回してくる。冷ややかな目を向けても堪えることなく効果がなかった。かくなる上は無視に努める。


「ったくソウジまで頭おかしくなったのかしら」


「うっセーなブス、お!いいもん見ーつけた」


 トゲトゲとした声が頭上からする。ミヤコさんが木の上で頬杖をつきベーっと舌を出す。結局最後まで彼女の敵意は消えなかった。沢の近くでソウジくんの足が止まった。何か植物を採取しているようだ。


「あんたそれモンスターラディッシュじゃない、まさか食べる気?おじさんしか食べないわよ」


「バカいうなよお子ちゃまめ、この刺激がいいんじゃねーか。綺麗な水でしか育たねーし育てても二年近くもかかるんだぜ?超貴重なんだよ」


 ソウジくんが手にしてるものに目を向けた。フキのような葉っぱは鮮やかな緑色で、水で洗い流すと地中に埋まっていた部分は全体的にコブがありゴツゴツしている。あれはまさか?


「お、お?なんだ、どうしたんだ芽衣これが欲しいのか?お?」


 無視を続けていたがどうしてもあれが気になって仕方ない。確認したくてソウジくんの前に立ち、確認しようとしたら高く手を上げられ跳んでも届かないようにされてしまう。だが私の興奮は止まらない。無言のまましばらく二人で格闘が続いた。ソウジくんは楽しげな顔でなかなか渡してくれないが、私も欲しくて堪らない。きっとあれは……


「芽衣、また口きいてくれてくれる?そしたら分けてやるよ?」


「うん、もう怒ってない!私にもそれくれる?お願い」


 跳ねるのをやめて掌を揃えた。ワナワナ震えてソウジくんは両手を広げて抱きついて来ようとしたので掠め取って、その場から奪取して身を交わした。欲望のために私はあそこまで機敏に動くことができるようだ。空抱きしたソウジくんを放って置いてクロウくんの横に並んで歩き出した。


 奪い取ったものを確認する。見た目はやはりそうだ。匂いを嗅ぐと予想通りのツンとした刺激臭がする。やはり、これはワサビで間違いない。


「そんなもん好きなのか?」


 クンクン匂いを確認する私のワサビをクロウくんが覗いてきた。私は首を何度も縦に振った。ワサビは日本独自の味と言ってもいいだろう、とっても大好きだ。葉や茎から白根や花まで余すとこなくワサビは食べられる。疲労回復、殺菌作用もあり生魚につけるのは理にかなっているらしい。


 ソウジくんが横に並んで丸かじりする。ソウジくんが私に寄越して食べさせてくれた。齧ると二人で鼻にツンとくる刺激にクゥ〜っと拳を握り涙を貯めて噛み締めた。この辛味は日本固有種にしかない辛味と旨味でセイヨウワサビでは出せない味だ。刺激と感動に涙を貯めた。クロウくんは冷めた目で私たちを見る。


「芽衣ーわかってるじゃねぇか、俺はもっと辛味があってもいいんだけどな」


「すりおろした方がもっと強くなるよ。金物より鮫肌とかで優しく、笑いながらすれって聞いたことがある」


「マジか、今度試してみるな。クロウは苦手なんだよこんなうめーのに」


「ただの毒だろ」


「「おこちゃまー」」


 ソウジくんと声が揃った。キャッキャとワサビ談義をしているとだんだんソウジくんのことが許せてきた。抱きつかれさえしなければ話も楽しいし、それどころかワサビの存在を教えてくれた事が大きい。


また日本食が増えて野望へと近づいた気がした。なんていい発見なのだろう。久しぶりの新たな日本食の素材、大事に大事に使わせてもらおう。クエストでこんなに嬉しい収穫があるとは。大変な苦労もしたけれど、今はこのメンバーに呼ばれて良かったとさえ思う。



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