69話 スキル鑑定の謎
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野営地を離れると人の喧騒が消えたが、離れたところではまだ金属や魔法を放つ音が聞こえる。笑い声も含まれており、クロウくんの取り巻きの他のチームの人達が狩りに出ているようだ。みんなお酒も飲んでいたし、試験はお遊びみたいなものなんだろう。
杖を取り出し光を出しぼんやりとした明かりの下、両手の爪を確認した。禍々しさも感じるほど魔女のような長い真っ黒な爪。爪が生えた以外体に異常はない。震えながら触ると材質は硬くて分厚い。先は鋭く尖っていて人の皮膚を簡単に切り裂くわけだ。
亜人のオセロットくんは簡単に収納して人の爪に戻していた。私もこんな凶器を常に出していたくないのだが引っ込んでくれるのだろうか。
試そうとしていたら、背後の茂みからガサガサと音がした。飛び上がって驚き盾をかまえた。草の音がするだけで正体は現さない。しばらくすると茂みは揺れなくなり、音が止んでしまった。逃げ出しても良かったのだが、もしモンスターなら試験の材料として少しでも採取したい。
ゴブリンじゃありませんように、と祈りながら恐る恐る近づく。ナマケベアのときの反省があるので杖を構えることも忘れない。草をかき分けると、一羽のモンスターが翼を怪我させて横たわっていた。ひどく痛めつけられたのか、弱々しい目で私を見上げるだけで襲う力は残っていないようだった。
「さっきみんなが言ってたノロマ鳥?痛めつけるだけ痛めつけて、放置されたのかな……」
翼の短い鶏のような体型でお尻に柔らかそうな羽毛が生えている。嘴は金属のようだが頭は焼け焦げていて、遊ばれたような痕がある。
同情は良くないが小さな目にはまだ命が宿っている。痛めつけられた姿に心が痛み、とても採取する気にはなれなかった。でも私はヒールは出来ないしどうしようもない。気持ちを振り払ってその場を去ろうと立ち上がった。
〈痛い……頭が熱い………水辺……足りない〉
モンスターから気持ちを読み取ってしまった。流れ込んでくる感情を振り払い逃げ出した。試験中なのだ、許してくれと心の中で叫んだ。
……だがどうしても見捨てられなかった。とぼとぼと来た道を引き返し、モンスターの前にしゃがんだ。
「わかった。水辺に連れて行くだけで許してね……ごめんね」
櫂に指示を送る時のように危害を加える気はないと伝えてみた。私の爪で傷つけないよう優しく抱きかかえた。暴れる力もないのか大人しく従ってくれる。サーチを使い、水辺を調べてもらったら思いのほか遠い。ゆっくり死ぬだけなんて可哀想すぎる。見捨てることなんて出来なかった。
しばらく暗闇の森の中を進んでいるとあることを思い出した。クチナワさんの試験を乗り越えた日、サーチの謎で確認したいことがあったのだ。ちょうどモンスターもいるしこの子のスキルを調べさせてもらおう。
「君、ノロマ鳥だっけ?すこし見させてね」
息はしているが返事はない。どんな声で鳴くのだろう。とりあえず鑑定させてもらうことにした。鑑定……。
【ドードー:EX:状態異常なし】
やっぱりそうだった。アルファベットの謎が解けた。これは絶滅危惧種のランクを記したレッドリストの表記だ。




