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63話 銀のスライムを見つけました

 63



 馬車に四人で乗り、亜人の街に着くと屋台で夕食を取る人でどこも賑わっていた。ランタンが輝き、冬なのにホタルまでいて夜空は七色に輝いている。


 私たちもお腹がペコペコで匂いに釣られて思い思いのご飯を買うことにした。オセロットくんは串焼きの魚の出店に並び、ピグミさんとアマミちゃんは焼きパイの店に向かった。


 ラグゥサ名物のキノコ料理をコンプリートしたく、私も出店を探すことにした。亜人のキノコ料理はすぐ見つかった。恐竜の卵のような形と柄で、色によって中身が違うらしい。中身をお楽しみに内容は聞かず、赤色のタマゴダケを頼んだ。


 噴水の縁に腰掛けて三人を待ちながら、楽しそうな街行く人を観察した。ワニの亜人にも驚いたが、本当に多種多様な亜人がいて体の動き一つ見てても興味深い。


 ボケっと見ていると肩にフワッと銀色の蝶がとまった。亜人の街はカラフルに光る蝶々が多い中、メタルちっくな蝶は初めて見た。銀細工のようだと見守っていると蝶は突然グニャグニャ歪み、とんがり頭の銀のスライムに変わった。驚いて固まった私の肩からスライムはピョンピョンと地面に降り、移動し始めた。


 何だあの生物は……もしかしてレアなあれか?気になって追いかけてしまっていた。見失わないよう目線を低くしてタマゴダケが潰れないよう胸に抱え、人混みをかわしながら小さな生き物を追跡した。スライムは踏み降ろされる人の足や獣の足を避け、小道に入って行った。


 小道にある小さな露店に人がいて、スライムはその人の手のひらに収まった。フードのマントを深くかぶり革の手袋をつけ、顔は暗がりでよく見えない。


「いらっしゃいませ」


「あ、すみませんお客じゃないんです。つい追いかけてしまって」


「良かったら見て行ってください、便利なアイテムバックが入ったんです」


 声はくぐもっていて男性か女性かもわからない。手のひらを閉じると銀のスライムは消え、瞬きした隙にコンパクトなリュックがフードの人の手にあった。


 ぽかんと見つめる私に持ってみろと差し出す。押しに弱い私は一応手にとってみる。革は鱗のようだが細やかで滑らかな素材、留め具を外し中を覗くと真っ暗な闇になっている。本当にアイテムバックのようだ。


 確かに欲しいとは思っていたが、この怪しい雰囲気の人から買うのは少々気が引ける。素材の鑑定はできても曰く付きとかだったら怖いし、大事なお金は騙し取られたくない。どうやって断ろうか考えているとフードの人が口を開いた。


「ある人からのプレゼントです、差し上げます」


「え?」


 顔を上げたら目の前からフードの人は消えている。周囲を見回すと、細長い銀の蛇がクネクネと逃げるように夜空に登って行くところだった。


 ポカンと口を開き、銀の蛇が見えなくなるまで見上げていたら屋台におばあさんがやってきて商品を並べ出し、立ちつくす私を訝しげにシッシッと手で追い払った。仕方なくリュックも持ってトボトボと元いた場所に戻った。リュックをどうしようかと思い悩んでいると、串を両手に持ったオセロットくんが買い物を済ませてきた。


「ごめん待たせちゃって。あれ、それどうしたの?」


「銀の蛇が差し上げますって、飛んで行っちゃった」


 要領を得ない返答にオセロットくんは頭をかしげながらリュックを取り、いろんな方向から鑑定する。アイテムボックスに串をポイと入れ、取り出し一口食べる。


「特に変なところもないアイテムボックス、革の強度も強そう……ウロボロスかな?なんにしろ蛇革のようだね、もしかしたらクチナワさんじゃない?」


「ええ、なんで?」


「この革がウロボロスだったら自分の尾を咥えた蛇のモンスター。口に縄、ほらねクチナワさんだよ」


 声をあげて笑い出すオセロットくん。ポイとリュックを私に放り投げ、興味をなくして魚を頬張る。


 使いの人?も蛇だったし……確かにそうかもしれない。遠回しで驚いたけど、それにしてもあの人がダジャレを使うなんて、想像して吹き出してしまった。


 なら……ありがたく使わせてもらおう。背負うと体にフィットし存在を忘れるほど、全く邪魔にならなかった。今度クチナワさんにお礼を言わなければ。


 サラマンダーの暖房器具に近いテーブル席を確保し、遅れてきた親子は大量のご飯を買ってきた。ピグミさんはさぁ食べろと振舞ってくれた。私も買ってきたタマゴダケを開けて見ると、下半分はくり抜かれた熱々のきのこグラタンになっていて、上半分は断面が網焼きされ食べると香りのいい鶏肉のような味がした。


 オセロットくんは魚や爬虫類のお肉が好きなようで、優雅に振る舞い上品に口に運んでいた。アマミちゃんとピグミさんはガツガツと大量の料理を食べていく。ピグミさんのあの小さな体にみるみる吸い込まれて行くのが不思議でたまらない。


「ピグミさんは冒険者なんですよね?どんな仕事ですか?」


「うん、ソロもパーティーもどっちもあるがパーティーでは主に斥候やモンスターの探知が得意だ。仕事は素材採取と魔石や魔水の鉱脈探し。魔石が一番手っ取り早く換金してくれる」


 オセロットくんも会話に入ってきた。アマミちゃんはまだ食べ続けている。


「あと冒険者はダンジョンや新種の発見、生態調査のクエストもあるよ。モンスターの偏った種の大量発生で個体数の調整が最近は多いかな」


「そうなんだ、やっぱ体力勝負だね」


「うん、アマミが生まれてからはおんぶ紐でクエストに行ってたからその時に結構力が着いた。あの時はこの子のパパも死んで大変だったけど……片時も離れなかった」


「そうだったんですね……」


「そしたらこんな甘ちゃんになってしまって、未亡人大変」


 口いっぱいに頬張っているアマミちゃんは話を聞いてなかったみたいで、食事の手を止めなかった。ピグミさんはこんな小さい体で自分だけじゃなく、幼い我が子を抱えて危険なクエストに行っていたという。やはり母親とは偉大だ。



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