52話 お花畑の先の教会
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店の二階ではサバイバルに必要最低限な小物を自分で買い揃えた。品数も多く便利そうなものばかりで目移りするがアイテムバックは高価すぎて諦め、あまり荷物は増やせなかった。オセロットくんがまた買ってくれようとしたので慌てて止めて、強引に店の外まで押し出した。
「さて買い物は済んだし、神頼みにでも行きますか。僕らの町の教会に案内するよ。きっとびっくりする」
日も暮れ出している坂道をしばらく進むと鳥居のようなアーチが沢山立ち並ぶ、苔に覆われた長い長い階段が待ち構えていた。私は軽々登るオセロットくんを恨めしく思いながら、息も絶え絶えに追いかけた。先に進んでは階段に座り、それでも急かさず待ってくれる。最後は手を引っ張って貰いながら登りつめた。持久力の無さもかなり課題だ。
その先はお花畑の広がる開けた場所で、見晴らしのいい崖の上。その再奥には空まで届きそうな大きさの緑色の太い蔓が横を向いたドラゴンの形になり、今にも崖から飛び立ちそうに佇んでいる。すごい躍動感だ。ジャックと豆の木のようなツルで隆起した根元の隙間にみんな入って行っている。
「すごいでしょ、自然にこの形になったんだって」
「ええ!?」
「女神様はこれに乗ってきたんじゃないかって伝説もあるくらいなんだ。素材を恵んでくれるモンスターや亜人の始祖って言われるドラゴンを祀ってもいるんだよ。僕らも中に入ろう」
根っこが一本の木より太く、余裕のある隙間をくぐると中は広い空間になっていた。見上げると隙間にはステンドグラスが埋め込まれ、色とりどりの光が差し込む。エルフの教会のように奥には祭壇があり、ツルが横を向いた女神の形を作っている。葉っぱの生えたツタ植物が髪になり、花に覆われたドレスを着ていて顔を俯け両手をお腹に当てている。
「とても綺麗な女神像……お腹を大事そうに抱えているね」
「僕たちは彼女から生まれたと言われている。皆が平等に兄弟だと、いつも思い起こされるよ『人間だけでなく、動物や植物や鉱物、火、水といった存在するすべてが私たちの親戚であり兄弟なのです』」
「うん、すごくよくわかる『私たちは母なる大地に創られ、母なる大地に還る』って……」
母が同じようなことを言っていたのをエルフの教会でも思い出した。教会は私に大事なことを思い出させてくれる場所なのかもしれない。
お腹を抱えた妊婦さんも多く、みんな宝物を抱えるように、大事そうにお腹に手を当て祈っている。屈強な戦士のような人は顔を天に上げ、拳を包むエルフの教会で見たポーズでドラゴンの向く方へ祈っていた。
オセロットくんがポケットから猫の手の形をしたロケットを見せてくれ、同じようにお祈りをする。私も胸元のネックレスを手で包み、お祈りした。
〈……この世界で新しい第一歩を踏み出します。どうか応援してください〉
あつかましかったかなと懸念したが、神頼みだってしたいくらいの気持ちなのだ。みんなに協力してもらって応援されて、もし受からなかったら顔向けできない。私は時間をかけ、必死に願掛けした。




