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5話 リップさん

 

 5



「*******!」


 母の私を叱る声がする……何を言われてるのかわからないが、とても久しぶりに聞いた気がする。


 夢見心地から一転、激しく揺さぶられながら私は強制的に覚醒させられた。 驚いて目を開けると、甲冑を着た三人の男達に囲まれている。


 一人が私を揺さぶり大声を出していて、一人が少し引いて周りを警戒し、もう一人はヘルメットも被っていないのに頭から鬼のような角を付け、剣を抜いている。揺さぶっていた男は目を覚ました私に声をかけ続けていた。


「*******?」


「あっ、どどうしよう何語だろう? もう一度しゃべってください!」


 私の言葉に三人は顔を見合わせた。どう見ても日本人離れした髪の色と顔立ち。そして中世ヨーロッパを思わせる騎士のような銀に輝く甲冑と剣。不安げに見上げる私に向かって、残りの二人も見下ろしながら剣を抜いた。


「え!? 何で剣を抜くんですか? ち、近寄らないで!」


 悲鳴に近い声をあげながら後ずさりして、盾の後ろで体を縮めたが、強い衝撃が痺れるように全身に伝わった。二発目の攻撃に衝撃で歯が震え、ネックレスがチカッと光り火花が散った。


 〈ーーなんで、言葉が通じないだけで殺されちゃうの?!〉


 涙を流しながら震える私に一人がまた剣を振り上げた瞬間、遠くで呼び止めるような声が聞こえ、男たちの攻撃が止った。恐怖で顔を上げることができず耳を傾けると、いくつかの馬の蹄のような音と、怒っているような声が聞こえる。


 言葉がわからないで殺されるのは、どこかの国と戦争中とかだろうか?疑問を浮かべるとハッと閃いた。鑑定スキルで言葉を鑑定出来るだろうか?殺されるなら出来ることはしよう。向こうは馬まで持っている。逃げるのは無理だ。


  〈言葉を鑑定……っ〉


「ーーだからといって、なぜ勝手な行動をするのだ! 言葉が通じないからと魔物と判断するなど軽率すぎる! 世界樹の島で殺生などあってはならない」


「すみません隊長。せっかくのランプフルーツが食い尽くされてイラついちまって、以後気をつけます」


 厳しい声と、ふてくされた声が聞こえた。良かった、成功だ。だが聞き取れたが伝わるかが問題だ。


 土を踏む音がして、ガチャガチャと金属の音と足音が目の前で止まった。


「恐がらせてしまってすまない。危害は加えさせないから、顔を上げてくれないか?」


 頭上からでなく低い位置で声が届いた。先ほどとは違い、落ち着きのある穏やかな声だった。それでも恐る恐る涙でグシャグシャの顔を出すと、同じ目線にキリッとした顔立ちの、日本人風な綺麗な顔をした青年が片膝をついていた。長い黒髪を一本に結わえ、甲冑も戦国時代の時のような和風だった。


「……言葉はわかるか?」


 問いかけに私は頭を縦に振った。


「さっきは、わけのわからない言葉を発しましたぜ」


「黙れ……なぜこんなところに一人でいる? 何処かの部隊か?」


 どこかもわからないし、部隊もわからないので目を離さず首を傾けるだけにした。


「一般人か。名は言えるか?」


「……私は、め芽衣です」


 伝わるかドキドキしたが、相手はゆっくり頷いてくれた。


「メイか。ここは世界樹の島だが、一般人は立ち入ることができないはずなんだ。不思議な発音だし、どこからどうやって来た?」


 何も答えられず目を見つめたまま、首を振るしかできなかった。


「隊長、この子は亜人でしょう。鳥人族でこんな髪の色の子を見たことがあります」


「わからんな。この背丈なら隠すことが出来ない翼があるが、彼女には見受けられない。魔物なら意思疎通の前に本能的に襲ってくるはずだ……ともあれ彼女は保護する」


 青年は立ち上がると、手を差し出してくれた。


「私の名はリップ。部下が失礼した。都へ戻るまで君を警護しよう」


 都、人がいる所へ案内してくれる……。殺される緊張感から解放され安堵感に脱力した、だらしない笑みを向け彼の手を取った。リップと名乗った青年も安心した私を見て微笑んでくれた。


 手を借り立ち上がると、右手の上空から不思議な感覚を覚えた。


「なにかーーー……来る?」


「なにかとは?」


 彼も同じ方向を見上げた。葉の隙間から空を見上げていると、太陽に小さな影ができた。目を凝らしていると影はどんどん大きくなり、こちらに近づいてきている。コウモリのような羽、長い尻尾。ハッと気づいたリップさんが声をあげていた。


「ドラゴン!」


 そんなまさか、と思ったがどんどん大きくなるシルエットは空想上のそのままの姿をしている。唖然としているとリップさんは私の腕を力強く掴み、走り出した。


「総員退避ーーーーー!」



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