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42話 持っていた能力に気がつく

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 記憶の薄れる五日目に、傷だらけで派手に転んだ私を心配そうに見守るセンさんの姿が目に入った。心配させたくなくて涙を堪え、気合で立ち上がった。


 私はここで生きたい、この世界の一員になりたい。その思いが日に日に強くなっている。


 その日、ある変化が現れた。月明かりのない闇の中、起きてるのか寝ているのか、立っているのか横たわっているのかさえわからない。目を凝らすのをやめ、瞼を閉じると感覚が研ぎ澄まされた。センサーのようにリップさんの立ち位置がわかる。小さな話し声のようなざわめきの警報が、太刀が来るのを伝えてくれる。


 何も考えず声の聞こえた方へ構えると、竹刀が衝撃を吸収し初めて攻撃を防ぐことができた。


「芽衣……できるじゃないか!」


 とっさの行動をした自分に自らも驚いている。なんで太刀がくるのが分かったのだろう……あの感覚にまた触れたい。


「何でしょうか、よくわからないんですけど……殺気みたいなものがわかった気がします! もう一度、次は本気でお願いします」


「よし、わかった。では一気に三振りするぞ」


 感覚を忘れないように目を閉じ集中する。リップさんの立ち位置が今度はハッキリとわかり、小さなざわめきが起こる。


 一発目、強い衝撃だが防ぐことができた。だが二発目、リップさんのあまりの早さに腕で防いでしまった。叩かれた衝撃に脳天に光が走るような痛さを味わう。とどまる事なく三発目、今までにない殺気に体が硬直してしまった。追いつかずに背中からの強い衝撃を受け、私は吹っ飛んでしまった。


「すまない! 芽衣大丈夫か!?」


「ゲホゲホっだい…じょう……ッエホ……!」


 肺にまで響く強い衝撃にうまく息を吸うことが出来ず、全身が痛すぎてもうどこが痛いのか麻痺してしまった。地面に倒れ伏しているので下草が顔に触れている。とても小さな声が聞こえてくる。大丈夫?と心配する声が……。


 そうか。これは浮島の時にも感じた。これは植物の声だ。センサーのように感じた人の立ち位置や殺気の正体は、この植物達が教えてくれていたのだ。今まで意識しなかっただけでずっと気づいてあげれないほど、それは小さな声だった。


『大いなる気は我々の兄弟姉妹。耳を傾ければ、語りかける声を聞くことができる』


 リップさんの言うことは本当だっだんだ。私が植物の声が聞こえるのも、そういうことなのかもしれない。この子達は兄弟姉妹。母が言ってたことは間違いじゃない。みんな同じように声を聞いている、君たちの声は私の幻聴なんかじゃなかった。私は感動で体が震えてきた。


「やり過ぎてしまった、屋敷に戻って手当しよう」


 一人感動していた私を担ぎ、リップさんが屋敷に駆け込んだ。ボロボロの私を見て、リップさんがセンさんに怒鳴られてしまった。言い出したのは私なので弁明したがセンさんの怒りは収まらなかった。背中と腕に薬を塗ってもらい、包帯でグルグルに巻かれた。


「背中は服で守られたようですが、腕のほうがひどいです。裂傷と、もしかしたら折れているかもしれません。ヒーラーが来るまで痛みは我慢してくださいね」


 ケイロンさんも部屋にきた。大きな手で丁寧に腕を固定してくれ、知り合いのヒーラーを朝一番に呼びに行ってくれるようだ。


「若様、明日には傷もなくなります。病人の横でそんなに暗い顔をされないでください」


 リップさんは悲しそうな顔で私を覗き込む。


「芽衣、本当にすまない。本気で打ち込んだからとても痛むだろう」


「いえ大丈夫です! それに私が受け止めれなかったのが悪いんですから。それとこれで訓練は中止しないでくださいね。私、わかったんです! 治ったらまたバシバシしごいてください!」


「芽衣様!」


 センさんが悲鳴をあげたが、私の気持ちは変わらなかった。心配されないように強くならなければ、ひ弱な自分が悪いのだから。もっともっと自分を頼れるようになりたい。


 皆が退室して眠りについた。夜中、背中がミシミシと痛み出した。うつ伏せに寝返り、熱にうなされ朦朧と眠りについたが違和感が消えなかった。朝になるとその違和感はなく、その代わりベッドの周りが散らかっていた。


「これは……浮島にもあった、盾?」


 拾い上げると確かに浮島で見つけた、あの盾にしたものだ。だが、浮島で拾ったものはちゃんとクローゼットで保管しているはず。不思議に思っていると部屋がノックされ急いで服を羽織った。センさんだった。センさんの腰くらいの高さに人影が見える。


「おや、あんたはエルフの街にいた娘っ子じゃないか」


 櫂に毒のスライムをくれた、あのドワーフの女性だった。



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