32話 ブルードラゴン
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「……ブルードラゴンの子供だな、衰弱してる。じき死ぬぞ」
クチナワさんがやれやれと言うように追いかけてきてくれてた。男性は息も絶え絶え引き上げられると、ずぶ濡れで私たちに向かってきた。
「なにしやがんだこのガキャぁ!」
「ごごごごごめんなさい!咄嗟だったんです!」
「よせ、私の前で暴力は許さん」
「し、司祭様!?………で、ですがアイツはうちの商品を奪ったんです、商売の邪魔をされては黙っておれません!」
オセロットくんは男性に指摘されても魔物の前からどかなかった。
「だから今は手持ちがないんだ!必ず払うからそれまで看病してくれててもいいだろっ」
「それが面倒くせーんだよ、魔物なんていくらでも換えがきくんだから他を買えよ!そんな死に損ないの為に積荷は減らせねぇ、処分しねーと捨てられない決まりなんだ。だから素材だけでも採取するんだっつうのに邪魔しやがって」
「なら私が払います!先ほどのご迷惑料も含めて……おいくらですか?」
ポケットから金貨を取り出す。男性は舌舐めずりをする。
「へへ、ブルードラゴンだ金貨五十枚はもらおうか」
「高い。素材にすると言っていたのだから金貨十枚で充分だ。子供のドラゴンからは大したものは取れないだろう」
クチナワさんを睨みつけてチッと舌打ちした男性は、金貨をぶんどると肩を怒らし私たちに背を向けた。悪態をつきながら去る男性を見送ると、オセロットくんは申し訳なさそうな顔で私たちを見上げた。
「ごめんな、芽衣。司祭様もありがとうございました……僕、変わってるって言われるんだけどモンスターが虐げられるのが見過ごせないんだ。人に馴らす為に極限まで弱らせられて、それでも反抗してたから殺される所に出くわしちゃって」
「そうなんだ……クチナワさん、このドラゴン助かりませんか?」
「無理だろう、どうやって弱らせたのかわからん」
ドラゴンに近づき膝をつく。感情を読めないだろうか、この子に意識があればいいが……集中してドラゴンの心を探る。
〈……寒い………空腹………消え入りそうだけど確かに感じる……生きたい〉
ドラゴンの気持ちが入り込んでくる。この子はまだ生きていたいんだ、今にも消えちゃいそうだけど……私は杖を握り、イメージを強く持ち魔法を発動する。
「芽衣?……なにしてるの?」
「あ、寒そうだったから暖めれないかなと思って」
火では表面が焦げちゃいそうだったので赤外線ヒーターのような光の放射をイメージした。杖先が赤くなっても浮島の時のように枝が焼け焦げたりはせず、イメージした通りの魔法ができた。
扱いやすい杖があって助かった。赤い光がドラゴンを照らす。見る限り怪我したところは見受けられない。
「変わった魔法じゃないか。火魔法でないのにほんのり温かい。光魔法にこんな使い方があったとは……お、動いたぞ」
見物人が出来ていて、バンダナを巻いた若い女ドワーフが声をかけてきた。ブルードラゴンは翼をピクピクと動かし顔をあげた。
「少し元気になったかな?この子何を食べるんですかね?」
ドワーフの女性がフフンと得意げに腰元のバックを探る。紙の包みから出てきたのは浮島で見た、赤色したあの毒性のスライム。
「ブルードラゴンはこれが好物さ」
ドワーフの女性はニヤリと笑った。




