31話 初めての攻撃魔法
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礼拝堂を後にするともう日が傾きかけていた。ゴンドラに乗せてもらい、一気に水路を下りエビネさんの店に向かった。
「芽衣ちゃん、出来てるわよ〜」
カウンターの中からエビネさんが声をかけてくれた。台座に置かれているのは魔法使いが持つような杖だった。木のツルが絡み合い、持ち手の部分には加工されたクリスタルの魔石が設置されている。
目を奪われてエビネさんが何かを取りに裏に行ったのも気づかず、ドキドキして手にとった。
共鳴するようにリンと音が鳴り、強い光が店内を照らした。目も開けれず指先から血が流れるような感覚を味わった。驚いて手を開いて見たが、痛みも傷跡もない。不思議な現象はすぐ消えて、杖は何事もなかったように手に収まっていた。
「あったあった、これこれぇ♡ どう? しっくりきてる?」
扉を開け、裏から戻ってきたエビネさんは光を見たのか音を聞いたのかはわからなかったが、とくに驚いていないよう。クチナワさんも相変わらず表情は読めないが黙ったままなので、別段おかしな事象ではないようだ。
「いい〜魔法使いになれるわぁ。世界樹は魔力の伝導がいい枝だからコントロールしやすくなるはずよ」
「エビネさん、すごく素敵な杖をありがとうございます!」
「ンフ。これはサービスの杖差し、アルラウネから採取した繊維よ。ベルトのように腰に巻いて杖をさせるわ。何か困ったとこがあったらいつでもいらっしゃい、可愛い子にはタダでメンテナンスしてあげる♡」
「杖差しまで……エビネさんもクチナワさんもありがとうございます!」
「………」
二人に深々頭を下げ、早速腰に巻いて杖を差した。何だか誇らしい気持ちだ。クチナワさんは用事が終わるとさっさと出口に向かった。
身を守る武器を手に入れたことで、私は胸を張って店を出た。 子供の頃夢に見た魔法使い、それが現実に杖という形になった。
この世界で見た限り、攻撃に特化した剣や弓の魔法の武器の他に、生活用品に使われているものは限られた性能だが、手を触れるだけで発動する高価な調度品のみ。浮島の時みたいにイメージで発動するのだろうか?リップさんに魔法を教われたらいいのだが……。
ゴンドラに乗り出発しようとしたら、少し離れた所から人の喚き声が聞こえた。聞き覚えのある声に引っかかり、そちらに顔を向けると見覚えのある山吹色の髪が目に入った。さっき、突然消えたオセロットくんだ。
大きな船乗り風の男性に食ってかかってる。私は慌てて船を飛び降りそちらに走った。その間も彼は必死に何か抗議してる。
「ーーだからって痛めつけなくてもいいじゃないか! 弱ってるだけだ、世話をしてやれよ!」
「うるせぇガキだな、使えねぇ商品をどうしようがこっちの勝手だ。だいたい魔物なんて使えなければ処分対象だろうが! オラどけ!」
男性に怒鳴られてもオセロットくんは覆うように何かを庇っている。痺れを切らしたのか男性は足を上げ、彼を踏みつけようとする。とっさに杖を取り出し振り下ろした。
「うわああ!!?」
背後から水が男性に飛びかかり水路へと引き込んだ。雄叫びと水しぶきをあげて男性は水の中に落ちてしまった。落ちた男性を仲間が慌てて救出に向かう様子をポカンと見つめ、駆け寄った私に気づくと驚いた顔をする。
「芽衣!?」
「大丈夫!? どこも怪我してない?」
「うん……どうしてここに?」
「オセロットくんの声が聞こえて……アワワ、やりすぎちゃったよ。あの人大丈夫かな?」
オセロットくんは体を起こしクスリと笑った。彼が庇っていたものの全貌が姿を現した。体は蛇のように尾が細長く、胴体から青と白に縁取られた三対の羽毛扇のような形の翼が生えている。まるで龍のようなモンスターだった。




