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29話 尻尾を触るのはセクハラです

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 入り組んだ道を難解に進むと開けた道に出た。どこも色とりどりのガラス製品が所狭しとショーウィンドウや屋台に並べられ眩しく輝いている。


「ここは食器やアクセサリー、時計やシャンデリア、エルフ製のガラス細工が売られてる通り。ドワーフのとはまた違って芸術思考高めで繊細なんだ」


 ショーウィンドウから見える細やかなバラの形のゴブレットは発色を変え、人魚のオーナメントは岩から飛び込みガラスの水面を泳ぎだす。心奪われる品ばかりでついつい足が止まってしまう。


 オセロットくんは特に工芸品には興味なさそうで、いきなり走り出し暗い路地を覗き込んだり、楽しく談笑したかと思いきや、揺れる看板をボーッと見たりと不思議な行動ばかりだ。


 前方を行くオセロットくんの優雅な尻尾を見つめると、ふと家にいた飼い猫のタマを思い出した。小さい頃はタマの自在な尻尾に憧れた。タマはほんとに不思議で、この前まではお気に入りだったオモチャなのに急に遊んでくれなくなったり、撫でても怒らない時もあれば、前振りもなく引っ掻いてきたり。何を考えてなのだろうか聞いてみたかった。 言葉なしでは難解すぎる生き物、だがあのシルエットで甘えられると人間はどうしても弱い。


 道ゆく亜人の人たちの尻尾を眺める。耳や尻尾や尾羽は触られたら、どう感じるのか聞けるチャンスがこんなに溢れていたのか。今私は様々な動物の特性を持つ人と話せる世界に来ている。それぞれの特徴と暮らしぶり。私は髪の色以外無個性だから、羨ましくなってしまう。


 オセロットくんが視線から逃れるかのように体に巻きつける。


「なんだかすごく殺気を感じるんだけど、どうしたの?」


 あまりにジットリと羨ましげに尻尾を見ていたので、オセロットくんに気づかれてしまった。


「ごめん! その……尻尾があまりにも素敵だったから」


「はは、ありがとう。猫の尻尾は不思議とよくセクハラにも遭うけどね」


「そうなんだ。さ、触られたらどんな感じ?」


「芽衣、セクハラおやじみたい……」


 確かに。興味津津でゲスな聞き方をしてしまった。変なやつと警戒されたかもしれない。


「まぁ体の一部だし、単純に下半身を弄られる感じかな」


 なんだか卑猥な表現に顔が熱くなってしまう。下半身ってあれのことかな。


「僕ら猫科の尻尾は脊髄まで繋がっててバランスをとっているんだよね。急に掴まれたり引っ張られると怪我するから、尻尾で遊ぶなって小さい頃言われたなぁ……後の使い道は意思表示と、こうやって暖を取ること」


 オセロットくんが横に並んで、私に長い尻尾を巻きつけてきた。首に巻かれると肌触りのいい毛皮に包まれたようで暖かい。モフモフの猫の尻尾に巻きつかれるなんて幸せすぎる。私は恍惚とした表情をしていることだろう。


「犬族は仲間との連携、人魚の尾ビレは移動に、猿の亜人達は物を掴んだりして戦い方使い方も様々。カンガルーの一族は尾で立って強烈な蹴りも出せるよ。芽衣も亜人の一族なんでしょ? 尻尾がない亜人によく聞かれる質問だよ」


「ごめんね、小さい頃から憧れてて」


「僕たちの始祖はドラゴンじゃないかって言われてるの知ってる? ヒューマンにもドワーフやエルフどんな種族にも、母親のお腹にいる二ヶ月頃まではドラゴンのような先の尖った尻尾があるんだよ。実際にはドラゴンの亜人はいないんだけど、でも夢があるよね」


 オセロットくんは頭がいいのだろう、亜人について初めて知ることばかりだった。仲良くなったら、もっといろんな話をしてみたい。

 尻尾にムラムラしながら先へ進むと、ひとつの店の看板が目に入り足が止まった。


「芽衣は目でも悪いの?」


 メガネの形の釣り看板、他の煌びやかなお店よりシンプルな木目調でスタイリッシュな印象の小さなお店だった。


「ううん。メガネが欲しいんじゃないんだけれど……作りたいものがあって」


「へぇ、よし入ってみよう」


 オセロットくんが扉を開けてくれた。風鈴のような長く響く音が店内に響く。


「いらっしゃい」


 白髪の老人エルフが奥のカウンターで片眼鏡をして一人何かの作業をしている。老人は顔をあげ、ゆっくりと微笑む優しそうなおじいさんだった。



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