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26話 魔女の店

 

 26



 目を覚ますと、もう日が差していた。体を伸ばして大きくあくびをすると横目に人の気配。あくびのまま口を開け固まってしまった。


「クチナワさん!?なにしてるんですか!」


 毎度毎度この人には驚かせられる登場をされっぱなしだ。朝一の女性の部屋に入るなんて失礼にもほどがある。日の光を浴びて眩しそうに傍の椅子に座っている。手には私の浮島の枝を持ち、本当に何をしているんだ。


「******?」


 ……しまった、昨日ネックレスを外したまま寝てしまったんだった。慌ててシーツを頭からかぶり首にネックレスをつけた。


「なにしてるんだ芽衣。今なんて言ったんだ?」


「ね、寝ぼけてしまって!なんでもないです、クチナワさんこそ人の部屋でなにしてるんですかっ」


「迎えにきた、準備しろ」


「迎え?」


「ラグゥサまで行く、下で待ってる」


 パタンと扉の音がした。頭のシーツを取ると、クチナワさんはすでに退室していてホッと胸をなでおろす。


 やっぱりこのネックレスがないと言葉がわからない。鑑定スキルが発動しなかった。やはり私は地球から転生した、ということじゃないだろうか。記憶を呼び出してるんじゃなくこれは魔道具の効果なんだ。ちゃんと母の娘なんだと思うと気持ちが晴れ晴れした。


 それにしても人が寝てる部屋に了承もなく勝手に入るなんて、クチナワさんめ……。だが、ラグゥサに行くと言っていたが本当だろうか。ラグゥサはこの世界の中心機関でもある首都だと聞いた。一体何しに行くんだろう?


 少しワクワクする気持ちを抑えながら準備を整え、階下に降りた。ムスッとした顔のクチナワさんが腕を組み、待ち構えていた。


「遅い」


「す、すみません。でも私勝手に遠出なんて、リップさんも街に行く時は屋敷の人と一緒にと言われたんです」


「問題ない、主人に許可はとった。行くぞ」


 クルクルと何かを手で回すクチナワさん、少しご機嫌に見える。玄関を出て馬車に乗り込んだ。少し躊躇したが好奇心に逆らえず、見送るセバスさんとセンさんに手を振り馬車に乗り込んだ。


 石畳の道を進み、街を出ると舗装された土の車道に出た。農村地帯を抜け、森の道を超えると石畳の引かれた広大な草原に出た。


 天気も良く、馬車から見えるのどかな風景に癒されていると角の生えたウサギが跳ねた。驚いてクチナワさんに知らせようとすると、彼が手に持っているものに気がついた。浮島から持ってきた私のただの棒切れだ。


「それ!私のじゃないですか!」


 数少ない私の私物、昨日部屋で出したままにしていたのを勝手に持ち出したのか。


「世界樹の枝だな、ちょうどいいと思って持ってきた。エルフの店で魔道具にしてやろう」


「え、魔道具になるんですか?」


「いい素材だ、魔石と相性がいいから強い武器になる」


「ダメですよ!私お金なんてもってませんし」


「うるさい、ラグゥサに着くぞ」


 小窓から覗くとなだらかな草原に一つの山がいきなり出現する。山がまるごと建造物に埋め尽くされ、まるでフランスのモンサンミッシェルを何倍にもしたみたいだ。右側には牧場のようなものがあるのか、放牧された羊が見える。道は三方向に別れ、馬車は左側に逸れた。


「エルフの街から入る。水の多い、美しい街だ」


 大きな門をくぐると、水路沿いに三角屋根の木枠で作られた建物が建ち並ぶ街に入った。建物はパステル色した外壁で、花や緑を飾ったバルコニーや出窓が多い。道沿いも、華やかな水のアーチや水のパラソル、花ビラの吹き出る噴水に、ガラスで出来た橋が水路の上にかかり本当に全部が美しくウットリしてしまう。水の音が心地いい。


 エルフが多く行き交う石畳の道で降ろしてもらい、水路をゴンドラで移動する。綺麗な水面に花びらが浮かび、幻想的な街並みが続く。


 街の中心についたのか、水路が円形に広がった。広場の中心から高く水がねじ上がり、傘のような丸みを作る。頂上にはガラスの女神像が輝き、その下をゴンドラに乗った人が多く行き交う。


「降りるぞ」


 手を引いてもらい、歩道に上がるとスタスタとクチナワさんは歩き出す。人も多く、ついて行くのに必死だ。


 道に面した店にクチナワさんが入って行った。見上げると突き出し看板があり、三角帽子の形をしている。扉を開けるとチリンチリンと鈴の音が響いた。


 店内は雑多としており、本がうず高く積まれて水晶や箒や鳥かごから、わけのわからないものが乱雑に陳列されていた。クチナワさんはカウンターの奥に座る大きな三角帽子の金髪女性と話している。


「あらぁ、この子がそうなのねぇ」


 間延びした喋り方の妖艶なエルフだ。慌ててペコっと頭を下げる私。何だか胸元のセクシーな方で緊張してしまう。


「まぁ可愛い子ねぇ、私はエビネ。緊張しなくてもいいわよぉ、クチナワとはアカデミーからの付き合いなの」


「初めまして、芽衣です」


「任せてねぇ、とびきり素敵なの作ってあげちゃう。世界樹の木で作るのは久しぶりだから興奮するわぁ♡」


 カウンターには私の枝と小さな透明のクリスタルに、布の小袋。クチナワさんを見上げると無表情のまま動じない。


「頼んだぞ」


「ええ、夕方までにはできると思うわ」


 そう聞くとクチナワさんはさっさと店の出口に向かった。私もエビネさんに会釈すると慌てて後を追いかけた。



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