24話 職人達
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金物屋さんに入った。中に居たのはヒゲもじゃのドワーフのおじさんで、店内は磨き上げられた金属製の鍋や器具が所狭しと並んでいる。ドワーフは包丁を無愛想に受け取ると、のしのしと歩き無言で奥に行った。
センさんと店の中の商品を吟味していると、奥から金属の楽器のような不思議な音が響いてきた。ドアの隙間から中を覗くと、室内は洞窟のようになっており目の覚めるような黄金に輝いていた。ドワーフが研ぎをするたび金属の音が跳ね返り、光の粒が飛び散る。包丁が輝きを増す度に黄金は力を持ったように発光し、室内はより一層眩しくなっていく。
職人技に感嘆して目を輝かせていると、無言だったドワーフのおじさんはムッフッフと笑い、包丁を手元で回転させパフォーマンスをしてくれた。
次に行ったお肉屋さんの主人は豪快な人だった。破裂しそうに太った体に、豚の鼻の亜人のご主人は血だらけのエプロン姿で迎え入れてくれた。
「おや、センさんじゃないですか!昨日は久しぶりの祭りで繁盛しましてねぇ若様には大感謝ですわ、サービスしますよ!おや、そちらのお嬢さんは?」
「リップ様のお客様よ。いいお肉入ってる?」
「ええ、もちろん!なんせ鼻がいいもんで、新鮮な肉の鑑定は自信がありますからね」
なるほど、亜人の特性はこういうところでも活用されているのか。豚は犬並に嗅覚が優れていると聞いたことがある。土の中の食べ物を探し、掘り出す為にあの特徴的な鼻の形をしている。
「どれ、嬢ちゃんにうちで作ったメンチつけカツサービスだ」
肉屋の主人からソースのついた熱々の揚げ物をいただいた。商店が並ぶ活気のいい街をセンさんと二人でホクホクと食べ歩き、次の店に向かった。
乾燥した植物が天井に吊るされ、気持ちの悪い瓶詰めとフラスコが多く並ぶ雑多とした店に入った。店内には白衣を着た背の低いダークな肌色のエルフがグツグツ煮える大釜をかき混ぜていた。
覗き見ると緑色の謎の湯気と鼻に付く刺激臭、鳥の足のようなものが見え隠れする。
「鼻、鼻がちょん切れますよ、は離れて」
小さな耳の尖りの神経質そうな女性のエルフはシッシと手で払った。鼻声でセンさんが品物を注文し、受け取るとそそくさと店を出る。あと少し遅かったら本当に鼻がもげてたかもしれない。
「エルフは薬草に強くて、薬局屋さんを営む者が多いんですが毒好きの変わり者も多いんですよねぇ」
「そうですよねぇー」
クチナワさんが思い浮かんだ。あの人も相当な変わり者だろう。今日の事が思い出された。そういえば屋敷の主人はどんな人なのだろう?お世話になっているが、未だにお会いしたことはない。
「センさん、リップさんのお父さんってどんな方なんですか?この街の領主様なんですよね」
「お館様ですか……まぁ一言でいうと怖い方ですね。名門のウィンクル家の方ですから、ご自分にも厳しく他人にも厳しいというか。でも世の為に大変な尽力をなされていらっしゃいますよ」
「手段を選ばないような?」
「まぁ、お忙しい方なので時には強硬手段もされますが、興味がないと腰も上げませんね。私も滅多にお会いしないんでゴシップネタですけど……あ、ここが魔水の店ですわ」
クリスタルで出来たタンクが並ぶ店だった。繁盛していて店主が細々と動き回っている。半纏を羽織ったヒューマンの男がこちらに気づいた。手をこすり合わせながら近づいて来る。
「おや、お屋敷の女中さんではないですか、いらっしゃいませ」
「こんにちは。あら、ずいぶん魔水の値段が上がっているのね」
「へぇ、すみません。最近、魔水脈が一つ枯れまして、女神様からのエンカウントまでの間です……わしらも心苦しい限りですわ」
「魔石と同じ値段になったら不便な魔水なんて買わないんだけどね、それでいいわ。それと別に、持ち帰りで一升瓶詰めて頂戴。私用だから安くしなさいよね」
「ヒヒ、申し訳ありませんねぇオマケします」
ニコニコした店主はとても心苦しそうには見えず、下卑た笑い方をする。




