21話 毒
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「これは、芽衣の魔道具か?」
「…………答えたくありません」
妖しげな視線から目を逸らす。本当は知らないので答えられないのだが、精一杯の虚勢だ。この距離感に心臓がまた早鐘を打つ。クチナワさんは不敵な笑みを浮かべる。
「これがどんなものか教えて欲しいか?」
「え……?」
「教えて欲しいなら茶にしよう、テラスへ」
返事を待たずクチナワさんはスタスタと歩き出し、図書室の出口へ向かった。ドアが外側から勝手に開き、部屋の外では執事のセバスさんが一人待機していた。見慣れない客人を見張っていたのだろうか、少し気を鎮めることができた。
美しく整えられた中庭のテラスで、センさんがハーブティーとアフタヌーンスタンドを用意してくれた。センさんはチラチラとクチナワさんを盗み見ると、素敵な方ですねと耳打ちしてご機嫌で立ち去った。
確かに眉目秀麗な男性だ。静かにお茶を飲む姿は英国風な庭園に、絵画のようにマッチする。だが中身はストーカー気質で得体が知れない。横目で顔を覗いても、何を考えているか全くわからなくて油断ならない。
「いいメイドだ。紅茶の淹れ方を熟知している」
「ええ、そうですね」
ぶっきらぼうに短く返すと、また沈黙が長く続く。ネックレスのことを教えてくれるのではなかったのか、あまりに沈黙が続いたので機嫌を損ねたのかと不安になった。
彼はおもむろにフルーツに手を伸ばすと無言であーんと口を開け、食べろと私に差し出してくる。
鑑定して見るまでもない。なぜ性懲りもなく私に毒を食べさせようとするのか。苛立ち、平静を保とうとするが心臓がドクドクと嫌悪感を刻み、不規則に鼓動する。触れた首がまだ熱い。
「毒入りですよね、絶対食べません」
「いや、解毒剤だ。さっき触れたとき少量の毒を流し込んだ。君は本当にエルフじゃないのだな……」
その瞬間視界が傾き、景色が回った。心臓が強く胸を打ち、酸素を欲して呼吸が荒くなる。体の力が抜け、目が回る。
ネックレスが肌に触れるとすごく熱い。すでに良くない状況だがさらに良くないことが起こる予感がする。空気が、足りない。
私のボヤけた視界にクチナワさんが映った。強引に口をこじ開けられラズベリーを放り込まれた。
「つらかっただろう……ポーションの効果も入れてある。削られた体力も復活する」




