20話 図書室
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午後にセンさんが街に買い出しに出るというので同行する約束を取り付け、それまで時間を潰すことにした。
屋敷の図書室は分厚い専門書が多く、難しい用語に苦戦している。魔法に関して調べてわかった事は、魔法は魔石や魔水を介して発動するものだ。魔道具の元となる魔石や魔水はいわば器のようなもので、用途に合わせて《火、水、風、光、闇》のエレメントを付加させる。魔導師という職業らしい。
人間のみエレメントを入れることができ、他の種族は魔力を流すと魔法が発動する。それを色々な道具に付属するのだ。魔石や注入した際の人間の魔質によって長く使えるものと、そうでない物の差も出てくる。魔石は使い終わると発動しなくなり、取り替えられるか魔道具ごと廃棄される。
エルフ・ドワーフ・亜人は人間に比べたら魔力は少ないが、部族により違う体質や特技が女神から与えられたとされる。例外なく人間も、どの種族も魔石なしでは魔法は発動しない。
私は胸元のネックレスに触れた。無数に小さな宝石のようなものが埋め込まれている。きっとこれが魔石だ。光に当てると虹色に光彩を放つ。一体誰が着けたのだろう。
調べる限り、鑑定スキルのような魔道具も体質も特技も見つからなかった。もしかしたら私はこちらの世界で普通に生まれ、本当は記憶喪失になったのではないか、鑑定スキル等ではなく、昔の記憶を呼び起こしてるのでは…… クチナワさんが会ったことがないかと聞いてきたのが気になってきた。
行儀悪く椅子に体操座りし、ボーッとネックレスのチャームをつまみ上げ考えこんでいると、いつからいたのか向かいのテーブルには頬杖をついて本を読む、赤い髪のクチナワさんが座っていた。
体に悪そうな程心臓が飛び上がり、驚いて私は椅子から転げ落ちて豪快に尻餅をついた。
「いったた…ク、クチナワさん!!いつからそこに!?どどど、どうして!?!」
「騒々しいな。一時間前からこの部屋に居た。芽衣が真剣に本を読んでいたから声をかけずにいたが、全く気づかれないので暇になってな」
つまらなそうにページをめくっている。常識ってものがこの人にはないのだろうか。すごく驚かされたし昨日のことを思い出し、またムッとなった。
「どうやってこの御宅に入ってきたんですか?ここはリップさんのお家ですよ。不法侵入です」
「家主に許可はもらって入った。リップでなくお館様からだがな。芽衣と約束を取り付けてると言って」
「約束なんてしてないですよ!」
クチナワさんが本から目線を上げた。目が合うと一瞬たじろいでしまう。スっと立ち上がるとカッカッと靴音を響かせ、あっという間に目の前に立たれてしまった。
怯んだと思われたくなくて睨みつけていると前触れもなく、人差し指で首からチェーンを絡め取りクチナワさんはその先のチャームを持ち上げた。
芸術品のような綺麗な顔が間近にあり緊張してしまう。一瞬触れた首が熱を持つ。




