表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/217

19話 日用品

 

 19



 次の日、目を覚ますともう朝日が部屋に差していた。寝坊した!と飛び起きたが昨日ケイロンさんに休みをもらったことに気がついた。朝の支度を済ますと、センさんがちょうど朝食に呼びにきてくれ階下に降りた。


「おはよう芽衣、昨日の疲れは取れたかい?」


「おはようございます、リップさん昨日はありがとうございました」


 先に朝食をとっていたリップさんと一緒になった。馬番をしだしてから、リップさんと朝食を取るのは久しぶりだ。


「こちらこそ。今日から何日間か仕事で家を空けるんだ、好きにして構わないが屋敷を出る時は誰か同伴で、いいね?」


「街に出てもいいんですか?」


「もちろん。だがセンやセバスのような大人と一緒にね」


 目配せした部屋の隅ではアームタオルを携えた執事のセバスさんが控えていた。いかにも執事らしい背筋のいい白髪のおじいさんもヒューマンだ。


「イアソンと二人ではまだ少々不安だ」


 リップさんはポリポリと頬をかき、笑った。


「はい、わかりました。リップさんは都でお仕事を?」


「いや、西の森で魔石のエンカウントゾーンが出た。最近は価値が高騰しているし、魔石を食べるモンスターとの奪い合いが苛烈でね。今回は少々規模が大きいから援軍を頼まれた……おっと、そろそろ行かないと」


 魔物は魔石を食べるのか、これは知らなかった。また新しい事実を頭にメモした。魔石は貴族が使う日用品によく見られる。例えばお金持ちの人は万年筆にも魔石がついている。グリップの魔石を握り、黒や赤など色を思い浮かべればその通りのインクが紙に染み込む。逆に平均的なイアソンさんのような家庭では、瓶に入った墨に羽ペンを使っていた。羽ペンは亜人や魔物の種類によって値段は様々らしい。


 リップさんに年齢を伝えてからは、屋敷の図書室を自由に使わせてもらっている。また細かいところをチェックして、この世界の常識をこっそり確認しておこう。


 リップさんは秒針に魔石がついた壁掛け時計を確認して、慌てて立ち上がった。今日は浮島で見たような裾が絞まった色鮮やかな裁付袴だ。セバスさんがすかさず現れ、籠手や甲冑を付けるのを手伝う。


 手拭いで頭を覆い、キュッと締めるとリップさんの顔つきが変わった。刀を差し、兜を小脇に抱えるとより凛々しい姿だ。昨日のパーティーで女性陣が群がるのも多いに頷ける。


「気をつけてくださいね、お怪我しないように……いってら、」


「昨日のドレス姿……あ、いやなんでもない。いってきます」


「はい、いってらっしゃいませ」


 リップさんを見送ると私は頭をひねりながら椅子に腰掛けた。何か言いたげのように見えたが……なんだろう?部屋の片隅ではセバスさんが石像のようにずっと気配を隠し見守っていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ