第3話 燃えろ正義の心(前編)
ふふ、うふふふ――あぁ、そこそこ、堪らにゃい――吾輩、の、ハーレムだぁ――むにゃむにゃ。
「朝だよー!おはよう小鳥さん達!今日も動物を大切にさぁ行ってみよう!」
ちっ、またあの男か――せっかく今日はJDと戯れる最高の夢だったのに、お、陽も目が覚めたか、いやどちらかといえば起こされたという方が合っているな、それに目が据わっておる。
「ねぇプー太郎、あの人いつまで家に居座るんだろうか」
さぁな吾輩も聞きたいわ、あれからずっと居座り続けておるからな、最初こそ目覚ましの代わりだとか言ってそこそこ利用できたが、今となっては存在自体がウザいのぅ。
「塩撒いたらどっか行くかな」
いや塩よりもあれは祓ってもらった方がいいかもしれんぞ、塩だけでは一時しのぎだ。
完膚なきまでに叩き潰さんといかんだろうな、それよりも今何時だ?
「5時になった所――早過ぎ、あと2時間は寝れるよ」
まるで年寄りだな、さすがの吾輩もまだ眠いぞ、あの男は眠らんのか。
「そりゃ幽霊だからね、寝る事なんて無いんじゃない――もうちょっと寝よ」
吾輩も寝る、これ陽よ腕枕しておくれ、せっかくJD達とのスキンシップを楽しんでおったのに邪魔されたのだ、少しは取り戻さんと。
「この変態、まぁいいや――ほら」
相変わらず微塵も色気の無い寝間着だ、痛て!
「生類憐みの令、最っ高!」
うるさい。
「うるさい」
◇◇◇
さてさて今日は何をしようかの、まずは表で毛繕いじゃろ、それから近所猫への挨拶回り、それが済んだら塀の上でピチピチ女子の観察と、あぁ忙しい1日だ。
「それのどこが忙しい訳、普段通りじゃん」
分かっておらんな陽よ、いいかこういうのはルーティンと言ってだな、云わば精神統一のようなものよ。
「またテレビで覚えた様な知識を――あ、そろそろ行かなきゃ」
「おう気を付けてな、あまり遅くなりすぎるなよ」
こんな時間から学校をサボりか?いつから陽は不良に――いや待てよ、あぁ今日は祝日だったな、人間は限られた休みしかないからな、おうおう何とも不憫よの。
むっ何やら騒がしい番組が始まったぞ、随分とカラフルな衣装を纏ったコスプレ集団じゃのう、見ていて目がチカチカするわ。
「なんとも最近の戦隊ものってなぁ派手だな、俺らの時代とは大違いだぜ」
せんたいもの?何だそれは、あっこのピンクとイエローの娘かわいいな、撫でられたい、モフモフされたいにゃあ。
「小さい頃は俺も憧れたもんだぜ、こんな正義の味方になりてぇってな」
おいおい冗談だろう?どう考えてもご主人は悪の組織側の人間だろう、その極悪面で正義の味方とか正気の沙汰とは思えんわ!
「なんだよプー太郎、人の顔じろじろ見やがって――おめぇ今俺は悪側の人間だと思ったろ」
そ、そそそ、そんな事無いぞ!ご主人は正義の味方だ、うむ、その鋭い目付きは悪人を睨み殺す必殺技なのだろう、さすがだご主人、だからその怖い顔で吾輩を睨まないで!
「何ニャーニャー騒いでんだよお前、別に取って食おうって訳じゃないんだ」
はぁはぁ、吾輩の心臓が握り潰されると思ったわ、うん?これは――おぉなんともド派手な必殺技よの、たかがボール1個でこの威力、地面が抉れておるわ。
「かー、最近のはすげぇな、俺の時代は精々原付に無理くり5人乗って必殺技かますくらいだったがな」
いやいやその前に原付に5人って、どんなサーカス集団だ、考えただけでも個々の身体能力は凄まじいな。
ふぅ、なかなかに面白い番組だった、陽が戻ったら自慢してやろう、くくくっ悔しがるだろうなぁ。
「そういや昔、最終回目前で事故死した俳優がいたっけなぁ」
ほぅ、それはなんとも切ないな有終の美を飾れなかったか、さぞ無念だっただろう。
吾輩の最後はピチピチJKやJDに囲まれて逝きたいものだなぁ。
「おっと、そろそろ開店の準備をするか、プー太郎大人しくしてろよ」
任されよ、吾輩程大人しい猫はおらんぞ、安心せい。
◇◇◇
そこのお姉さん吾輩を撫でてみぬか!これそこのJK集団!吾輩を撫でると幸運が舞い込むぞ!ほれほれどうじゃどうじゃ吾輩のスマイルは!
「この猫――大人しくしてろって言っただろうが、まぁ期待はしてなかったがよ」
ふははははは、ここは吾輩の城よ!さぁもっと愛でるがよいぞ!
「おいプー太郎、お前奥に行けよ、商売の」
「すいません、キャットテイルさんにお届け物です」
「え、あぁ、はいはい」
おや、なんだあの荷物は、随分と大きいな――気になる、すごく中身が気になる。
「陽が頼んだのか?おいプー太郎、お前宛だぞ――陽が帰ってきたら開けて貰いな」
なんと吾輩宛てとな!?こ、こんな事が起こるなんて、一体誰が――まさか吾輩の熱烈なファンからか!?中身は何なのだ!ええい、気になるぞ!陽はよぅ帰って来んか!
すっかり日が傾いたな――あぁこんなにも陽の帰りが待ち遠しいのはいつ以来だ、落ち着いて毛繕いも出来ん、吾輩の爪では精々このダンボールに傷を付ける事くらいしか出来ぬし。
あぁもう!陽よ、はよぅ帰って来ぬか!
「何そんなに慌ててるの?陽ちゃん来ないと大変なの?」
当り前じゃ、こんなプニプニの可愛いお手では強固なガムテープは――むっ煎餅幼女ではないか、いつからここにおるのだ、というか雰囲気変わったな、和風ではなく今風の恰好ではないか――だが今はそんな事どうでもよい、吾輩は早く中身を見たいのだ!
「カリカリだよ、おいしいおいしいカリカリ」
カリカリ?まさか例のカリカリか!?おぉそれはありがたい!お主が手を回してくれたのか?いやはや持つべきものはかわいい幼女じゃな、ふはははは。
「ふははははは」
「そんな下品な笑いはやめなさい、バカになっちゃうよ?それといつまで煎餅幼女って言い続けるつもりよ」
陽!ようやく帰って来たか、ささこれを開けてくれ、バーッとやってくれバーッと!
「はいはい、どれどれ――おぉ、色んな味が入ってるね」
これは――良い物だ!良きかな良きかな、さすがだ煎餅幼女よ、この味を覚えてしまうと他の餌が霞んでしまうわ、時にあの工場の景気はどうだ?
「今ね新しい人もいっぱい来て、工場を建て替えるって話も出てるよ」
「すごいねぇ、あれからほんの数日なのにそんな話まで出てるなんて」
この家も改装した方が良いな、色々ガタが来ておるし――それこそ今朝方見た悪の組織の、そうだ陽よ知っておるか?世の中には戦隊と呼ばれる日夜悪に立ち向かう組織がある事を!特にそこのピンクが吾輩のお気に入りだ。
「ほんっとあんたは見る所がズレてるっていうか」
「私も見てるよ、かっこいいの、こうバーンってやって、ドーンってしてね」
ほほう話が分かるではないか煎餅幼女よ、そうなのだかっこいいのだ吾輩もあんな風に人助けが出来れば。
「プー太郎、あんた――」
きっと女子にモテモテだ!ふははははは。
「ふははははは」
「なんか頭痛くなってきたわ、私――お風呂入ろ」
あまり長風呂せぬようにな、のぼせて茹蛸になってしまうぞ。
「お気遣いどうも」
さて幼女よ戦隊ものについて語ろうではないか、そもそも何故吾輩がそれを見始めたかそこから語るとしよう。
◇◇◇
「はぁ――なんだってプー太郎はあんなに欲に忠実というかなんというか」
思えば最初はそんな事なかったんだけどなぁ、一体どこで育て方を間違えたのやら。
うっ冷た!天井からの水滴か、背中に落ちるとゾゾってするよね、この感じ嫌だなぁ。
「そろそろ上がろうかな、いつまでも」
―コツッ―
え、何今の物音――外から?動物とかかな、もしかして変質者!?ちょっと待ってよ、怖くて出れないよ、幽霊とかなら平気だけど本物の変質者とかマジ勘弁なんだけど!
「だ、誰かいるの?――やっぱり気のせいかな」
そうだよ気のせいだよ、こんな街外れじゃ夜は人通りも少ないし、あっ人通り少ないから逆に来るのか。
「よし一気に行くよ、さっさと脱衣場に出て拭いて部屋に帰る――窓を見ない、窓を見ない、窓を――っ!?」
それでな吾輩は言ったのだ、それ以上シュガーをいじめるのは許さんぞとな、そしたら奴等は尻尾を巻いて逃げおったのだ、いやぁ吾輩の底力というものをまざまざと見せつけた瞬間だったわ。
「プー太郎は強いんだね、私とどっち強いかな」
ふはははは、それは勿論吾輩に決まっておろう、人気、頭脳、素早さ共に吾輩の方が1枚も2枚も上手ぞ!煎餅幼女などに遅れは
「きゃあああああああ!」
何事だ陽の悲鳴だぞ、煎餅幼女行くぞ!
「わかった!」
陽どうした!何かあったのか!?
「い、いい、今外に誰かが」
何だと、もしや覗き魔という奴か!?ご主人は今出掛けておるし、ここは煎餅幼女と吾輩で何とかするしかあるまい!煎餅幼女外に行くぞ!
「がってんしょうち!」
「き、気を付けてね!無茶だけはしないで!」
これ覗き魔よ出て来ぬか!吾輩達が相手になろうぞ!どうした臆したか!?
「出てこい、わるもの!」
不気味な程静かだ、気を抜くでないぞ、何が潜んでおるか分からんからな、むっそこか!
なっ!徳川殿!こんな所で何をしておるのだ、まさか覗きを働いていたのは。
「ち、違う断じて某ではない!こ、この男が急に!」
この男?見た事無い奴だな、革ジャンにジーンズ、なんだこの恰好は、随分と古めかしいいで立ちだな。
「君はこの家の住民かい?安心したまえ、この変質者は僕が捕まえたぞ!」
うっ寒気がする台詞回しだ、それにどこか気取った言い方、徳川殿を捉えられるという事は、こやつ幽霊か。
「せいぎの味方だ!せんたいだ!」
これ、はしゃぐでない煎餅幼女落ち着け、お前さん悪い霊ではないようだが何用でここに来た。
「おっと自己紹介がまだだったね!僕は東堂正義!御覧の通り正義の味方だ!」
ウィンクと親指を立て歯をキラーン、寒気がするわ!男のこんな姿を見ても何も感じぬ!
「ね、ねぇ大丈夫?」
陽下がっておれ、こやつとは吾輩が話を
「お嬢さんもう心配いらないぜ!この僕が来たからには大船に乗ったつもりでいてくれ!はははは!」
「プー太郎やっぱりせいぎの味方だよ!」
「あ、ありがとうございます、あはは」
これさっさと手を離さんか!いつまで陽の手を握っておるのだ!離れろ離れんか!しっしっ!
「あ、あのそれで何か御用ですか?」
「これは失礼!この辺に探し物屋さんがあると聞いてね!もしかして君がそうなのかい?」
「えぇまぁ私とこのプー太郎の2人でやってます」
男の依頼は願い下げだ、さっさと帰れ!
「そうか、では単刀直入に話そう――僕の倒すべき悪を探して欲しいんだ!」
話を無視した挙句、これまた難度の高い依頼を言いおってからに、あぁ今回も骨が折れそうだ。