プロローグ 壱
1582年、本能寺にて。
「敵は本能寺にあり!」
突如聞こえた、号令により…。
とある者が、目を覚ます。
「やかましいわッ!」
その名は、織田信長。
寝ていた織田信長は、起き上がって。
「蘭丸!何事じゃ!?」
と、信長は叫んだ。その声は、外まで響いた。
すると、トトトト、と。
何者かが走ってきて、戸を開けた。
「信長様、明智光秀がここ。
「本能寺に攻めて来ました!」
「蘭丸!光秀が謀反したとでもいうのか!」
「はっ!恐らくは…。
「刀を出せ!戦うぞ!」
と、信長は寝床に置いていた観賞用の刀を取る。
「信長様は、逃げてください!
「ここは、私が時間を稼ぎます!」
「要らぬ、気遣い結構。
「どうせ、囲まれておる。ならば、最後まで抗おうじゃないか?」
「しかし、信長様!
「あけ…」
蘭丸が明智と言う直前に、庭から一人の歩兵が…。
「信長!覚悟!!」
と、叫びながら、槍を突き出す。信長は、刀を抜き、槍の先を斬った。
そして、蘭丸は歩兵の首をちょん切る。
「信長様!敵がすぐ、ここまで…。」
「分かっておる!
「蘭丸!寺を燃やせ!」
「何をする気ですかッ!?」
「光秀なんぞに、この天下の首を取らせる訳にはいかぬ。
「ならば、自害して首を残らないようにする!」
「はっ!分かりました。」
蘭丸は、火を寺全土に放った。光秀の軍が放っていた、火矢により、本能寺は簡単に炎に包まれた。
その頃、信長は上半身裸になり、小刀で自身の腹を刺した。燃える本能寺で信長は死んだのだった…。
◆
はずだった…。死んだはずだったんだ。
信長は、日本とは言い難い。
しかし、西洋など外国とも違う。不思議な雰囲気が漂う、神殿らしき場所にいた。気付かぬ間に、移動したのだ。
しかし、瞬間移動とは違う。なぜなら、刺したはずの腹が無傷だからだ。
そして、その神殿らしき場所には、謎の白いドレスを着た女が、西洋の王が座るような立派な椅子に座っていた。
「おい、ここは、どこだ。
「そこの女。」
「あのね…。女って、言わないで。
「せめて、女性と言いなさい!」
「は?ここはどこだと言うておる。
「分かったらさっさと答えろ!そこの女!!」
「もうイイわ…。
「あなたの問いに答えるわね。ここは、女神の神殿よ。つまり、私は、女神アレクタシア。
「あなたは、私の力により、ここに呼んだということよ。」
「呼んで何をする気だ?
「天国でゆっくり出来ると思ってたのによ…。」
「いや、あなたはどちらかと言うと、地獄でしょうよ…。
「さて、ここに呼んだ理由は他でもない。異世界に転生してもらうためよ。」
「転生?なぜ、儂を転生する?」
「その異世界には強い魔王が居てね。その魔王を倒してきて欲しいからよ。」
「貴様が倒せば良かろうに。」
「神が自ら手を出す訳には行かないのよ。だからといって、いつまでも手放す訳にはいかないし、あなたを呼んだわけよ。」
「分かった。但し、条件がある。」
「なに?なんでもイイわよ。」
「蘭丸も転生させてくれないか?」
「あら?そんなことでいいの?」
「ああ。蘭丸は優秀だし、家事も出来るからアイツの力が必要だ。」
「そんなに彼が大事なの?
「確かに、ゲイではないかと噂されてたし、まさかね…。」
「何を申しておる?
「彼?蘭丸は女だが?」
「え?」
「蘭丸は、男として生きてきただけで。
女だ。」
「驚愕な事実ね。ま、イイわ。
「あなたの頼み叶えてあげる。」
と、言うと女神アレクタシアはすぐに蘭丸をここに呼んだ。そして、蘭丸にもこれまでのことを説明し、直ぐに異世界に転生の準備をしていた。
「よし、準備は出来たわ。
「いくよ?言い残したことは無い?」
「ああ。全くない!」
「そう、言いきらなくても…。
「蘭丸は?」
「はい。アレクタシア様。気になることはしっかりと聞いたので、大丈夫です!」
「可愛いわね。蘭丸は。
「信長とは大違いだわ…。」
「分かったから、さっさと転生しろ。」
「はー。分かったわ…。
「迷える子羊よ、迷いなく人生をもう一度やり直したまえ。 リーリンカーネション! 」
と、信長と蘭丸の体が光りだした。
そして、神殿らしき場所から姿を消した。
「任せたわよ…。」
と、女神アレクタシアの声だけが神殿に響いた。
◆
信長と蘭丸は異世界に転生した。
そこで、蘭丸はあることに気づいた。
「信長様、若くなってませんか?」
「む?確かに。若がっておる。
「アレクタシアめ。妙なことに気を遣いやがる。」
「全盛期の信長様が良いということなのでしょうか?」
「恐らくは、そういうことだろうな…。
「てか、それよりも…。」
信長はそれよりも重要なことを思い出した。
ランダム性がある、この転生は。
僅かの可能性だが、とんでもない場所に転生する可能性があることを…。
そう、転生した場所は、砂漠だった…。
「ふざけんな!あの駄女神!!」
「まぁまぁ、信長様。
「アレクタシア様はランダム性があると申しておりましたので…。」
「しかし、砂漠だぞ!
「西洋の宣教師から聞いたが、砂漠は大変危険だ。水もない、儂らがどうせよと申すのだ!」
と、信長が叫んでいると。
「お困りですか?」
と、一人の女性が言った。その女性は金髪で顔に布を巻き、紫外線をシャットダウンするような服装だった。
「ああ。儂は大変困っておる。
「そこでだ、街まで案内して欲しい。」
「そういうことなら、案内しましょう。」
「ありがとうございます!
「ところで、あなたの名は?」
「クリシューラ・アルレスです。」
「クリシューラさんですか。
「私は蘭丸と申します!そして、この方が信長様です。」
「ところで、クリシューラよ。
「さっきから、蘭丸とクリシューラに数字と文字が浮かぶのだが、何か知っているか?」
「ん?
「あー、分かりました。スキル、鑑定眼ではないでしょうか?」
「スキルとは?何でしょうか?クリシューラさん。」
「スキルとは、簡単に言うと能力のことです。スキルのレベルは10まで上げることができます。いろんなスキルがありますが…。鑑定眼は、人の能力や物などを鑑定するスキルなんです。」
信長は鑑定眼でクリシューラと蘭丸を調べることにした。
〈クリシューラ・アルレス〉
年齢:19歳
性別:女
種族:人間
職業:僧侶
状態:平常
ステータス レベル:28
HP:66 MP:48 腕力:8 体力:32 敏捷:56 知力:60 魔力:30 器用:30
スキル
気配察知:Lv3、火魔術︰Lv10、治癒魔術︰Lv6、鑑定眼、自動HP回復(戦闘中、少しずつHPを回復する)、自動MP回復能(戦闘中、少しずつMPを回復する)
職業スキル
呪い無効
称号
見習いシスター
装備
魔法のステッキ、魔法の布、白いドレス、白い靴、僧侶のピアス
〈蘭丸 森〉
年齢:17歳
性別:女
種族:人間
職業:侍
状態:平常
ステータス レベル:1
HP:69 MP:67 腕力:34 体力:37 敏捷:150 知力:69 魔力:12 器用:27
スキル
柔術(柔道の上位スキル):Lv10、隠密:Lv10、 護身術(投極をメインにした、殺傷技の少ない近接戦闘術):Lv10、 気配察知:Lv10、剣技:Lv10、剣術:Lv10、瞬発:Lv10、回避:Lv10、夜目(猫のように、夜でも行動可能)、抜刀術(腰に下げた刀を抜き、素早く敵を攻撃する)、自動HP回復、自動MP回復、料理
職業スキル
明鏡止水(どんな状況も冷静に対処できる)、心眼(目や耳などの感覚器で知覚することが出来ない情報を見えない物の具体的な形質や挙動を把握する)
称号
信長様の家臣
装備
名のない日本刀、東洋の着物、東洋の羽織、東洋の袴、東洋の手甲、下駄
「なるほど、蘭丸の強さは分かったが…。
「自分の強さは測れないのか?」
「はい。ですので、私が使ってみますね。」
〈信長 織田〉
年齢:19歳
性別:男
種族:人間
職業:覇王
状態:平常
ステータス レベル:1
HP:66 MP:75 腕力:64 体力:67 敏捷:50 知力:89 魔力:92 器用:37
スキル
戦術:Lv10、 魔力操作(身体や武器を覆って攻撃力や防御力を強化するほか、自身と対象との魔力同士を相殺することによって、 魔法効果を持つさまざまな現象を消し去ったりもできる。 生物に直接使うと、相手を悶絶させるほどの効果がある):Lv10、剣技:Lv10、剣聖術(剣術の上位スキル):Lv10、瞬発:Lv10、回避:Lv10、闇魔術:Lv10、抜刀術、火耐性『大』、覇気( 周囲の敵を威圧し、闘争心を鈍らせ、精神力を弱める。仲間には闘争心向上効果 )、楽市楽座(お金を稼ぐ才能を持つ)、自動HP回復、自動MP回復、指揮官
職業スキル
絶対王者の覇気(自分よりレベルが低い敵を麻痺もしくは気絶させる)、心眼
称号
天下
装備
日本刀『 ムラマサ(仮)』、東洋の着物、東洋の羽織、東洋の袴、西洋の靴
すると、クリシューラが驚いた表情を見せた。
「どうした?儂の顔に変なものでも付いているか?」
「いえ、そうじゃないんです…。蘭丸さんと信長さんのステータスがレベル1なのに、高くて…。スキルも多彩で全てレベル10…。
「そして、極めつきは、見たことない職業…。何をしたら、こうなるんですか!?」
「すいません。鑑定眼を持ってない私にはなんの事だか…。」
「確かに、蘭丸の強さはクリシューラと比べると、敏速が異常に強いってことは気づいていたが…。」
「そうですね…。分かりました!
「コレをあげます!」
と、クリシューラが渡した物は、カード?らしき物だった。
「なんだ?コレは?」
「コレは、鑑定眼のスキルを封じ込めたカードです。これを所有すれば、自分のステータスを把握できるアイテムです!」
「ありがとうございます。二人分も良いんですか?」
「ええ。買いすぎて困ってたから良いんです。それに、自分の強さは、私が伝えるより、自分で確かめた方が良いですしね…。」
蘭丸と信長は、早速。自分のステータスを調べた。
「確かに、これは便利ですね!
「クリシューラさん、ありがとうございます!」
「にしても、クリシューラよ。街はまだなのか?一向に景色が変わらんのだが…。」
「はい。特に私は下駄なので、砂が熱くて結構辛いです…。」
「アレクタシアめ…。こういうところは、気が利かんからのう。」
「?。女神アレクタシアがどうしたのですか?」
「あ、いえ。同姓同名なだけで、女神ではありませんよ。」
「?。そうですか…。」
「はい。クリシューラさん。」
蘭丸はクリシューラに聞こえないように小声で…。
「信長様。気をつけてください…。なんとか、誤魔化せましたが、アレクタシアさんの名を出すのは危険ですよ…。」
「すまん。以後、気をつけよう。」
しばらく、歩くと…。
クリシューラが何かに気がつく。
「皆さん!魔物です!」
クリシューラはいち早く、魔物の存在に気づいたのだ。
「おかしいですね…。気配察知で気づくはずなんですが…。」
「あの魔物には、スキル、気配察知無効があるようです!
「私が鑑定します!」
〈ノーマル・ゴブリン〉
種族名:ゴブリン:魔獣
職業︰なし
ステータス レベル︰18
HP:32 MP:12 腕力:26 体力:19 敏捷:30 知力:12 魔力:15 器用:18
スキル
棍棒術:LV3、気配察知無効
装備
ひのき棒、革の服
〈ゴブリン・ナイト〉
種族名:ゴブリン:魔獣
職業︰戦士
ステータス レベル16
HP:56 MP:5 腕力:32 体力:20 敏捷:20 知力:8 魔力:0 器用:15
スキル
剣術:LV5、気配察知無効
職業スキル
仁王立ち(味方を庇った時、一定期間、防御力上昇)
装備
銅のつるぎ、革の鎧
〈レア・ゴブリン〉
種族名:ゴブリン:魔獣
職業︰なし
ステータス レベル︰20
HP:32 MP:12 腕力:26 体力:29 敏捷:30 知力:22 魔力:38 器用:30
スキル
棍棒術:LV5、気配察知無効
装備
棍棒、革の服
〈レア・ゴブリン・ナイト〉
種族名:ゴブリン:魔獣
職業︰戦士
ステータス レベル25
HP:56 MP:5 腕力:32 体力:30 敏捷:30 知力:58 魔力:15 器用:30
スキル
剣術:LV9、気配察知無効
職業スキル
仁王立ち
装備
鉄の剣、革の鎧
「くっ…。なかなか、強そうな相手ですね…。」
「信長様!逃げますか?」
「いや、奴らに囲まれておるから、難しいだろう…。
「攻めるしかあるまい。」
「まず、私が先手を打ちます!
「皆さんは、その隙に動いて、ゴブリンに攻撃を!」
「分かりました!クリシューラさん!」
「了解だ!」
クリシューラがステッキを取り出す。
『業火炎!』
クリシューラ達の周りに激しく炎が噴き上がる。そして、その炎はゴブリン達に向かい散った。
すると、消えた炎と交代するように信長がレア・ゴブリンの前に現れ、攻撃する。
『闇剣術 』
スキル、闇魔術と剣聖術を複合し応用した技。
『闇纏 黒揚羽』
刀に闇を纏い、レア・ゴブリンを斬った。
当然、この技にレア・ゴブリンが耐えることは出来ず、倒される。
一方、蘭丸はノーマル・ゴブリンに攻撃した。
『居合斬り』
ノーマル・ゴブリンの体は、横に真っ二つになった。
「もう1匹!蘭丸は、ゴブリン・ナイトを頼む!」
と、信長はレア・ゴブリン・ナイトの方に向かう。
ある程度、信長が近づくと…。
レア・ゴブリン・ナイトは、向かってくる信長に攻撃する。
通常の攻撃だ。信長は難なく、それを避ける。
そして、
『闇剣術 闇纏 黒揚羽 』
先程と同じように、刀に闇を纏い、攻撃した。もちろん、レア・ゴブリン・ナイトは倒された。
一方、蘭丸はゴブリン・ナイトを倒そうと向かった。しかし、蘭丸にとって想定外のことが起きた。
足が取られて、転けたのだ。
理由は、簡単。慣れない砂漠で下駄は動きづらかった、その一点のみである。
しかし、戦場において、ささやかなことで、命取りになる。
「蘭丸ッ!」
「蘭丸さんッ!!」
と、信長とクリシューラが空が割れるくらい大声で叫んだ。
一部、設定変更しました