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烏と妖精と鬼1


「今日もネタがありませんねー」

 天気は快晴。幻想郷は今日も平和ナリ。

 現時点で新聞の記事になるような出来事はひとつも挙がっていない。

「あややー。ただでさえ平和な幻想郷ですのに、異変すら起きないと私も商売あがったりですよー。購読者も減りますし、お給料も減っちゃいますし。何か事件でも起きませんかねー」

 とは言え異変が起きたら起きた面倒にはなりますがね。

 ここのところどこに行けども平和平和の一点張り。平和の安売りどころか退屈になり下がったこの世界は、記者の私としては生きにくい世になったものです。

 今もこうして幻想郷各地を飛び回ってはいますが、記事になりそうなことはありませんね。

 「ひとまず、少し休憩しますか。ちょうど霧の湖付近ですし、少し涼むとしますかね」

 ゆっくりと地上へと降りる。

 しかし、そこで見覚えのあるシルエットがちらほらと見えてきた。

「あやや、これはこれはチルノさんたちではありませんかー」

「んお?その声はあやあやまるしんぶんかー。しんぶんならいらないぞー」

「いや、あやあやまるじゃなくて「文々丸新聞」ですよ。いつも言ってるじゃないですかー」

「あら?そうだっけ?」

 まったく、チルノさんも相変わらずですね。それに、

「大妖精さんにルーミアさんもおそろいで、水遊びでもしてたんですか?」

「おー、ぶんぶんだー。さっきまで鬼ごっこしてたんだけど汗かいちゃったからなのだー。湖は冷たくて気持ちいのだー」

 ルーミアさんは無邪気にキャッキャと笑う。

 そんな子供じみた二人とは違い大妖精さんは落ち着いた様子で、

「そうですね、文さんも涼みに来られたのですか?」

「はい、大妖精さんは二人のお守りですか?相変わらず仲良しですねー」

 「お守りとはなんだぶんぶん!」「そうなのだー、私達は立派なおとななんだぞー」と抗議の声が聞こえてくる。

「いやー、和みますねー。こどもと戯れるのもお姉さんとしては悪くありません」

 「「なんだとー!」」とこどもふたりが向かってきた。

「あっはっは!ほら、お菓子でも食べて落ち着いてくださいな」

 カバンの中からお菓子を渡すと二人はすぐにおとなしくなりました。無邪気でいいもんですねー。

「はい、大妖精さんの分もありますよ」

「あはは、ありがとうございます」

 困ったように笑う大妖精さん。

 ほんと同じ妖精とは思えませんねー。

「そーそー。今なにか新聞のネタにならないか探しているんですけど、お三方は今日面白いことでもありましたか?」

「ぶんぶんと会えたことなのだー。ぶんぶんおもしろいのだー。お菓子もくれるから好きなのだー」

「・・・・っ」

 おっと、これはこれは。ルーミアさん、危ないですね素でそんなこと言われと恥ずかしいですよ。

「何照れてんだよぶんぶんー。そーいや、今日霊夢見たぞ。なんかいつもと違って怖かったなーあの時の霊夢」

「ほう、霊夢さんですか。それはどのあたりで?」

「確か地底の入り口でした。でもあれはいつもと違うというより・・・」

 そう言って大妖精さん少し黙り込んでしまう。

 彼女はとてもやさしい妖精ですから、勝手に霊夢さんの様子を話してしまうことに気が引けているのでしょうか。

「まあ、ここのところ霊夢さんも忙しいでしょうからね。今回もそんなところでしょう」

 おそらく地底から出てきたということは勇儀さんに会いに行っていたんでしょう。そう考えれば合点がいきますね。新聞のネタにはなりそうですが、知人のことを無暗に記事にするのは私の記者道に反しますからね。

 しかし、ここでルーミアさんが言った一言に私は動揺することになる。


「霊夢泣いてたのだー」


「はい?」

「あ。だめだよルーミアちゃん!」

 大妖精さんが止めようとするももう遅い。

「なんでなのだー?私霊夢のことも好きなのだー。神社行くといつもやさしくしてくれるのだー。だから霊夢には泣いてほしくないんだぞー」

「それはそうだけど・・・」

 大妖精さんは困ったように私を見る。

 それにしても、霊夢さんが泣くだなんて。これはこれで異変ですよね。

 うーむ、どうしたものか。

 これはややこしいことになりそうですね。恐らく勇儀さんと何かあったとは思うのですが、私がでしゃばるようなことでもないといえばないんですよね。

 当人たちの問題に他人が口を挟むものではない。しかして、気になることは気になりますし。

「いやはやどうしたものか・・・・ん?」

 考え込んでいるとチルノさんがじーっと私を見ています。

「チルノさん?どうしましたか?」

「ぶんぶんにとって霊夢って友達なのかー?」

「はい?まあ少なくとも私は霊夢さんの友達だと思ってますし、力になりたいなーとは思っていますが」

「そーか、だったらあたいもおなじだ。あたい霊夢の友達だから、友達がこまってるなら助けるのが友達だもんなー」

「・・・・・」

 あやや、変に考えることもありませんでしたかね。

 チルノさんの言う通りですね。

「そうですね。私も霊夢さんが好きですよ。妖怪に優しくしてくれる彼女のことが。だったら私も霊夢さんに優しくしなくちゃいけませんねー」

「なんとかしてくれるんですか?」

「ええ、どこまでやれるかわかりませんが。この射命丸文、友人のためとなればこの翼でどこへなりと飛んでいく所存です」

 そうとなれば、行きますかね。

 相手は元上司。鬼の四天王星熊勇儀様。

 けれども、友人のためと思うと恐れを抱かないのが不思議です。

「さて、清く正しい射命丸新聞!今回は番外編ということでちょっと人助けに向かいますか!」

 




 

 


 


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