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1章 現在の巫女


 自分に欠けているものとはなんだろうか。

 昨日彼女に言われた一言が耳から離れない。

 以前から感じているズレがここ数日はひどい気がする。何も感じず日々が過ぎ去り、自分だけ置いて行かれるような、そんな周りとの間隔のズレ。ふと気を抜くと宙に浮いてしまいそうだ。

 自分が何を望んでいるか、何を求めているか。

 その願望が私を押しつぶす。

 明確に分かっているからこそ、私はそれに手が届かない。

 ・・・なんて滑稽な。

「・・・おい。霊夢―」

「・・・何よ、魔理沙」

 思考が停止し、現実へと戻る。

「いや、ぼーっとしてたからさ。危うく向こうの世界に引っ張られでもしたか?」

「・・・そんなわけないでしょ。向こうの世界って言っても幽々子と妖夢がいるだけじゃない。大した問題じゃないじゃないの」

「はっはっは。確かにな。でも、話くらい聞けよな。魔理沙さんがまた一歩不老不死に近づいたんだぜ?パチュリーから借りた魔導書が久々に役に立ったぜ。だいたい外ればかりだったからなここ最近はよー」

 ケラケラと眼前の魔法使いは笑う。

 彼女の場合借りたとは言うが恐らく盗んだのだろう。彼女曰く「盗んでない!私が死ぬまで借りるだけだ!」らしいが、

「不老不死なんかになってどうするのよ。蓬莱人同士の殺し合いにでも混ざりたいわけ?」

 目の前の白黒魔法使いは「そんなわけないだろ!」と吠える。

「不老不死だぜ?不死になればずっとそのまたずっとやりたいことやり放題なんだぜ?考えるだけで面白そうじゃないか!」

「目的と手段が入れ替わってそうだけど?」

「そんなことはどーでもいいのぜ。目指すことに意義があるのさ」

「そう、せいぜいがんばりなさいな」

 理解できない目標を語られたところで、返す言葉もない。

 魔理沙は「なんだよ達観してんなー霊夢はよー。つまんないのぜ」などとふてくされている。

「・・・・・・・・」

 達観か・・・。達観というよりは諦観していると言ったほうが正しい気がする。

「それで、それだけのためにここまで来たってわけ?だったら早く帰りなさいよ。私これから修行の時間なんだけれど」

「いいじゃないか。ダチに会いに来るのに理由なんていらないだろ。私はお茶でも飲みながら見てるからよ。どーぞ鍛錬に勤しんでくれよな」

 私はカラカラとうそぶく魔理沙に溜息をつく。どーもこの魔法使いを相手にすると疲れる。今に始まったことではないが、

「わかったわよ。お茶は自分で注ぎなさい。場所はしってるでしょ」

 魔理沙は「もちろんだぜ」と家の中に入っていった。

「さて・・・」

 私は境内に結界を張る。一応念のために。

 修業とは聞こえがいいが、言い換えれば自身の力の再確認。博麗神社の力を借りることで巫女として存在を昇華している自分にとって、いつでもその力を取り込めるように、常にこの神社とのラインを自身に結びつける必要がある。

 それが、博麗大結界を保つことにつながる・・・・らしい。以前紫から教わったことだ。

 だからこそ、定期的に神社に宿る博麗の巫女の力を自分に流さなければならない。

 目をつむり、意識を集中させる。

 体の力を抜き、中身を空っぽにするイメージ。

 それだけで、博麗の力が自身の体に入ってくる。

「・・・・・っ」

 足元の砂利が宙へと浮かぶ。木々は揺れ、目には見えない揺れが空間を揺さぶるのがわかる・

 魔理沙が「相変わらずすげー力だなー」と関心したように言うが、答える余裕がない。

 本来人の身には宿すことのない力を無理やり入れ込んでいるのだ。体が悲鳴を上げてるのがわかる。

 それでも、博麗の巫女として避けることのできない責務。

 それ故に自身の在り方にズレが生じているのかもしれない。

 先ほどの思考に逆戻りする。

 周囲とのズレ。自身とのズレ。

 それが摩耗し、行き着く先はいったいどこに・・・

「・・・・感心しないわね」

「・・・えっ!?」

 突如として境内を覆う力が拡散する。それまで神社から流れ出た揺れは消え、あたりは再び静寂に包まれた。

「・・・紫」

 眼前に姿を現したのは紫色の衣装に身を包んだ金髪の女性だった。

 私の師であり、そして親同然の存在。

「昨日振りね霊夢」

 冷たい声色。そして氷のような視線。

 自分がやったことを知るとともに、紫の冷たい眼差しに体が震える。

「貴女、私が昨日言ったことを何一つ理解していないようね」

 溜息が漏れる。

 それを聞くだけで心臓が止まりそうだ。

「・・・それは」

「それは?何?言いたいことがあるならちゃんと言いなさいな。それとも言いたいことも見つからないの?」

「・・・・っ」

 紫はあきれたように息を吐く。

「集中できていないのに降霊の儀を行うのはやめなさい。ただでさえ不安定な結界がだめになるわよ?」

 ・・・返す言葉が見つからない。

「・・・・霊夢。あなたの役割はこの世界を覆う結界の管理。わかっているとは思うけど、余計なことを考えるのはよしなさい。貴女にとってもこの世界にとっても悪影響しか及ぼさないわ」

「・・・私の役割・・・・・」

「そうよ。貴女は私が言った役割をこなせばいいの。貴女にしかできないのだから・・・あなた以外に頼むことができないのよ・・・・聞いてるの?」

「・・・・・・・・」

 再び溜息。

「・・・・魔理沙」

「ん?なんだぜスキマ妖怪」

「名前で呼びなさいな・・・この子のこと任せたわよ。何も聞こえていない様だから」

「分かってるよスキマ妖怪。用が済んだらさっさと帰ることをお勧めするぜー」

 そういうと魔理沙はいつの間に取り出したのか、八卦炉を片手に紫をにらんでいる。

「・・・・貴方も相変わらずね」

 紫は不敵な笑みをこぼすとこの場から退場しようと再びスキマを開いた。

「待って紫」

「・・・なにかしら?何か言いたいことでもでてきた?」

 平坦な声のトーンに再び心が震える。しかし、聞かなけらばならないことが一つあった。

 眼前の紫を見る。

 感情がうかがえないその顔に、声に、

「わ・・・私に巫女の力がなくなったら・・・紫はその時どうするの?」

 紫の表情がふと変わる。

 変わるというよりは表情が消え、無感情なセリフ一つ残して姿を消してしまった。

「・・・貴方は博麗の巫女失格ね」

 ・・・・・博麗の巫女とはなんなのだろうか。

 私はもうわからなくなってしまった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 私、霧雨魔理沙は「後悔をしない」「遠慮をしない」「妥協をしない」この三拍子をモットーに今までを過ごし、そしてこれからを生きていく。

 目的のためなら手段を選ばず、方法を模索し、可能な限り努力を惜しまない。前向きで前しか向かないそんな私。

 まぁ、この生き方を選んだが故に、周りに迷惑をかけまくっているわけだが、

 アリスにパチュリー・・・それに霊夢。ずいぶん勝手に生きてきたものの、先ほどの通り後悔も遠慮もしないのがこの私、霧雨魔理沙だ。

 「・・・しかしよー。他人に遠慮しないこの魔理沙さんでもよー。他人に配慮くらいはするんだぜー」

 参った。

 いくら、このハッピームードメーカー魔理沙さんでもこの空気はちと厳しい。

 つい半刻前の出来事。

 いわゆる親子喧嘩。またを内輪もめ。喧嘩というには些か一方的ではあったが、つまらないことこの上ない。目の前でいくらもめようとそこに生まれるのは生産性のないわだかまりばかり。博麗の巫女の役割やらなんやら、私には関係ないってーのに。

 紫も霊夢も変にそこにこだわるからなー。

 博麗神社に不老不死の力でも隠してあるなら喜んで手を貸すが、この神社は調べるまでもなさそうだ。

「・・・・なー霊夢。いい加減元気出せよなー。紫に言われたことなんて気にすんなよ。あいつの言う事いちいち聞いてたら心がいくらあっても足りないと思うぜー。特にお前の場合はなー」

「・・・わかってるわよ。別に気にしてなんかいないわ」

「だったらいいんだけどなー」

 無理してんのバレバレだけどなー。

 霊夢の顔色は悪い。血の気が引いて、声も震えている。

 まったく、いつも物事を達観したように見るくせに自分のこととなるとこうだ。異変解決の時とは大違いだぜ。

 私には親なんていないからわかんねーけど、こいつとは古い仲だ。考えていることも大体わかるが、その辺腑に落ちないこともあったりなかったり。

 この世界における博麗の巫女ってのは、幻想郷を覆う博麗大結界の管理をすること。そして、この世界を揺るがしかねない異変が起きたら、その原因を究明し対処する・・・ってのが私が知っている巫女についての知識。

 この世界の一般常識のひとつ。

 でもなー、それは現在の巫女の役割。

 霊夢の前の巫女。つまり先代博麗の巫女の時はまた勝手が違ったらしい。

 当時は、まだ人間と妖怪が文字通り殺し合いをしていた頃。聞くところによると、結界などはなく、ひたすらに争いの日々。この世界の安定など素知らぬ顔で戦いに勤しんでいたらしい。

 しかしだ、今でこそスペルカードルールがあるおかげで、私たち人間は妖怪と対等に勝負ができる。けれども、当時はどうだろうか?純粋な戦力として妖怪と人間を比べるならば、勝ち目なんてゼロに等しい。それこそ、人間が滅んでもよさそうな戦力差だとは思うのだが、

 まあ、人間たちの筆頭。というより、たった一人で数多の妖怪たちに牙をむいたのが先代の博麗の巫女。博麗麗華だったらしい。

 詳しいことは知らないが、人間のために戦いその生涯を終えた英雄。

 ありきたりな英雄譚だとは思うが、先代のおかげで人と妖怪の争いは終焉を迎え、あとは知っての通り。スペルカードルールの制定と博麗大結界の誕生だ。

 平和な世界の誕生ってことだぜ。

「しかしよー霊夢」

「・・・なによ」

「いや、博麗の巫女ってのも大変だよなーと思ってさ。先代は妖怪退治。そしてお前は異変解決と結界の管理。よく続けてられるよなー」

 感心するぜ。関心はないけど。

「別に、私はこれしか知らないからね。だいたいあんただって異変解決に参加してるじゃない。巫女の仕事やってるくせに何言ってんだか」

「いや、私の場合は不老不死探しのついでなのぜ。輝夜とか妹紅とか不老不死に関係してるやつが多いからさ、妖怪ってのは」

 蓬莱人に半霊、人妖、仙人、邪仙、そして鬼。人間とは違い寿命に際限がない種族たち。この世界において私たち人間だけが、寿命という制約に強いられ生きている。

 いつの世も人間ってのは非力なもんだぜ。

 「ついでってあんたねぇ・・・こちらと稼業だっていうのに気楽なもんだわ」と、霊夢は笑う。

「まぁ、不老不死に興味はないけれど、やりたいことを好きにやれるってのはいいことよね」

 「うらやましいわ」と、霊夢は言う。

 その達観した顔が気に入らない。

「お前はどうなんだよ?何かやりたいことでもないのかい?今をときめく博麗霊夢さんには夢や目標はないんですかい?」

「今をときめくって・・・ばかばかしいわね。私は博麗の巫女よ。夢や目標以前にやることが山積みなの。少なくとも、紫やほかの妖怪たちに認められるまでは・・・私はこの役目以外に何かをしようとは思えないわ」

 そう霊夢は言う。

 私は、紫は今の霊夢だからこそあんなきついことを言ったと思うんだがなー。

 まぁ、余計な詮索しても意味はない。決めるのはこいつ自身だ。私は私のやりたいことをやる。

やりたいことを見つけられないこいつは、これからどこへ行こうというのだろう。

 笑える話だ。いや、笑えないか。

「そーかい。ま、お前はお前のやるべきことをやりゃあいいさ。私は私のやりたいことをやる。やるべきことと、やりたいことってのーは似たよーで全く正反対だが、私とお前はそれでいいさ。反対なくらいがちょうどいい」

 別に同じ方向を見る必要はないだろう。

 互いに反対を向いていたとしても、背中を合わせていると考えりゃあ、悪くない。

 悪くないぜ。

「・・・何にやにやしてんのよ気色悪い。」

「別に何でもないのぜ。ただ、お前は少し肩の力を抜いたほうがいい思っただけさ」

「ふん、余計なお世話よ」

「はっはっは!ちがいねぇ」

 私は霊夢の友達だ。この幻想郷がどうなろうと、これから先こいつに何が起ころうとそれだけは変わらない。

 それだけで、私は十分なのぜ。







 あれから私は魔理沙と別れ一人地下道を歩いている。

 日の光は届かず、ランプの明かりのみが前を照らす暗闇の世界。

いわゆる地獄。地底の世界。地上の者達とは決してなれ合わぬ孤独な者達。

 そんな彼らのテリトリーに私はいる。

「・・・やりたいことと、やるべきことは正反対・・・・か」

 妙に納得してしまった。

 魔理沙の言ううことはいつも私の胸に突き刺さる。つまらない、戯言にも聞こえるが、あいつは決してバカではない。それは私が一番知っている。

 だからこそ、私は今ここにいるのだろう。

 あいつのへたくそな気遣いに乗ってやろう、そう思っただけ。

 道は続く。

 地上には決してない世界。

 黒と闇の世界。

 空間に響くのは足音と息遣いのみ。

 しかし、今はそれが心地よい。

 けれども

「・・・何見てんのよ」

「ははっ、だれかと思えば霊夢じゃないの。ここにいるってことはあいつに会いに来た?博麗の巫女は案外暇なんだねぇ」

 高い声色。相手を見下すような物言い。もちろんこいつが誰だか私は知っている。

「何よ、パルシィ。あんたこそ、こんなとこにいるってことは暇してんでしょ。くだらないこと言ってると退治するわよ」

 「おお怖い怖い」と彼女は笑う。

 金髪に緑眼の少女。

 地獄の橋姫、水橋パルシィ。地底で暮らす妖怪の一人。

 人でない、人でなし。地獄の中でも特に変わったやつだ。

「そんなに邪険にしなくてもいいじゃない。ご挨拶ってやつよ。あんたは巫女で私は妖怪。変にじゃれつくよりはこっちのほうが自然でしょ?」

「まぁ、その通り。久しぶりね、元気にしてかしら?」

「そうね、元気も元気。元気すぎるから異変でも起こしちゃおうかしら」

「起こしてごらんなさいな。すぐさま私が飛んできてあんたを退治してやるわ」

 「「あっはっは」」と二人して笑う。

 この妖怪のスタンスはいつもぶれない。地上にはいないタイプの妖怪だ。それゆえ話していて面白いと思う。

 二人でゆっくりと地下道を歩く。

 こいつがどこに行くか知らないが、私の目的を知っているあたりついてくる気なのだろう。

 ある意味魔理沙よりも面倒くさい。

「んで、今回もあのスキマ妖怪に何か言われたの?」

「・・・・わかってんならいちいち言わなくていいでしょ」

 相変わらず勘が鋭い妖怪。

「あんたも懲りないわねー。あんたとスキマの関係は知ってるけど、毎度毎度もめるたびにここまで来るなんて・・・おかしくってしょうがないわ」

 パルシィはそう言うが笑っていない。

「そうね、自分でもそう思うわ。どうしようもなくなると、つい姉さんに会いに来ちゃうのよ。いい加減自立しなきゃとは思うのだけれど」

 全く、あきれてしまう。

「ははは、別にいいんじゃないの。あんたが来ればあいつは心底喜ぶわよ。それに、ただ甘えるためにここまで来たってわけじゃないんでしょ?」

 パルシィはそう言ってシニカルに笑う。

「私たち地底の妖怪にとって、地上のいざこざ、もめごとは興味の湧かないつまらぬこと。あんたらがそれで破滅しようと、私たちはそれを肴に飲んで飲まれて笑い転げるだけよ」

「あんたほんとくそみたいなこと平気で言うわね」

 「くそで結構」とパルシィは続ける。

「でもね、霊夢。あんたは違う。私はあんたのことを友達と思ってるわ。あんたが迷ったり悩んだりしたら真っ先に助けてやるわよ。地上がどうなろうと、地上に住むやつらがどうなろうと知ったこっちゃない。けど、そこにあんたが含まれるのなら、私は地上との不可侵を破っても構わない」

 淡々と放たれるパルシィの言葉に私は少し感動していた。

 少なくとも正邪の次くらいには天邪鬼なこいつがそんなことを言うなんて。

「パルシィ・・・ありがとうね。あんたがそんなことを言うなんておどろい・・・」

「はっはっは。なんて言ったらそれっぽいかしらねー」

「・・・・・」

 乾いた声。

 前言撤回。こいつは天邪鬼よりも質が悪い。





 私たち地底の妖怪は基本的に地上の奴らが嫌いだ。

 妖怪のプライドを捨て、人間にへびこつらう妖怪を見ると気色悪くて吐きそうになる。

 妖怪と人間は決して交わってよいものではない。敵であり敵。互いがそう思うからこそ、私たちは人でないものとして存在できる。

 けれども、その境界は十五年前に打ち破られた。

 先代博麗の巫女、博麗麗華。彼女の手により妖怪と人との均衡は破られ、私たちは地底へと潜った。

 あれこそが人と妖怪の正しい関係。

 だと思っていたのだが。

 私は今その地上に住む人間。しかもあの博麗麗華の後継者である博麗霊夢とこうして談笑しながら歩いている。

 こいつは正直よくわからない。異変の時は滅多打ちにされたが、その後も時たまここにやってくる。

 こいつの妙に達観した言動は私たち妖怪と似ているのだ。

 そこに何故か惹かれた。いや、惹かれたというよりはムカついたというのが正しい。

 まるで、鏡を見ているようで。

 人間のくせに妖怪のような考え方をするのだ。物事に対して無限の時間がある私たち妖怪は、時間が物事を解決することを知っている。

 しかし、人間は違う。

 人間の時間は有限だ。それもかなり短い。だからこそ奴らは知恵を絞り、その壁を越えようとするのだろう。

 物事に対し、積極的に。

 しかし、霊夢は違った。

 自ら動かず、何もせず。勝負を挑まれれば受けるが、そうでなければどこ吹く風。異変解決という功績が彼女の本質を隠してはいるが、私たち妖怪には隠せない。

 まぁ、そのスタンスが妖怪から気に入られている要因の一つではあるのだが。

 しかし、一番の要因は別にある。

 幻想郷の大賢者。最強の妖怪、八雲紫。

 奴に育てられたからこそ、霊夢は人間では得ることのない達観した思考を得た。いや、諦観を根底に置いたものの見方しかできないように育った。

 それが今、彼女の悩みの原因となっていることに彼女は気づいていない。

 おそらくスキマはそのことに気づいている。

 今回のもめごともそのあたりに違いない。

 まぁ、私には関係のないことだけれども、特に助けることもしないとは思う。

 それでも私は、おそらく霊夢の問題は時間が解決すると思っている。

 妖怪の諦観した考えに乗っ取ってだ。

 それでも、解決しない場合は

 霊夢は人間として生きなくてはならないということだ。

 それはそれで面白い。

 妖怪の私はそんなことを思った。

 

 


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