表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君桜  作者: フロード【fload】
12/15

常識通りとは限らない

CHAPTER 12 常識通りとは限らない


いつの間にか大きな木の前に立っていた。

ここに来れば何か思い出せるかと思っていたが、そんなことはないようだ。忍の頭の中にはまだ(もや)がかかっていたが、ノートを見て、右手を幹に添え、呪文を唱える。


………………………。何も起こらない。


また、呪文を唱える。


………………………………………………。何も…起こらない…?


間違えてない。またノートを見て確認した。それなのに。…きっと、霧人があたしを拒否してるんだ。…霧人って、あの少年だっけ?………。どんな名前だっけ…。


何も起こらないならあたしが自力で見つけてやる。感覚で歩きだす。ほんのりと甘い…桜の匂いがする方へ。

……しばらくするとその香りも途絶えた。あたりは見覚えのない森の中。そのとき。


『……こっち…』


綺麗な鈴のような透き通る美しい声が頭の中に響く。

忍はその声が聞こえたであろう方向に向かって歩む。


『助けてあげて…あの人を…貴女にしかできないの…』

「……誰なの?どうして道がわかるの?」

『私は…サ………。』


声が途絶える。


『来るな…来るな…私わたくしは木……咲……お前に邪魔などさせるものか…あの御子は私のものだ…』


同じ声だけど…こっちの声はなんというか、怖い。鉄をひっかくような耳障りな感じ。名前がところどころ途切れて聞こえない。


『早くっ…!貴女なら救える…!』


また声の感じが変わった。

……いくら歩いたことだろう。そして2人(?)の声は完全に消えた。

目の前には紙切れがついた縄が巻き付いた石碑のような物があり、その後ろは崖になっていた。

その石碑には、


【とくに何もなかった。ここらへんにあるのは、

 びこう(?)を擽るような甘い香りだけだ。縄を

 おろしてみたけれど、崖は底無しだ。これをお

 りるなんて不可能に決まってる。今持ってきた

 ろうそくも消えてしまった。もう戻るしかない

 。もったいないが、しょうがない。灯がない。

 桜を見に来ただけなのに、まさかこんなことに

 なるとはな。山の掘っ立て小屋の寝室(?)のま

 んなかにある紙の内容がわからず、さらに紙の

 じも汚かったので読むことも出来ん。こんな謎

 を解ける人がいるのだろうか。誰かこの答えを

 導ける人がいるなら教えてほしい。

 くれぐれも間違いを犯す前に。    K.S.】


…忍は少し考えたあと、崖の下の暗闇に身を投げ入れた。

例え死ぬとしても、皆あたしの存在すら忘れる。これは大きな賭け。多分人生最大の。

耳が壊れそうなほどうるさい風の音。


『何をやってるんだか。しょうがないなぁ、お嬢さんは。』


風の音のなかに誰かの声が聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ