表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/55

正体

さて、一般科目も終わりまして。来ましたるは放課後ですね。

因みに今俺はどこにいるかと言うと、彩乃と学園内のとある倉庫に向かっています。執事服のままで。


……にしても、今日は一日疲れたな。お嬢様って言われるほどの家系なんだから、てっきりメイドの一人は雇ってると思ってたのに、本当に家族も使用人も一人もいやしない。

おかげで朝食と学校の支度は全て俺がやらされましたよ。えぇ。


しかも家が『館』ってほどに広いモンだから、初めてのこっちはまぁ迷う迷う。迷路みたいだわ。


家の周りは門に囲まれていて、暫くは木々の林が続いていた。てっきり何処かの山中だろうと思っていたんだが、それには妙に道が整備されてるし小綺麗だなぁと思ったんだ。


……そしたらな? まさかの学園都市の一角にある森林公園の中でしたわ、鷹宮家は。驚きの極み。どうやら公園全域が鷹宮家の敷地らしい。


そして二人でバスに乗ったはいいものの、執事服を着ているせいで周りから白い目で見られ。仲が良いと思ってたクラスメートの数人でさえ、俺を素知らぬふりしてたからな。絶対許さねぇぞ。


必死の弁明をするも、全て「志津二は今日から私の執事になったのよ」で聞き流される。つらみ。

挙句、「一人文化祭かよ(笑)」ってLINEが来た。泣きたい。


……だが、そんな波乱万丈な一日もこれで終わりだ。俺は最初から執事になる気なんてないんだからな。聞きたいことだけ聞いて、後は無視だ。無視。



「志津二、ここよ。この体育倉庫」

「……ここが、か?」



校舎から少し離れた端の方。使う人もほぼいなく、放置されてきたままの体育倉庫を指さして、彩乃は淡々と告げた。

もちろん不純異性交遊をするワケではなく、約束通り、黒い影の正体を教えてもらうために来たのだ。……別に残念とか思ってないよ! 本当だよ!


ガララ、と錆びたシャッターを二人で開け、薄暗い倉庫内へと目を凝らす。するとそこには、



「な、何だよ……これ……!?」



時折視界内に入ってくる謎の黒い影。それが、所狭しと存在していたのだ。

毬藻みたいな影がフワフワ浮遊しており、他にも人の形になりきれていない影や、人の手の形をした影がこちらを向いた──気がした。


彩乃はそれを睥睨してから、口の端を歪めて俺に言う。



「これは所謂、魔物(モンストゥルム)。日本で言う、邪鬼や怨霊のことよ。一般人には視認不可能で、視えるのも一部の異能者のみ。視える基準は明らかじゃないんだけど、恐らく個人の魔力量じゃないのかなー、って私は思ってる」



魔力量ってのは、個々の霊力みたいなものよ。APって考えれば分かりやすいかもね──と一笑に付した彩乃。

魔力量、という言葉は初めて聞いたが、それに近しいモノは聞いたことがある。


それ即ち、霊力。個々の異能を発動するにあたっての発動源。

人それぞれで保有量は異なり、多ければ多いほど有利だとされている。そして本家筋や《長》レベルになると、それを無尽蔵に有している、とも。



「……魔物、か。聞くだけ聞けば害悪そうだけど、そこら辺はどうなんだ?」

「基本的に害はないわよ。あれは霊体みたいなモノで、浮遊霊って考えればいいわ。成仏出来なかった人の霊ね。……ああいうのは、邪気の多いところや負の氣が多いところに出る傾向があるの」



だから、と彩乃は続ける。



「それを排除するのが、私たち(鷹宮)の役目よ」



静かに手を翳し、口早に呪文のようなモノを唱えた彩乃。

直後には魔法陣が展開されており、微粒子が一つの核へと形成されるのを待ってから、彼女はそれを突き放すようにして発射させる。


──それによって鋭い風切り音と轟音が伴い、中には暴風が吹き荒れた。

砂埃が舞い、目が開けられない。俺は腕で顔を覆いながらも、あることに気が付いた。


この暴風に巻き込まれるようにして、魔物が散り散りになっていくのだ。それらは千切れ、或いは霧散して。

しかし不思議なのは、体育用具らには全くの効果が現れていないことである。



「《鷹宮》はただの異能者組織じゃない。代々と継いできた、魔物駆除組織でもあるのよ」

「魔物、駆除……!?」


そう、と笑みを浮かべて答えた彩乃。そして何事も無かったかのように身を翻し、元来た道を歩いていく。


「そう。その肩書きを利用して、私たちは勢力を拡大してきたの。現・異能者組織であり、魔物駆除組織としてね。……まぁ、詳しくはその時が来たら話すわ」




~to be continued.

そろそろ話の趣旨に入れそうですかねぇ……。気長にお待ちくださいな。


感想やブクマなどもお待ちしております。軽率にどうぞ。されて喜ぶ生き物ですので。()

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ