手掛かりの1つ
「──《長》、これもお願いします。これで最後ですので」
「……っ!?」
放課後、本部の《長》の部屋にて。俺は資料諸々を整理するデスクワークをこなしていた。
判を押し、書類ごとに最善な決断を降し、脳を……身体を虐使する。前々からキツいとは思っていたが、今回はいつもより作業量が明らかに多い。
というのも、それはアイツらのせいで。そう毒吐きながら、俺は桔梗が追加で運んできた資料の数々を一瞥する。
言わずもがな、《雪月花》に関する資料だった。
お茶を一口飲んでから、また資料に目を通す。
『《雪月花》による器物損壊・公務執行妨害・人身傷害』……雪と月と花尽くしだ。
全く、誰のせいでこんなに──。
そう胸中で呟きながら、俺はソファーで悠々と休んでいる桔梗へと、
「これ。全て終わらせたよ」
「ご苦労さまです。そこに置いといて下さい。あとで上層部に提出しとくので」
「はいよ」
そんなやり取りを終えた俺は椅子に深く腰掛け、独りごちて呟く。
「……匂わせたのは誰なのか、だな」
アイツらが欲しがっていた情報、『自らが《鷹宮》・《仙藤》よりも上位の存在である』と知らしめる事が出来る情報。
やはり、マスターデータに他ならない。そして、双方の組織でそれを弄れる者のみが容疑者となる。
「俺は除外として──」
上層部で身近な存在と言えば、と。
「桔梗か、彩か……?」
「何で私になるのですか?」
「勤務中にゲームとは、解雇も考えとくかねぇ」
「待って、ご検討を改めて頂けます!?」
まぁ、冗談だけど。と俺は笑いかけて。
「考えられるのは、《仙藤》もしくは《鷹宮》の上層部員。同盟を結んだ以上、そんなことは無いと信じたいが……万が一だ。彩乃にも確認してもらおう。それと同時に、こちらも動かないとな。
それでも居なかった場合、俺たち以外の第三者だ。それが誰かは知らないが──」
少なくとも、堂本充の時と同様に、《長》や《姫》レベルの人間だな。
それも、国内の他異能者組織か、俺たちの前代の《長》らの可能性が高い。
……とまぁ、そこは追々推察するとして。
今現在の問題は、どうして彼女ら《雪月花》が、『自分たちを優位な位置に立たせるための情報』を欲したのだろうか。
……いや、違うな。欲すること自体は何ら問題はない。
俺の思うところはそこではなく、『如何して、その情報があると確信して動いたのか?』だ。
美雪の話を聞くに、どうやら別の第三者から聞いたような素振りだった。なら、ソイツが匂わせたと間違いないとして。
──何故、そんな1人が発した情報を鵜呑みにした?
ソイツが余程《雪月花》に対して信頼されていたのか? それとも、その情報を──支部を襲うなどという愚行を犯さずして──手に入れなければならないほどに、切羽詰まった状態だったのか?
未だ真相は闇の中……だが、それも、
「……月ヶ瀬美雪から直接聞き出せば良いだけだ」
小さく呟くその様子を、桔梗は黙って見ていた。
~to be continued.




