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第九話
10時少し回った時、その先輩がやってきた。
「井野嶽先輩、お待ちしていました」
「ごめんね、少し予定より遅くなっちゃって」
私服でやって来たその先輩は、クーラーボックスを肩から下げていた。
後ろには顔つきがよく似ている女性や、おそらく友人らしい人たちが来ている。
「大学行ってから、久々に食べるな」
「そんなことないだろ雅」
どうやら、確かに先輩の友人のようだ。
「それで、今日は何を作ってくれるのですか」
「今日は、ケーキだよ、ショートケーキを作るんだ」
クーラーボックスを家庭科室の机の上に置いて、中身をみせてくれた。
スポンジ生地、生クリーム、そして大量の苺があった。