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第十三話
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
井野嶽先輩へとお礼を言いつつ、俺らは順次ご飯を食べ終えていた。
噂通りの先輩だった。
いや、噂以上だった。
なにせ、これほどの物を食べられるとは思っていなかったからだ。
「先輩は、どうして料理をしようと思ったんですか」
井野嶽先輩へ、深屋が質問した。
「あー、まあ姉ちゃんがね、料理下手だったんだよ。両親は海外あちこち飛び回る仕事してるし、自分らでご飯作らないといけなかったから、必然的にうまくなったのさ」
「海外?」
深屋が首を傾げたのを見て、井野嶽先輩が答えてくれた。
「あれ、知らない?井野嶽夫婦っていう形で、あちこちに出てるんだけど。考古学者で現場でよく発掘調査に出てるんだけど」
残念だけど、聞いたことはないし、あまりその方面は知らない。
ただ、先輩の手前、ああ、あの方でしたか、と言っておいた。