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第十話
「一番時間がかかりそうなスポンジ生地はもう作ってきたから、あとは飾りつけだけなんだけどね」
井野嶽先輩は、手際よく、必要な材料をクーラーボックスから取り出していく。
クーラーボックスには、保冷材がいくつか入れられていて、しっかりと冷えるようになっていた。
「イチゴがたくさん……」
そんなクーラーボックスを覗き込んでいるのは、先輩と顔つきがそっくりな女性だ。
「姉ちゃん、味見はだめだからな」
「えー、なんでわかったの」
「双子だからな」
どうやら、井野嶽先輩のお姉さんらしい。
しかも、双子のようだ。