急展開は突然に
俺はとりあえず姿を現した美女幽霊と話すことにした。
「とりあえずいいかな?」
幽霊はこくんと頷く。
今この部屋にはなんとも言えない異様な空気だ。
「とりあえずありがとう、いい感触……」
俺はさっそく腹をぶん殴られる、あれ?何か間違えたか。
「痛い……」
「他に言う言葉がないの?」
「豊満な胸をもんですいません」
「一言余計よ」
とにかく面倒なことになったな。
本物の幽霊が俺の目の前にいるのだ。
「あんたはいつからここに?」
「ここができた頃からよ、私生前の記憶がほぼないの。それで物心着く頃からここにいるわ。」
「つまりこの地に未練があるのか?」
「そういう訳でもないの、何しろここからでれないわけじゃないしたまに旅行行ったりするし」
「意外と自由な……じゃあなんでこの部屋に住みついてるんだ?」
「ウ~ン気分かな」
「気分かよ」
なんとはた迷惑な……ここを借りて出てった43人に謝れ、大家さんに頭を地面につけて土下座してここからでてけ。
「気分というかここは凄い落ち着くからかな、たぶん霊の力を強める場所なんだと思うの」
「なるほどな、だがそれで今までこの部屋を借りた43人を追い返すような真似をするのはよくないな」
「だって汚い親父とかお水とかが借りるんだもん、それに私と遊んでくれないし……」
「いや、幽霊と遊ぶとかなかなかマニアックかと……」
「でもあなたは遊んでくれたでしょ」
まぁ確かに遊んだは遊んだが勝負だったしそれに成り行きだったしな~
最後はズルをしてしまったがなかなか楽しかった。
「成り行きでな」
「あなたがカモだと思ってる時の顔から勝負が始まって焦り顔になる様は見ていて楽しかったわよ」
「強かったけどやり込んだのか?」
「夜のゲーセンでやり込んだわ」
幽霊はドヤ顔で言う。
暇してますもんねー
ずっとやり込めばよっぽどセンスがない限りは上達するわなー
「あんた何年ぐらい幽霊してるんだ?」
「30年は以上は経ってるかなーそれと私はあんたじゃないわ」
「ああ、改めて自己紹介しようか、俺は土屋孝25歳、社会から逃げ出したニートだ」
「私は海明院翔子、永遠の24歳よ。私のことは翔子と呼びなさい、あなたのことは孝と呼ぶわ」
死んだ年齢はしっかり覚えてるのな。
幽霊じゃなければ周りの目線をくぎ付けにできるぐらいのプロポーションを持ってるだけに残念だ。
「それで今後だが俺はここに住むということでいいか?」
「問題ないわ」
随分とすんなりだな、さっきはあんなにでてけとか呪うぞとか言ったくせに。
「んじゃそんな感じで細かい取り決めについてだが何かとあるか?」
「そうね、とりあえずあなたには責任をとってもらわないとだし……」
翔子は何やら顔を赤くして恥ずかしそうにこっちを見ている。
責任とは何の話や。
「責任?」
「あなた私のおっぱい揉んだでしょ!だからしっかり責任とってもらわないと」
「へぇっ!」
責任ってそういうことか。
おっぱい揉んだのも事故だしたかだかそんなことで責任とか勘弁してくれ。
「おっぱい揉んだぐらいで責任とかいつの時代の話だよ、だいたいニートに責任とれとか無理な話だよ」
「おっぱい揉んだぐらいでですって……」
翔子から殺気がでる。
思えば俺が翔子を受け入れたのはこのプロポーションに加えて殺されかけたのがきっかけだ。
俺の体が急に動かなくなり翔子に押し倒された。
「体が動かない……何を……」
「私おっぱいなんか揉まれたのはじめてなの……だから傷物にされた人には責任とってもらわないといけないの……」
これは超能力とかいうやつなのか……体が動かない。
傷物にした覚えは……重すぎる……
「だからあなたが私を受け入れられないならあなたを殺すわ」
「ちょっと翔子さんそれはさすがに……それにあなたは幽霊じゃ……」
「幽霊だって心はあるしちゃんと傷つくのよ……あなたはもう少し人のことを考えるべきよ」
「人って……」
そんなこと言われなくたって……
仕事で罵倒され昔の恋人にやられたことを思い出した。
翔子は俺の手を自分の胸にあて柔らかい感触が俺の手にはしる。
「柔らかい?」
「はい」
「心臓は動いてないし生きてるとは言い難いけど私は確かに存在しているの」
今度はもう片方の手を首元に触れさせる。
「暖かい?」
「ああ」
確かに人と変わらない暖かい人肌だ。
翔子は自分の唇を俺の唇にもっていき舌をいれてくる。
「んんっ」
蕩けるような感覚が俺にはしる。
翔子はさらに舌を動かし俺はされるがままにそれを受け入れる。
「ちゅばっ」
「はぁはぁ……どう?気持ち良かった?」
「はい……」
「私を受け入れてくれるかしら?私はあなたのすべてを受け入れるわ」
「喜んで……」
俺はこの時とっさにこう答えてしまった。
すべてを受け入れるなんて言ってくれた幽霊美女にすがりたくなったのか……あるいは殺されかけたことへの恐怖からだったのか……
ただ俺はこの時点から彼女に惹かれていたんだと思う。
25歳のニートに幽霊の彼女ができるという世にも珍しい体験をした瞬間だった。