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終、真白と黒

エピローグです。

山の斜面に生い茂る木々の中、一際高いその木に二人はいた。


「もともとの廃屋は、別荘だった。両親たちが外出し供達が留守番していた時悲劇は起こった」

青空の下、木の頂上に立ちつつ黒は静かに呟く。

「そう、お金が目的だったのかはたまた違う目的か。その屋敷に何者かが侵入し、留守番中であった子供たちにその手に持った斧を振るった」

その少し下の枝に腰掛けつつ真白は続けて表情に影を落とす。

そうしてあの少女達は死んだ遺体の状態は推して知るべし、悲惨にもほどがあったらしい。もう一人の少年については彼女はよく知らないが黒が一命を取り留めたようだとだけ告げた。彼女としてはそれを信じるつもりである。

彼女が戻ってきたときには黒は目標たちだけでなく廃屋のほとんどの魂魄を送り終えた後であった。

彼女も黒に手伝ってもらって体を再生し、腕を接合したのち少女たちを送った。

『ごめんなさい。ありがとう』

少女達は別れ際にそう言って彼女に頭を下げた。

この先少女達にどのような裁きが下されるかは彼女たちの仕事の範疇でないし、口出しできるほど彼女たちは偉くはない。あくまで死神は案内人、所詮は底辺である。


「でも、何とか仕事を果たせてよかったね」

山の裾に広がる街を見下ろして彼女はそう言って安心したように笑う。

いつもの仕事のはずが妙な方向にもつれこみ、一時は駄目かと思ったが何とか果たすことができた。

「ねえ、黒。私も少しは役に立ったかな? 」

足をぶらぶらと揺らしつつ真白は問う。

「……少しは。だがあまり感心はしないやり方だ」

青い空を見上げながら黒は全く表情を変えず返答する。

その手にはすでに鎌はない。

彼自身としては状況が状況であった者の片方が囮になり、説得を試みるという方法にはあまり賛成できなかった。


「そっか。ごめん」

真白はそう言って苦笑する。

まだまだ彼の足を引っ張る日々は当分終わらないかな、と思う。

死神となって、いやなる前からも彼には世話になった。

だから、少しでも役に立ちたい、死神として一人前になれたらと彼女はいつも思う。

「……心配した」

「へ? 」

しばしの沈黙ののち彼が紡いだらしくない言葉に彼女は間抜けな声を上げてしまう。

あわてて彼を見上げると、視線をそらし困ったように頬を人差指で掻く彼がいた。

いつも眉間に皺が寄っているか、ため息をつくか、どこか馬鹿にしたように笑うか、無表情かのいずれかな彼らしくない。

「何か憑いてる? 」

目を瞬かせて呟く彼女にため息をつく。

「憑くなんてことはあり得んだろう普通。何故そこに思考が飛躍する」

「いやだってあなたにしてはあまりにありえなかったから」

遠慮も何もない彼女の言葉に彼は頭をがしがしと掻いて思考がまとまったのか口を開く。

「お前と俺は仲間なのだから。心配くらいはする」

「そっか。そうだよね……ありがとう」

仲間と読んでもらえたことに彼女は心底嬉しそうに笑い感謝の言葉を零した。

黒はそれに小さく頷き、彼女が見ていた街並みを見つめる。

「それに、あの時、お前と出会わなければ俺は人形も同然だった」

彼女はその言葉にハッとしたように顔をあげる。

そこで彼女はさらに信じられないものを見た。

そう、彼は笑っていた。どこか慣れてないながらも軽蔑の意味を含めていない純粋な笑顔を彼は浮かべていた。


「半年間、言おうに言えなかったが」


――ありがとう


そうはっきりといった。


「そんな、私だってあなたに出会わなきゃこうやってここにはいなかった」

彼が選択の余地を与えてくれたから、断罪されそうになった時に庇ってくれたから自分はここにいる。肩を並べるにはあまりに未熟だけれど自分のできることから少しずつ彼に近づいていけばいい。

出会うべきして出会ったのか、それはわからない。だが二人が共に歩くことで互いに何らかの救いを得た。

その点では二人は最高の仲間ともいえた。


『行こう』

二人は同時に呟き、木の枝から離れる。

一瞬笑い合ったあと二人の姿は霧散し消えた。




彼女と出会ったことで感情を取り戻した彼。

彼と出会ったことで新たな生を得た彼女。


二人はこれからも共に往く。

罪を償うために。

願いの代償を支払うために。

死者の魂を導くために。



いかがでしたでしょうか。ホラーらしくなく非常に申し訳なく思います。結局ドタバタと物語を閉めることとなり自分の力不足を実感しています。もしよければ感想等お聞かせ願えればと思います。



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